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名演2006年11月例会 劇団俳優座公演 

きょうの雨 あしたの風

原作/藤沢周平 脚本/吉永仁郎 演出/安川修一

新潮文庫刊[驟り雨]より「うしろ姿」、[時雨みち]より「おばさん」、
竹光始末]より「冬の終わりに」

NEW! 『きょうの雨 あしたの風』に期待する

10月12日(木)に出演の内田夕夜さんのお話を聞きました。
くわしくはこちらをご覧下さい

 江戸深川の裏長屋に住む女たちを描いた藤沢周平の名作短編「うしろ姿」「おばさん」「冬の終わりに」を舞台化した話題作です。貧しさに泣き笑いしながらも活力を失わない江戸の庶民達の必死に生きる姿をユーモアを交えて情緒豊かに描き出します。是非、ご期待下さい。
11月16日(木)6時30分
   17日(金)1時30分
        6時30分
 
名古屋市民会館中ホール
          地図
あらすじ
解説

吉永仁郎さんのお話を聞いて
キャスト・スタッフ
配役
関連サイトリンク
会費 月額一般 2600円 22歳以下 2000円  
   高校生以下 1300円
入会金  一般  2900円 22歳以下 2300円    
高校生以下 1600円
新入会の方は、会費と入会金が必要です。それ以外の入場料は必要ありません。  くわしい名演の入会方法はこちら
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出演俳優・内田夕夜さんのお話 10月12日 名演事務局にて


あらすじ

 所は江戸…。寡婦のおときが世の中に隠れるようにただひとリひっそリと暮している深川の裏長屋。同じ長屋に住む左官の六助は酒を飲むと誰彼かまわず連れてきて泊めてしまうという奇妙な癖を持っていた。昨晩も汚らしい老婆のおはなを運れてきては女房のおよねを困らせ、おしゃべりのおもんのかっこうの話題にされる始末である。
 桶職人の重吉にはほのかに想いを寄せている一膳めし屋の女中のおしずは博打の借金をかかえた弟の栄次に悩まされていた。ある日、ひょんなことからおときのもとへ若い男の居候・幸太が住みつくことになる。そして、博打の惜金の取リ立てにやくざが長屋のおしずのもとへやってくる。人生の裏道を歩いてきた日雇い人足の作十はなんとかおしずの力になろうと老いた体でやくざに立ち向かうが…。

みどころ・解説

 今回の舞台になっている台本の時代設定は「江戸の末、天保の頃、晩秋から初冬にかけて」、そして、場所は「江戸深川森下辺りの裏店とその近く」となっています。東京の江東区白河にある深川江戸資料館には天保の終わり頃(1842〜1843)の深川佐賀町下之橋の端際の情景が再現されていて、まさに九尺二間の裏店や八百屋、船宿、火の見櫓等々が実物同様に作られていますが、今回の俳優座の舞台装置も井戸端や木戸、長屋のセットがリアルに作られており、いましも江戸時代の人々が顔を出しそうな雰囲気です。

 では天保はどんな時代だったのでしょうか。
天保時代は江戸末期の1830年〜1843年まで、11代将軍家斉と12代将軍家慶の時代にわたっています。この時代は江戸の3大改革のひとつ「天保の改革(1841〜1843)」が幕府権威の回復をめざした老中・水野忠邦を中心に行われましたが成功せず、水野忠邦は1843年(天保14年)6月21日に老中を罷免されています。
 藤沢さんの小説『よろずや平四郎活人剣』のラストは、まさに水野忠邦が役を罷免されて役宅を出るところを江戸の庶民が騒いで見ているところが描かれています。
 さて、1830年には今でもテレビコマーシャルで見かける人形店「久月」が開店しています。
 天保2年には葛飾北斎の『富嶽三十六景』が出され、翌天保3年には鼠小僧次郎吉が、獄門となっており、4年には米価高騰で、窮民が騒動を起こしています。また、8年に大塩平八郎の乱、10年5月には渡辺華山、高野長英が逮捕されています(蛮杜の獄)。そして天保11年に、遠山の金さんこと遠山景元が町奉行に就任しています。
 この時期にはすでに勝海舟、西郷隆盛という幕末に活躍する人物は生まれていて、坂本龍馬、土方歳三はこの天保年間に生まれています。
 東北では天候不順による不作の年が続き、慢性的な飢餓状態で、江戸の庶民の生活も決して楽ではなかったと思われます。しかし、武士の社会も終焉に近づきつつあるこの時代(明治まであと25〜40年ほど)、江戸庶民のパワーとエネルギーは武士を圧倒するものがあるように思います。


吉永仁郎さんのお話を聞いて

 中部・北陸ブロック企画会議で、『きょうの雨、あしたの風』の脚本を書かれた吉永仁郎氏の講演を聴きました。その中で、作品の誕生にまつわる話を聞きましたので、紹介します。
吉永仁郎さん
 これまでの舞台作品は、殆どすべて、オリジナルで、原作がある作品の脚色は初めてといってもよい。今回は時間的な制約もあって、藤沢周平作品の脚色という形になった。
 氏の作品は、長編はいろいろあるが、丁度舞台に収まる長さの中編が少ない。また、戸外の描写が多い作品は、テレビや映画では映像化しやすいが、舞台には向かない。
 作品の系列としては、
◆武家もの…藩のお家騒動等
◆史伝もの…新井白石等
◆市井もの…長屋もの
などに分類されるが、格式や上下関係にとらわれず、生の声が本音で出せる、市井ものに目を付けた。しかし、この系列は短編が多く、単発では2時間くらいの作品ができない。そこで短編を混ぜることを考えた。
 市井ものの短編から何を選ぶか、気に入ったものを10篇ほどあげ、そこから五編抽出。寂しい女が1人いる、その中でふっと楽しい時が有る。これをまず選んだ。ただ問題は、女が1人ひたすら木槌で鼻緒を叩いているだけなので、そんな話が面白いだろうか?という疑問がわく。けれどもそれは、手作りの鼻緒職人がいるときいて、そこを訪ねたところ、その動きが面白く見ていて絵になる。そこで決定となった。次に喜劇的なものをと考え、婆さんやいろいろな人を連れてくる話が、藤沢作品には珍しく喜劇で、面白そうなので選んだ。三つ目は、やくざが絡む物語が多い中から、少し恐い話を持ってきた。これは、3篇くらいから持ってきたので、結局5編の中から混ぜて作ったことになる。
 舞台には何軒かの長屋が有り、一軒の家へ親父が婆さんを連れて帰り、女房も優しく受け入れる。もう一軒は、姉弟と母の三人暮らし。弟がワルで姉が面倒を見ている。そしてもう一軒、女1人下駄のの鼻緒作りの内職をしており、木槌で鼻緒を叩いている。三軒の長屋の紹介で第一幕が始まる。こういうスタイルで長屋を作れるかと、演出の安川修一さんに話したところ、回り舞台で、長屋を回す構想を持ってきた。限られた間口でより多くの家が設定でき、また回転することで場面が変えられるために暗転が少なくなる。
 三つの話が同時進行しながら、絡み合うようにするために、一つの事件(ラブロマンス)を起こし、大家さんや噂話をする女が三つの話を繋げるようにした。また、外の話を家の中で話すのは面白くないので、出来るだけ外の話を家の中の話に置き換えた。

 こうして『きょうの雨、あしたの風』という芝居が出来上がった訳です。
 天保時代の深川を舞台に、市井に生きる人たちの人間模様を、山本周五郎とはまた違った、藤沢周平独自の切り口で、脚本・演出・役者が三位一体となって展開し、観客を天保の昔へと誘ってくれるものと確信します。今、時代劇は面白い!!(文責 A・U)


<キャスト> 

おとき(鼻緒作りの寡婦) 川口 敦子
幸太(おときの家の居候) 内田 夕夜
六助(手間取りの左官) 島  英臣
およね(六助の女房) 岩瀬  晃
おはな(六助の家の居候) 阿部百合子
利右衛門(紙問屋の主人) 河内  浩
おしず(めしやの女中) 清水 直子
栄次(おしずの弟) 関口 晴雄
おうめ(おしず達の母親) 阿部百合子
重吉(桶職人) 志村  要
作十(日雇人足) 可知 靖之
金兵衛(大家) 荘司  肇
おもん(裏店の女) 青山 眉子
おきみ(裏店の娘) 荒木真有美
おまち(めし屋の女中) 生原麻友美
仙蔵(めし屋の亭主)
荘司  肇
庄八(辰巳屋の手下・兄貴分)
河内  浩
庄八(辰巳屋の手下・弟分)
斉藤  淳
権六(六助の連れ)
志村  要

<スタッフ> 

原 作

脚 本

吉永 仁郎

演 出

安川 修一

美 術

広瀬誠一郎

照 明

音 響

小山田 昭

衣 裳

今西 春次

舞台監督

石井 道隆

制 作 下  哲也
村田 和隆


関連サイト

劇団俳優座ウェブサイト http://www.haiyuza.com/

フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)藤沢周平
http://ja.wikipedia.org/wiki/藤沢周平

たーさんの部屋2 藤沢周平作品データベース
http://www.j-real.com/ta-san/fjsw/


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最終更新日 2006/11/02