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日米欧などがイラク債務の8割削減で合意したという報道を読んだ。イラクの債務残高では、実に日本が1位であり、日本にとって8割という額は、約7千億円にものぼる。7千億円を日本はイラクにプレゼントしようとしている。これは世界一の経済的貢献だ。
しかし日本はそれほどお金持ちか?9月に財務省が国の借金を発表した。それによると国の借金が6月時点で、729兆円になったという。国民1人当たり570万円という巨額だ。更に、この借金は税収の17.5倍にあたるという。国の財政は、すでに破産状態だ。
イラクに派遣されている自衛官1人当たり1日の危険手当が3万円という。これ以降千人に増員されれば、危険手当だけで1ヶ月9億円、6ヶ月54億円となる。
台風や新潟の地震で多くの世帯が避難生活をしている。現在、人道復興支援は国内で必要だ。この54億円が千世帯に配られたら、各世帯で5百万円以上の支給が受けられ、生活の再建が可能となるだろう。
8割債務削減で十二分にイラクに貢献している。もはや借金国家となった日本は自衛隊派遣の余裕はない。すぐに自衛隊をイラクから呼び戻し、そのお金で国内の人道支援を行うべきだ。
(2004年11月23日)
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有事7法案が衆院を通過した。それを報じる本誌の記事に「かってなら1本ずつ国会に提出して審議してもおかしくない重い法案・条例だ」と紹介があった。
この法案が成立するとどんな未来がやってくるか?
日本が武力攻撃を受けなくても米軍との関係で次のことが起こる。
米軍が侵攻した某国に、自衛隊が出かけていき給油を行い、弾薬を供給する。県や市が管理していた港や空港が米軍優先で使われる。米国に協力する日本と某国が、険悪な関係になる。日本政府が「攻撃されるおそれがあり、有事だ」と判断する。するとNHKを初めとする報道機関が報道制限を受け、政府の発表をそのまま流すようになる。時には国民の土地や物資が強制的に取り上げられ、民間人も強制動員されることも起こりうる。拒否をすれば懲役刑が待っている。
これは戦前の国家総動員法の現代版ではないか。確かに年金問題は重要だ。と同時に国の進路を大きく変えてしまう有事7法案も大変重要だ。参議院では慎重に審議を行い、公聴会も開き議論を尽くして欲しい。
(2004年5月26日)
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次の国々は、A国が第2次世界大戦後に戦争をした国、または空爆をした国のリストです。
中国(1945、46年、50〜53年)、朝鮮(1950〜53年)、グアテマラ(1954、67〜69年)、インドネシア(1958年)、キューバ(1959〜60年)、ベルギー領コンゴ(1964年)、ペルー(1965年)、ラオス(1964〜73年)、ベトナム(1961〜73年)、カンボジア(1969〜70年)
グレナダ(1983年)、リビア(1986年)、エルサルバドル(1980年代)、ニカラグア(1980年代)、パナマ(1989年)、イラク(1991〜99年)、ボスニア(1995年)、スーダン(1998年)、ユーゴスラビア(1999年)。
アフガニスタン(2001年〜)、現在再びイラク。(注)
A国とはアメリカ。実際絶え間なく戦争をしている国がアメリカだ。
朝日新聞の2003年11月の世論調査で「世界の安全を保つために、アメリカが中心的な役割を果たしている」と「思わない」割合が53%に達した。日本ができる国際貢献は、自衛隊をイラクに派遣してアメリカに協力することではなく、アメリカの戦争政策と距離を置き、その政策の変更を求めることだ。
(注)「帝国を壊すために」(アルンダティ・ロイ著、岩波新書、P30)。
(2003年12月14日)
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先日、フォットジャーナリスト、豊田直巳氏の講演を聞いた。豊田氏は、イラク戦争時やこの6月にもイラクで取材された方だ。
豊田氏が持ち込んだ放射能測定器は、人口四百万の都市バクダッド市内でも、通常の数千倍の放射能を示したという。これは米英軍が、劣化ウラン弾をバクダッド市内にまで打ち込んだことを示している。
また、豊田氏は、91年「湾岸戦争」で使用された劣化ウラン弾による若い女性や子どもの被爆の写真を示した。異常が一見してわかる「ヒバクシャ」だ。
豊田氏は、これ以降イラクで発生する「ヒバクシャ」のことを思うと「ぞっとする」と言われた。
1日3千万円、1ヶ月9億円、1年で約110億円、これがイラク特措法が成立した場合、派遣される予定の千人の自衛官の「危険手当」の金額だ。手当だけでも何と膨大な金額だろう。
今、イラクの人々にとって必要なことは、劣化ウラン弾の被害状況の調査であり、それへの予防的な対処方法の普及であり、現に進行中の被害の治療である。
イラク特措法はいらない。
1ヶ月九億円のお金で、国連やNGOを通じて医療的な支援をすることが、イラク復興に求められている。
(2003年7月22日)
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イラク攻撃の作戦は「衝撃と恐怖」とも言われている。私も恐怖を感じている。
まず大量破壊兵器の恐怖だ。イラク全土で、核兵器に次ぐ破壊力の燃料気化爆弾、対人地雷ともなるクラスター爆弾、地中を貫通するバンカーバスター、健康被害や環境汚染が引き起こされる劣化ウラン弾が使われている。これらは大量破壊兵器そのものではないか。
次に報道機関への攻撃だ。アフガン攻撃でもアルジャズィーラが「誤爆」を受けたが、今回も米国の攻撃を受け死傷者がでており、とうとう「身の危険」を感じてイラクから出国を余儀なくされている。今でもテレビでは何万にのぼる死傷者の姿が見えない。これ以降、米国に批判的な報道の自由は保障されるのか?
3つめは浄水場への空爆だ。北部では百万以上の人々の水の確保が困難との報道がなされた。これは戦闘ではなく一方的な殺害だ。
昨年初めにブッシュ大統領は悪の枢軸としてイラク、北朝鮮、イランを名指し、実際イラクが攻撃を受けた。また昨年11月、米国の国防政策委員会は「全中東民主化・市場経済化計画」を発表した。「第一段階イラクのフセイン政権を打倒、第二段階サウジアラビアの王政改革」と続き、更にシリヤ、イラン等の中近東諸国への圧力強化、必要なら武力行使も検討している。
そろそろ米国の戦争政策に目を向け、日本と米国との関係を再考する時期だ。
(2003年4月9日)
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イラクに対して、米英による攻撃が始まる気配だ。
この攻撃は「動揺と恐れ」(Shock & Awe)という作戦名が付けられ、この攻撃の一部が報道されている。
攻撃初日にバクダッドなどの大都市に、300から400発のミサイルが撃ち込まれる。この量は91年の湾岸戦争の40日間に打ち込まれた数をすでに越えている。さらに翌日にも300から400発のミサイルが撃ち込まれる。この2日間の間に、なんと4分ごとに1弾のミサイルが人口400万の都市バクダッドの住民を襲う。バクダッドに数百も軍事施設があるはずがなく、この大量のミサイルでバクダッドの建物はすべて破壊されるだろう。
この戦争作戦の立案者、ウルマン氏は1月24日米CBSのニュースで明確に作戦を説明している。「バクダッドに安全な場所はなくなる」、「30師団が突然消され、都市も破壊される」、「彼らから力と水を奪い去ってしまう」、「2〜5日で彼らは・・・力つきる」。
また、環境を放射能で汚染する「劣化ウラン弾」の使用も公然と語られている。
ヒロシマをイメージして立案されたこの計画は、バヅダッドを文字通りヒロシマと同じ廃墟にしてしまうだろう。今起ころうとしているのは戦争というより一方的な大量殺害ーホロコーストだ。問われているのは、ホロコーストを認めるかどうかだ。
(2003年3月10日)