土手に腰を下ろす準
第7話:五月病?
 5月です。
 山の木々の新緑が、それぞれまるで自己主張をしているように見えます。天気もいいし、本当にいい季節です。気分も最高といきたいところですが・・・。

 準は河原の土手に腰を下ろしています。ランドセルを持っているから学校帰りですね。衣替え前だけど、暖かいので上着は着ていません。ぽかぽかとした陽気で、つい寄り道したくなったのでしょうか。

 しかし、それにしてもさっきからずーっと動こうとしません。よく見ると、何となく浮かぬ表情だったりします。学校で叱られたのでしょうか?。それともテストで悪い点取ったから、うちに帰れないのでしょうか?。
 いえ、どうも今日はそうではないみたいです。準はひとりになりたいとき、この土手に来ます。そして、気がすむまで空をながめたり、ぼーっと考え事をしたりして過ごすのです。

 新学期がはじまって1ヶ月。何となくクラスの雰囲気になじめないところがあるのです。親友だった中沢くんが転校してしまって、特別仲のよい友達がいないというのが一番の理由です。準はおとなしい性格なので、自分から友達に話しかける方じゃありません。まわりの子がどんどん友達をつくっていくなかで、ひとり取り残されたような気分なんです。だから、別に学校でイヤなことがあるわけではないのですが、気持ちが落ち込んでいるのです。

 五月病?。本人は気づいていないけど、そういうことかもしれません。連休が終わって、また学校がはじまりました。クラスでの準の居場所は決まっています。ああ、つまらないなあ。そんな気持ちのまま、土手に寝ころんで空をながめていたのです。

 そのとき、準の視界のはしに、黄色いものが飛び込んできました。
 「あ、ちょうちょ!」
 準はがばっと起きあがりました。蝶はひらひらと旋回しながら、準のまわりを飛んでいます。準はそれを目で追いかけます。蝶がゆっくり飛ぶ様子を見ていると、何となく気分が晴れてきました。
 蝶は準のもとを去っていきました。そして準も、ランドセルを持ってうちに帰っていきました。

 まだ本調子じゃないけど、今にきっといいことがあるよ。がんばってね、準。

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