酸欠(anoxia)

A)水槽での酸欠

(「サンド濾過の酸化と還元」も併せてお読み下さい。)

1)硫化水素中毒死
1990年代はじめ、砂を敷いた水槽が増えてくるにつれ、サカナの酸欠死と思われる事故の報告が主として欧米で増えてきました。
それまでなんの病的変化も認められなかった水槽で、夜間、あるいは早朝、サカナのみが大量死する事件です。
不思議なのは、「予測できず、ある日突然起こる。」「十分エアーレイションしていたにもかかわらずサカナが死亡した。」などという点です。
オーバーフローはそうでないものよりこの「サカナ酸欠死」がやや起こり難いようでしたが、オーバーフローでも酸欠死はありました。
このため、一時「ベルリンには2,3センチ以上砂を引いてはいけない。」「モナコでは魚は飼えない。」などといわれたことがありました。

この砂を敷いた水槽での「サカナ酸欠死」は酸欠と硫化水素中毒だったようです。
ライブサンドや、普通の砂でも、その砂が熟成すると砂の粒は光合成バクテリアでコーティングされるようになります。この砂での光合成能力は高く、同面積の熱帯雨林、サンゴ群落に相当するそうです。
光合成能力が高いということは、酸素も多く発生させますが、有機物合成も多く、また夜間は呼吸のため昼とは反対に砂は大きな酸素吸収源となります。
その上、1%の有機物を含むデトリタスもサンド層には落ちてくるので、その酸化も含め、砂の表面は夜間、大量の酸素消費を行うと思われます。
それでも、この砂の上に酸素を含んだ充分な水流があれば、サンド層表面は酸化的環境を保てますが、流れがないと、表面でも嫌気化します。
ところで、砂粒の大きさや有機物の量によって変わりますが、3〜10cmでサンド層は硫酸還元を始めます。
硫化水素が発生しても、上の層が充分に酸化的なら、硫化水素は硝酸還元の材料として使われ、飼育水中に漂い出してくることはありませんが、砂の表面が還元的になると飼育水中に猛毒の硫化水素が漏れ出て、寝ているサカナを襲います。
脊椎動物のヘモグロビンは硫化水素と結合しやすく、少量の硫化水素でサカナは酸欠死してしまいます。

「サカナ酸欠死が予測できず、ある日突然起こる」のは、砂が充分な光合成能を持ち、硫化水素帯がサンド層に形成されるのは、水槽立ち上げ後、ある時間経ってから起きるためでしょう。

また、「十分エアーレイションしていたにもかかわらずサカナが死亡した。」というのは、エアーレイションはその部位では海水の酸素化に有効ですが、水槽全体、特に離れたところの砂の上の水流を作るには不十分です。
岩組が複雑であるほど、砂の上に水流のない部分がスポット的に出来易くなります。
海水魚は淡水魚と違い、酸素濃度の低下を感知して、移動したり、「鼻上げ行動(水面でのパクパク)」が出来ませんので、寝ている場所がたまたま酸欠スポットだと突然の夜間死亡に襲われます。
とくに、欧米のモナコ水槽はオーバーフロー加工されていず、エアーレイションのみに水流を頼る水槽が多かったので、このようなことになり易かったと思われます。

2)プレナム開発の理由
サンド濾過の酸化と還元のI」にも書きましたが、モナコ水槽は、最初非常に厚く砂を敷き、プレナムを設けていなかったのですが、徐々に砂を薄くし、プレナム(止水層)を作ったのも硫化水素発生を押さえるためだったと思います。
ちなみに、誤解されている方が多いですが、プレナムでは硝酸還元は行われていません。その上の砂の層でのみ硝酸還元は行われています。
プレナムの機能は、「その中の海水の酸化還元電位を一定にする」という働きです。
このプレナムの酸化還元電位は、もっとも砂の薄い部分によって決まります。
プレナム水槽の砂にスクリーンを引くのは、穴掘り生物によって砂に穴を開けられれば、硝酸還元電位が出来ないほどに砂の酸化還元電位が上がってしまうので、これを防ぐためです。
厚い砂の部分があっても、その下のプレナムの電位が上がれば、下から酸素を含んだ水のために、その上のサンド層でも硝酸還元が行われなくなります。
すなわち、プレナムでは一個所でも砂が極度に薄い部分ができれば、全体が硝酸還元が不成立となります。
また、砂のもっとも薄い部分によってプレナムの酸化還元電位が硝酸還元電位になっていて、それ以上、電位が下がらなければ、砂のどこでも硫酸還元は成立せず、硫化水素の発生もありません。
砂は細かいほど、浅くから酸化還元電位が下がりますから、モナコではやや大きめの砂を推奨しています。
モナコではあまりライブロックを多用しないのも、エアーレイションで作った水流を岩のために妨げさせないのが大きな目的だと思います。
このことは、特にオーバーフローでないモナコでは必要な条件だったでしょう。

ただ、このような硫化水素発生を防ぐプレナムや砂の小ささの制限、ライブロック多用の禁止は、あることさえ水槽で出来ていれば不要な仕組みです。
それは、十分酸素を含んだ水流が砂の上にまんべんなくあるという条件です。

3)硫化水素中毒死を防ぐ方法
(ただ、硫化水素は砂の中に封じ込められていれば、硝酸還元の材料になり、有害どころか有益でさえありますが)
サンド濾過の酸化と還元のE」

a)プレナム法
上記した理由と条件で硫化水素発生そのものを無くす、という方法です。
プレナム制作はとくにスクリーン制作が面倒で、砂の落下防止を怠ると砂でプレナム空間が埋まってしまうという事態が起こりやすいです。

b)サージバケット法
ハワイのワイキキ水族館などで採られている方法で、飼育水槽よりうえにサイフォン式の間歇落下水システムを作る方法です。
エアーを含んだ水が間欠的にドッと落ちてくるので、砂の上にも酸素含んだ充分な水流が確保でき、硫化水素の封じ込めはきちんと行われます。
ただ、サイホン方式のため、水槽の水位変動があり、水位式のRO水補充システムは使えません。
また、水槽には常に細かい泡があるので、それを気にする人もいるでしょう。
泡の消滅時、塩がいくらかはじけますので、外に設置するには良いですが、室内では周囲の塩垂れに悩まされるでしょう。

c)フィン式
大型のフィンで波を作り出す方法です。
海水の動きももっとも自然で、特ににエアーを供給するシステムを設けなくても、水槽生物、砂の状態は非常に良好です。
ただ、設置されているのはプール級の水槽で、もちろんホビー水槽用のシステムは市販はされていません。

d)オーバーフロー水流の下向け
メインポンプから飼育水槽内に戻ってくる水流を下に向ける方法です。
飼育水槽で、水が上下攪拌されていれば、とくにエアーレイションやスキマーを使わなくても酸素飽和した水流が砂の上を流れます。
(水槽水全体の酸素化には見た目とは違いますが、エアーレイションより水流の方が遙かに物をいいます。)
ただ、この方法は、上下攪拌に十分強い水流をつけた場合、下の砂を巻き上げたり、どっかにその砂の山を築いたりしやすい、という欠点があります。

e)水槽内短絡回路法
水槽底面に砂の上に出る吹き出し口を作ったり、水槽内補助ポンプを使う方法です。
もっとも簡便で、効果が高く、砂の厚さや岩の配置が自由に出来るので、家庭内水槽にはお勧めです。

ただ、設置の仕方でいくつか注意点があります。
まず、吸い込み口に水槽生物が吸い込まれない工夫が必要です。
オーバーフロー内外筒のあいだに吸水口を作り、底面から吹き出させるのが最善ですが、水中ポンプで代用する場合、吸い込み口にナマコなどが吸い込まれないようにすることが大事です。

また、吹き出し位置も大事です。
一言でいうと「下から斜め上方に向かう湧き水のような水流」を補助ポンプで作ることが大事です。
水槽下部の水が常に水面に送られていると、夜間でも飼育海水全体が酸素飽和しています。
水面の水が常に下の水と入れ替わっている場合、水面から供給される酸素は莫大です。
(止水ではすぐ表面のみで飽和してしまう)

なお、サンプ内に砂を引いていない場合、エアーレイション、サンプ内の補助ポンプは不要です。
砂が無いので硫化水素発生は起こりませんし、本水槽に比べて水量のすくないサンプの体積ならメインポンプの作る水流で十分サンプ内海水は攪拌されていますので。

短絡回路の数ですが、60cm水槽なら一個所、90cmなら二個所、30cmます毎に一個所ずつ増やしていけば、相当複雑な岩組でも全体に海水を回せるでしょう。


結論として、「砂を敷いた室内水槽の酸欠防止には、補助ポンプによる下からの水流」をお勧めします。


B)自然界での酸欠

私達の生きている新生代第四期は、氷河期と間氷期とが周期的に繰り返された時代です。
この周期は地球の歳差運動などでひきおこされますが、その温度変化に大きな影響を持つのは二酸化炭素であることは多くの方が認めることでしょう。
この地球の表面温度を決める二酸化炭素濃度に「海」、「海での酸欠現象」が大きくかかわっています。
アクアリウムホビーは「水槽を通して自然を知る」という面もありますので、この仕組みについて書いておきたいと思います。

以前、光合成量は陸が海の2倍と言われていましたが、最近の報告では、二酸化炭素の光合成吸収量として、陸で520億トン、海で450〜500億トン、と訂正されています。
これは、今のような間氷期の値で、氷河期はもっと海での光合成量が多く、このことが氷河期の低二酸化炭素:低温環境を生んでいたようです。
ちなみに、氷河期は大気中の二酸化炭素濃度は200ppm、化石燃料を燃やす前の間氷期が280ppm、現代が360ppmです。
海の有光層での光合成生産物は一部深海に沈み、それによって大気中の二酸化炭素を200ppm下げる効果があります。
これを「生物ポンプ」といいます。
海での光合成量が大気中の二酸化炭素濃度、地球表面温度に大きな役目を果たします。

では、どうして氷河期は海での光合成量が多く、二酸化炭素濃度が低かったのでしょうか?
それは、海の有光層全体(光合成する層)での硝酸塩濃度や珪藻塩濃度が高かったためです。
氷河期に硝酸塩濃度が高かったのは、硝酸塩の合成が盛んだったこと、分解が低かったことによります。

1)硝酸塩合成
少し前まで、リンが光合成の制限要因と考えられていましたが、現在は総光合成量は硝酸塩、鉄分によると評価が変わっています。
ちなみに、鉄は硝酸塩濃度を高めるために必要であり、鉄の供給が硝酸塩を増加させます。
これは、シアノバクテリアなど窒素固定能を持つ藻類は鉄を含んだ酵素:ニトロゲナーゼで窒素固定を行うためです。
鉄を与えれば、海での光合成能は高まります。
鉄および珪酸供給源は沿岸では河川が担いますが、海全体としては、陸から風で運ばれる砂塵が主たる供給源となります。
氷河期は大陸内部が乾燥し、風も強かったので、間氷期より遙かに多くの鉄と珪酸の供給があり、海での光合成を活発化させていました。
なお、珪酸も海での二酸化炭素吸収を増加させます。
海での光合成プランクトンは珪藻類と石灰藻類がもっとも多く、1位と2位ですが、石灰藻は炭酸カルシウム合成の時二酸化炭素の放出を行うので、トータルとして、珪藻の60%ほどしか二酸化炭素を深海に運びません。
氷河期は間氷期より砂塵による珪酸供給が大きいため、より珪藻類が繁栄していました。
これも、氷河期の二酸化炭素濃度が低かった理由の一つでもあります。

2)硝酸分解
氷河期は硝酸塩の分解が低かった時代でもあります。
この過程に「酸欠」がかかわってきます。

ご存じの方も多いと思いますが、深海には海流があります。グリーンランド沖で冷えた海水が深海に沈み込み、地球全体をいくつかの流れに分かれてめぐっています。
これが再び海水表面に出たとき、硝酸塩などの栄養塩を有光層に戻します。
この深海海流は同時に、深海の酸素供給源でもあります。水槽と同じように、自然界でも上下攪拌する水流があるからこそ、深海底が酸欠にならないのです。
氷河期は冷やされる海水量が多いので、この深海海流が強く流れ、暖かい間氷期には弱まります。
そのため、深海底の酸素濃度は氷河期に高く、間氷期に低くなります。
間氷期、深海底の酸素濃度が低くなると、海底での硝酸還元が活発になります。
深海底のすぐ上を流れる深海海流中の硝酸塩を、周囲の酸化還元電位が低いので、海底の砂が硝酸を酸化剤としてより多く使います。
この現象のため、氷河期は硝酸塩を多く含んだ深海海流が有光層にたくさん供給されるのに対し、間氷期は、硝酸塩濃度が低い流れが有光層に弱く流れ込みます。
このため、氷河期の方が硝酸量の湧き出しは多く、光合成も活発です。

水槽で観察される硝酸還元が自然界の二酸化炭素濃度や地球の温度にかかわっているのです。

(ちなみに最近、日本海でも海水が冷やされず、海底海流が弱くなってきており、近い将来、日本海の海底は嫌気環境になることが予想されています。
このまま、地球の温暖化が進めば、地球のあちこちで海底の嫌気化が新生代ではかつてない規模で誕生しそうです。)
(中生代ジュラ紀に一度、全地球的に海底嫌気化が起きたことがありますが)

1)2)より、氷河期の方が硝酸塩合成が高く分解が少ないため、海での光合成は間氷期より活発で、二酸化炭素濃度も低くなるのです。

なお、「海に鉄を大規模に投与して、海水植物プランクトンの光合成量を上げ、二酸化炭素を吸収してもらおうという」という考えがあり、一部実験されています。
光合成で生じた有機物が沈降した分だけ、二酸化炭素も取り去られるわけですが、地球温暖化で深海海流が弱っているときに、有機物が深海に沈降すれば、海底の酸欠を助長する可能性があります。そうなれば、植物プランクトンによる全地球的二酸化炭素の吸収はかえって低下する可能性も考えられます。
この種の自然環境介人為操作は、その結果が出るには長い時間がかかり、悪影響が出たときにはもはや撤回できないことが多いので、正確な定量評価の上で、慎重に計画して欲しいとおもいます。

C)サンゴ、イソギンチャク輸送時の酸欠

サンゴやイソギンチャクの中には輸送に弱いものがあり、発送時元気でも、到着時に溶けていることがあります。輸送中大きな温度変化がない限り、この原因は「酸欠」と思われます。

ちょっと脇道にそれますが、生物が爆発的に増えたカンブリア紀以前には、動かないカイメンは別として、動く肉眼的な大きさの動物はいないと思われていました。しかし1990年代になって、「先カンブリア紀にもエディカラ動物群という、ある程度の大きさと運動能を持った生物群がいたと」一般に理解されるようになりました。
このエディカラ動物群が近年まで知られていなかったのは、化石に残りにくいからです。この動物群は大きなものでは1メートルもありながら、厚さは1mmくらいしかなかったようです。
その原因は「循環器と多細胞生物」にも書きましたが、循環器を備えていなかったためです。水の動きがない状態で酸素が分子運動による拡散で到達できるのはせいぜい1mmくらいです。
このため、いくら大きい生物でも厚さは1mm止まり、うんと平べったくならざるを得なかったわけです。
厚さ1mmの生物では重い殻を背負って移動することは出来ません。殻や骨のような生体構成要素がなければ非常に化石として残りづらく、エディカラ動物群は最近まで発見されなかったのでしょう。

人間でも、毛細血管間の最大距離は1mmです。
いまは先カンブリア紀より酸素濃度が遙かに高いですが、恒温動物の酸素消費は莫大なので、やはり1mmを超えると酸素供給システム:循環器が必要になります。

サンゴの輸送方にドライ法があります。
「サンゴの水を切って、酸素を少量吹き込んだ水無しのビニール袋に包み送る」という方法です。
この方法を試した方のうち、「ドライ法は難しい、予測できずダメになってしまうことが多い」という意見を聞いたことがあります。
私も、以前、なんどもドライ法を試したことがありますが、初期の頃、仏心から(?)ついスポイトで少量の海水を入れたものが駄目になりました。
ほんの極少量の水に浸かっていても、ミドリイシはその部分から溶けていくのです。
逆に、完全に水を切って輸送したものは大丈夫でした。(海水+酸素パックより長時間もったくらいです)

これは、少量の水があることが酸欠を招いたためと思われます。
サンゴはストレス時、粘液を出しますが、これは水流があれば洗い流されますし、大量の輸送海水と共に揺すられれば、ある程度サンゴから離れて行くでしょう。
しかし、少量の海水が有った場合、そこは高濃度の粘液を含んだ「動かない水の層」となり、サンゴの表面からの酸素吸収を妨げてしまうと考えられます。
ミドリイシをドライ法で輸送する場合は完全に水を切る必要があります。(もちろん乾燥させてはダメですが)
あとは、温度管理が輸送中出来れば、この方法は安全な輸送法と見直されるでしょう。

ハタゴ、イボハタゴなども輸送に弱いイソギンチャクといわれています。
これらのイソギンチャクは三次元的体積が大きく、運動しないと内部が酸欠になりやすのと、非常に多量の粘液を出してしまうためだと思われます。
酸素と大量の海水を入れた袋の中は、相当揺すられない限り、酸素は水面にのみ溶け、袋の下、イソギンチャクのいるところには届きにくいものと思われます。(A参照)
そのうえ、大量の粘液を吐き出し、自分の回りの海水をゼリー状化させているのですから、より水が動きにくく、イソギンチャクは酸欠死し易くなります。

Shopの方からお聞きしたのですが、海外からのハタゴ、イボハタゴの輸送は「ドライ法」で送られてくるそうです。
できるだけ、水を吐き出させて縮めたイソギンチャクを、海水を入れない酸素パックにして輸送するそうです。
ただ、いくら縮めても、体積の大きいこれらのイソギンチャクは、大量に粘液を吐き出し続けるので、日本に着いたときは口を開いて酸欠死寸前であることが珍しくないそうです。
一般に、ドライ輸送法は共肉の薄いSPSに適した輸送法で、共肉が厚く粘液の多いサンゴやイソギンチャクにはやや不向きです。
そこで、あるアイデア(「上向きフロート法」)を思いつき、Shopに実験してもらいました。
ハタゴ、イボハタゴ輸送時は、「まずイソギンチャクを適度な大きさの「ザル」(100円Shopで売っているようなやつで水通しの良いもの)に入れ、そのザルに発泡スチロールの浮きを取り付けて、輸送の袋に浮かべる」という方法です。
コツは、イソギンチャクの表面が水面ギリギリになるように調整し、転倒やザルからのイソギンチャク落下防止をすることです。

ポンプなどのない輸送袋の中では酸素を充填されても、海水の酸素濃度が高いのは表面のみです。
「上向きフロート法」はこの酸素濃度の高い表面近くの海水中で、イソギンチャクに輸送時間を過ごしてもらおうという方法です。
あと、輸送時の揺すられも水面近くの方が大きく、これはイソギンチャクの粘液を取り去り、酸素を取り込みやすくしてくれます。

実験時、私も東京から秋田へイソギンチャクを送ってもらいましたが、到着時、口盤はしっかりと閉じ、脚部はザルにくっついて、まるで水槽に状態良く飼われているイソギンチャクのようでした。
その後、Shopに問い合わせると、この方法でいままでよりずっと状態良くハタゴ、イボハタゴが輸送できるようになったそうです。
サンゴ、イソギンチャク取扱の多いShopですが、イソギンチャク輸送において、この方法で駄目だったのは1例のみで、それも着死ではなく、水槽投入後1日してからだそうです。
「上向きフロート法」は手間と経費がホンの少し増えますが、ハタゴ、イボハタゴは自然界でも貴重な存在ですので、事故死を防ぐために多くの方に採用していただきたいと思います。

参考文献:サイエンス、科学(岩波書店)
協力ショップ:ナチュラル         

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