センター試験は公平に                    
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 センター試験の国語Tで、教科書に掲載された文章が出題されるミスがあった。多くの受験生はこれに「不公平」を感じたことだろう。
 しかしもっと重大な不公平が現行のセンター試験にはある。科目間の「難易度」という不公平だ。
 難しい科目を選択すれば「損」で、易しい科目を選択すれば「得」なので、センター試験の問題は、同じ教科内ではどの科目でも難易度に差がないよう作成することが求められる。
 
 難易度の差は、科目の平均点と標準偏差があれば、統計的に検証できる。これらが、大学入試センターのホームページにあったので、地理歴史、理科のB科目について検討してみた。
 平均で約10点差がある地理と日本史はもちろん、平均で約7点差がある地理と世界史でも、統計的に(危険率1%)差がある。平均で約14点差がある生物と化学はもちろん、平均で約6点差がある生物と物理でも統計的に差がある。すなわち各難易度に差がある。
 大学入試センターは平均点で20点の差がでれば「得点調節」をするという。とんでもない話だ。平均点で10点も差があれば、「公平性」を確保するため、得点調節をする必要がある。早急な検討が必要だ。
                                (2005年1月)
 
 
大阪府教育委員会による「教員の資質向上は何をもたらすか」
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日経新聞6月11日号に「大阪府教委 教員の自己評価導入
最終報告案 現場の活性化狙う」という見出しで、次の記事がありました。
 
「・・大阪府教委の委員会は10日、教員が自ら目標を設定、達成度の自己評価を昇任や給与に反映させる新人事評価システムの導入などを盛り込んだ最終報告案をまとめた。2004年度からの本格導入を目指す。/報告案によると、教員一人ひとりが年度初めに年間目標を立て校長に提出。年度末に生徒や保護者、同僚教員からも意見を聴き、目標達成度を自己評価する。これを基に校長が5段階で評価し、昇任や給与などの処遇に反映させる。」
 
実際に、大阪府教育委員会のHPに、その最終報告案があります。
URLは、 http://www.pref.osaka.jp/kyoshokuin/kentoi/soan/so_0haji.hyml
 
ただ、これを見ると、報告書の中には新聞の伝える「給与への反映」は見あたりません。
最終報告案では、かなり詳細にこの「自己評価システム」が述べられています。
 
また、これについて意見募集をしています。次の通りです。
 
********************
教職員の資質向上に関する検討委員会「最終報告(素案)」に対するご意見をお寄せくださ
い。
 ( E-mail: kyoshokuin-g01@sbox.pref.osaka.jp )
教職員の資質向上に関する検討委員会 事務局
 
 (大阪府教育委員会事務局 教職員室 教職員企画課)
   〒540-8571 大阪市中央区大手前2
   電話 06-6941-0351(代表) 内線 3440
********************
 
意見募集に応募してみませんか?
以下の文は、そのためのヒントにしていただけたらと願い、考えたことを、列記してみました。
 
問題点
@検討委員会に現職の教員が1名しか入っていない。
 「教職員の資質向上に関する検討委員会」は15名の委員で構成されているが、現職の教員はそのうち1名のみ(貝塚市立第2中学校の女性教員のみ)。他は、小学校の校長が2名、中学校校長が0,高校の校長が1名、養護学校の校長が1名、大学の教授が5名、甲子園短大の学長(座長)が1名である。教職員団体は入っていない。
 
Aセンシティブ情報(思想・信条や病歴などの社会的差別につながる個人情報)への配慮が明記されていない。
 センシティブ情報については、「大阪府個人情報保護条例」(1996年)で、「実施機関(教
育委員会、人事委員会を含む)の責務に関わるもの(2章)」で、「原則として収集禁止」を
明記している。 http://www.kantei.go.jp/jp/it/privacy/houseika/dai5/5siryou1-1.html
今回の「自己評価システム」では、校長や教頭による教員の「絶対評価」が行われるが、最終報告書においても、「センシティブ情報が『収集』されることはなく、当然『絶対評価』にセンシティブ情報が影響をあたえることはない」と「明記」すべきだ。
(「日の丸」、「君が代」についての信条や議論で、教員が「不利」な評価を受けることは絶
対ないと明記すべきだ)。
 
B管理職は主に職員の「態度・行動」で評価することになる。
 教員への「評価」は、「業績評価」と「能力評価」の2本立てになっているが、教頭や校長が各教科の「内容」に即して、正当な「評価」やアドバイスを与えれるとは、考えにくい。そこで、実際の「評価」は、ほとんどが「目標設定以外の業務も含めて、具体的にあらわれた態度・行動」(最終報告案)が「絶対評価」されることになる。すなわち、管理職に「従順な」態度が高く評価され、「教職員が相互に協力し合う、開かれた関係」(最終報告案)が築かれることはなく、各自が「管理職」の顔色をうかがい、管理職への「ごますり」が横行する陰湿な職場が、(今の多くの会社がそうであるように)現れる可能性が高い。
 
C絶対評価は、「恣意的な評価」に陥りやすい。
 職員の数が少なく、「評価」に十分な時間がかけられれば、ある程度「恣意的な評価」は防げるかもしれない。しかし実際の管理職の「仕事」を考えればそのような時間の余裕はなく、また多くの職場で職員の数は大変多い。いきおい、好き嫌いを元にした「恣意的な」評価や会議での「発言」をもとにした「評価」が蔓延するだろう。
 
→もし、この報告書を基本的に「認める」とした上での「提案」
1)職員による校長や教頭への「評価」システムを確立する。そしてその評価の結果、一定以下の低い評価しか受けられない管理職は、その学校での職員の評価をする事を禁ずる。
 この、職員による「管理職」評価は、毎年行い、結果を公表する。
(日本最大のガス会社、東京ガスは93年から、課長以上の社員を、その部下や同僚が評価する「行動診断」の制度がある。この制度は昨年2001年からは「昇格の判断材料」にも使われている。この評価の対象になるのは課長級から部長級まで約2000人にのぼる。/朝日新聞2002年6月15日、「ザ・査定」から)
2)同様に、職員による教育委員会への「評価」も実施する。そしてその評価の結果、一定以下の低い評価しか受けられない教育委員会は、早急に委員の構成を検討し、府民に結果を公表する。
 
→→この報告書を基本的に「認める」とした上での「疑問」
ア、この報告書に書かれている「面談」や「評価」をきちんとできる管理職がどれぐらいいるのか?まじめな「管理職」には、「過労死」が待っている?反対に、いばりたい「管理職」
は、思い切り「恣意的評価」をちらつかせ、職員からの「付け届け」が増えることを期待す
る?(実際、ワンマン校長のもとでの私学がそうであるように)。
 
☆そもそも、どうしたらいいのか?
A、管理職が「手本」となる授業やHRを行う。
 報告書に「校長・教頭 OJT(オンザジョブトレイニング)等の研修の実施」とある。管理職が、実際に授業をいくつか受け持ち、その授業を公開し、管理職の蓄積したノウハウを職員に「伝える」。同様に、HR活動でも管理職はそのノウハウを職員に伝えていく必要がある。職員は、いい実践を「見る」ことで、自分の力量を付けていくことができる。管理職がお手本を示すことで、管理職のアドバイスも、職員が「納得」できるものとなる。また、このOJTは、教育委員会の「指導主事」も率先して、現場で「出前授業」を行い、教職員に「見本」を示すことで、教職員の力量の向上に資することでも可能となる。
 
B、「客観的な成果」に対して「報酬」を与える。
 対外的な学校活動の成果(部活動を含む)や、各種コンクールで良好な成績を収めた場合、
その指導教員に対して「ボーナス」を与える。
 
C、「担任手当」を新設する。
 多くの学校で年々、生徒の質が低下し、生徒指導にかかる労力と時間が増加している。そのため、本心では「担任」を避けたい教師が増加している。そのため、一つの動機付けとして、「担任手当」が必要である。
 
☆☆ 結論
 今回の報告書では、職員の「評価」をするために、膨大なエネルギーが管理職・職員ともに必要になるが、得られる「成果」は、まじめな管理職にとって、「過労死」やストレス、不真面目な管理職であれば、「暴君」の「おごり」だろう。いずれも職場は、「表と裏」を上手に使い分ける職員が幅をきかし、多くの職員は今以上に「孤立」した状態に追い込まれるだろう。職員間のトラブル、「いじめ」、「おとしこめ」が頻発するだろう。これは、多くの私企業の状態に近づくことになる。
 このような、「不毛」な方策よりも、A、B、Cで示したことで、より少ない「コスト」
で、より大きな成果と「風通しのよい職場」、「協力しあえる職場」ができると確信します。
                          (2002年6月30日)
 
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設置基準の変更は中学校をますます悪くする。
                                N
 最近、文科省が小・中学校の設置基準の変更を打ち出し、意見募集の後4月1日には施行が予定されている。その内容を知り大変不安を持った。
 学級の定員の上限は、今と同じ40人のままだ。学級崩壊を問題にするなら、まずクラスの生徒数を20人から30人程度にすることが、もっとも効果的だ。
 教諭の数では、小学校で今まで通りだが、中学校では、1学級当たり「2名の教諭」となっていたところが「1名以上」と半分になっている。これらは「最低基準」との断りはあるものの、将来中学校の教諭定員が半減し、公教育の内実が格段に悪くなると思われる。
 また、設置基準に「自己点検評価」を課すのも問題だ。文部行政は教育の「条件整備」を主とすべきであり、この「自己点検評価」の内容いかんでは、文部科学省の一方的な教育内容への介入が可能となるからだ。
 リストラの進行で、98年から自殺者は毎年3万人を越えた。この数は去年9月11日の米国での犠牲者数の10倍にもなる。3万人の自殺者の内働き盛りの四〜五十代は40%以上を占める。公教育は社会全体のセーフティーネットであり子育て支援の柱である。現在公教育の一層の充実が望まれるが、今回の文科省の設置基準の変更は、公教育の機能低下をもたらす。
 またこれほど重要なことについて国会審議もろくにされず、一片の政令で決まろうとしている。日本は「官僚主権」の国か?国会できちんと審議を行い、関係者のヒヤリングを実施するため施行の延期を切望する。
                           2002年3月13日
 
 ************************
 
<資料>
「小学校設置基準」及び「中学校設置基準」の制定等に関する
パブリックコメントの実施について
   
  平成14年3月12日
   
 学校教育法に基づく省令「小学校設置基準」及び「中学校設置基準」の制定等に関するパブリックコメント手続き(意見提出手続き)を以下のように実施します。
(略)本件につきましてご意見がございましたら、【 ご意見の提出方法】の要領にてご提出ください
   
【 新たな制度の概要】
   
1  学校教育法(昭和22年法律第26号)第3条に基づく文部科学省令として、新たに、「小
学校設置基準」及び「中学校設置基準」を制定し、以下の事項について定める。(別表を除き、小学校・中学校共通。)
  @ 設置基準の位置付け
   小学校(中学校)は、学校教育法その他の法令の規定によるほか、本基準により設置する。また、設置基準を最低基準と位置付け、設置者は、小学校(中学校)の水準向上に努める
  
 A 自己点検評価及び情報提供
   小学校(中学校)は自己点検評価及びその結果の公表に努めるとともに、積極的な情報提供を行う。
 B 学級の編制
   一学級の児童(生徒)数は、原則として、40人以下とする。また、学級は、原則として、同学年の児童(生徒)で編制する。
 C 教諭等
   原則として、1学級当たり教諭1人以上を置く。また、教諭等は、他の学校の教諭等の職を兼ねることができる。
 (略)
 
3  施行日 平成14年4月1日
       ただし、設備編制に係る事項については、必要な周知期間を置く。
   
4 その他
  自己点検評価と情報提供については、高等学校設置基準(昭和23年文部省令第1号)、幼稚園設置基準(昭和31年文部省令第32号)、専修学校設置基準(昭和51年文部省令第2号)及び各種学校規程(昭和31年文部省令第31号)にも定める。
  (施行日:平成14年4月1日)
   
【 ご意見の提出方法】
   
1 提出手段 郵便・FAX・電子メール
  (電話によるご意見の受付は致しかねますので、あらかじめご了承下さい。)
   
2 提出期限 平成14年3月25日(月)
   
3 宛先
    住所: 〒100-8959 東京都千代田区霞が関3-2-2
 文部科学省初等中等教育局初等中等教育企画課教育制度改革室企画調査係 宛
   FAX番号: 03-3581-2630
   電子メールアドレス: syokyo@mext.go.jp
   
4 ご意見提出様式
   
 文部科学省初等中等教育局初等中等教育企画課教育制度改革室企画調査係 宛
   
 「小学校設置基準」又は「中学校設置基準」の制定に対する意見
  (1) 氏名
  (2) 所属組織/部署名
  (3) 住所
  (4) 電話番号
  (5) 意見
   
 注1) ご提出いただいたご意見(記載内容)は、住所、電話番号を除き全て公表される可
能性があることをご承知おき下さい。
注2) 電子メールにてご意見を提出いただく場合には、ご意見を記入したテキストファイル
の添付によりお願いします。
 
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