第1章 現状と問題点
1.卒後教育の現状

 現在,卒後教育又はそれに準ずる形式で実施している薬科大学及び薬学部は、
私立大学においてはほとんどのところで行われています.
薬剤師の卒後教育の歴史はすでに25年にもなり,各大学で発足の経緯については
多少の差はあるものの試行錯誤の結果現在に至っています.
 各大学とも卒業生全般に満足させるような卒後教育講座のテーマを考えられたようです.
今回調査した卒後教育講座のテーマを以下に記述すると,

1)生物薬学の基礎と最近の進歩
2)薬剤学の基礎と最近の進歩。
3)衛生化学と公衆衛生学の最近の話題
4)東洋医薬学の最近の話題と漢方治療の実際
5)医療薬学の展望
6)地域医療のための新しい薬局
7)病態生理と治療(医学知識講座)
8)トピックス(例:プロスタグランジン類の化学と生理 的役割ほか)
9)その他(例:新しい文献索引についてや施設見学会など)

上記のテーマの中には在学中に講義を受けることのできなかった新しい講義科目の
受講希望によって企画したり,卒業後の医学・薬学の進歩による遅れを取り戻すための
再教育を目的とした企画などです.
そして上記のようなテーマで実施することによって受講者に取って勉強になったことは確かです.

 次に企画スタッフについて調査したところ、大学の教職員のみで委員会を構成しているところや
特に大学の教職員と同窓会の協同下で,同窓会主催で大学が協力という形態が多く見られました.
また実施回数について調べてみると,7月又は9月の土,日曜日を利用して3日間位を考えている
大学や春,秋の2回の実施を基本に春は基礎的な内容をそして秋は応用的な内容になるように
変化をもたせたり,1年に6回開催を決めている所や1年に8回以上と各大学の特殊性が現われていました.



2.卒後教育の問題点

(1)企画委員の構成

 現状のところで述べたように各々大学の取り巻く環境にも差がありそれぞれ独自の考え方で
スタッフの構成が成されています.卒後教育が長期にわたって無理なく存続するためには
企画スタッフの構成にかかっているとも言えるのではないでしょうか.

(2)卒後教育の内容

 大都市圏では薬剤師会,病院薬剤師会,製薬会社,その他の組織体などによる
薬学や医学に関する講演会,講習会或いは勉強会などが頻繁に開かれているため新知識を
身に付け易く,その他雑誌や成書から新しい情報が極めて容易に入手できるため卒後教育講座を
開催しても参加人員が比較的少ないという現状があります.

(3)資質向上するための講座回数

 時代の進歩に対応するための生涯を通じての教育だとするならば1年に6回程度の開催で
大学が主催している講座は卒業生の出身大学へのホーム・カミングの形にとどまり必ずしも薬剤師の
資質の向上のための教育とはいえないという声が出始めています.
これからの卒後教育の企画の中で1年間に最低何回の講座を開けば薬剤師の資質向上になるのか
についての検討が必要です.

(4)遠隔地在住卒業生のフォロー

 近畿大学薬学部を卒業した人たちの大半は近畿地方周辺で活躍されています.しかし一部の人たちではありますが全国各地で活躍している人たちからの参加希望に対しての配慮を考えなくてはなりません.


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