水沢うどん

 うどん作りが盛んになるのに小麦、水が必要なのは従来から言われてきたが客が来なければ名物にはならない。これを実証するのが水沢うどんだ。高崎からバスで1時間、伊香保温泉の手前に道の両側にうどん店が並ぶうどん街道がある。そこが水沢だ。
 次の文章は10年ほど前に書いたものだ、店は健在のようなので、少し手直しして掲載する、値段は変わっているが(例えば清水屋の中は1155円)当時のままとする。

 小麦の生産量が全国2位の群馬県はうどんの生産量も多い。コートが重く感じられる春のある日、私は伊香保温泉の入口水沢へやって来た。観音様の門前に甍を競ううどん店その数10軒余り、400年前上州の小麦と水沢山ので打った麺を参拝に提供したことから始まるそうである。透きとおって柔らかいのにこしのある麺に特徴があるという水沢うどん、関東の他のうどんと同じくざるうどんが主のようだ。

 2時間弱の間にはしごした3店を紹介する。まずは格式を誇る高級料亭風田丸屋、19代にわたって水沢うどんの伝統を守っている名店だそうだ。単品では注文できずコース料理になる。うどんが目的の私は一番安い山菜がごちゃごちゃ付く1500円のを注文した。宮田輝が「イカ刺しのよう」と表したという麺は細手で堅くつやつやと光っているがこしはない。48時間かけて作るのだそうだが1500円は高い、単品で食べられるようにして欲しい。(改善されていればごめんなさい)
 次は大澤屋。ざる721円、少し水っぽい感じ。ここは大衆的な店だった。釜上げというメニューがあって試してみたかったが次の店へ急いだ。
 3軒目が清水屋、400年余りの歴史を持ち田丸屋と並ぶ老舗、ご主人は17代目だそうだ。ごまかしがきかず、うどんの味が一番分かるのは「ざる」との信念のもとメニューはざるうむどん(こう表記する)のみ。ざる中800円。つゆはゴマだれで黄土色をしている。

 2日を要する製麺の途中で細長く切った麺を干す工程がある。麺類研究家の小島高明氏の御説では干すことが麺の表面にひびを生じさせ、水沢うどんを特徴づける重要な工程だそうである。ざるで食べる関係か麺は堅い、我々が考えるこしとも少し違う感じがした。もう一度行く機会があればその点を確かめたい。
 村上春樹氏とともに香川県のディープなうどんを食べ歩いたこともある安西水丸氏は讃岐うどんより水沢うどんに軍配をあげるそうだ。そしてその理由を「せんさい」としている。氏の意見は正しいのかもしれないがそばを大衆の食べ物から奪った考え方と似ているような気もする。負け惜しみに聞こえるかしれないが、香川県のレートでいうと400円くらいが妥当なところ、700円も取るのなら美味しくて当たり前とも言える。うどんは少量を味わって食べるものでもない、腹一杯になるためには1000円じゃとても足りない。
 私は高崎駅からバスで行ったがJR上越線渋川駅からタクシーで20分だそうだ。

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