「破たん 米の国益誘導」(ワシントン・喜聞広典氏)
「東京新聞」12月27日の6面の記事
 
同時テロで変化「世界経済システム」
 
米国の政治経済の中枢を狙った同時多発テロから百日余。二十一世紀初頭に、世界を
歴史的な悪夢で覆った年が、引き続く混乱のなかで暮れようとしている。この間、世
界経済はテロの打撃で、さまざまなシステムに変調をきたし、回復の先が見えない霧
の中に迷い込んでしまった。半面、テロは、世界経済を裏で支配してきた米主導の国
益誘導システムなどの実態もあぶり出した。テロの前後、大きく変わった世界経済シ
ステムを米国からの視点で展望した。
 
▽CIA黙認
 一九九六年。ひそかに米国を訪れたスーダンのエルファティ・エルワ国防相(当時)
は、国内に亡命して国際テロ組織「アルカイダ」の基盤構築を進めるウサマ・ビンラ
ディン氏に国家転覆の危機を感じ、米中央情報局(CIA)に身柄の引き渡しを打診
した。
 CIAにとって、ビンラディン氏は当時から、サウジアラビアの米軍施設テロなど
で最重要の“指名手配犯”。しかし、CIAはなぜか同氏の引き受けを断り、スーダ
ンからの国外追放を国防相に勧めた。エルワ氏自身の回顧談を載せた米誌などによる
と、CIAはこうしてビンラディン氏をみすみす取り逃がし、同氏のアフガニスタン
入りを黙認したのだった。
 奇妙な動きはまだ続く。九八年夏。アフガンのタリバン政権さえもビンラディン氏
の処遇に手を焼き、サウジアラビアへの引き渡し交渉を持ちかけてきたのに、CIA
は一貫して消極対応。直後にアフリカで起きた米大使館爆破テロでタリバンとの関係
が悪化し、話は立ち消えとなった。
 
▽皮肉な結果
 敵が向こうから近づいてきても捕まえに行かず、自由に泳がせて監視するCIAの
戦略は「相手を完滅せず、その脅威を残しておくことで、CIAの役割の重要性を米
国内に誇示し続ける」(チョドフスキー・オタワ大教授)狙いだ。テロや地域紛争の
火種を残すことは「将来の米軍需産業の利益につながる」(米上院民主党筋)との政
治的な思惑も背後にちらつく。しかし、CIAは結局、ビンラディン氏にこの戦略の
裏をかかれ、同時テロ事件の遠因を自ら作り出す皮肉な結果を招いてしまった。
 「自作自演」の国益誘導システム−それは冷戦後、唯一の超大国となった米国が、
国際社会を支配し、米企業や政府の利権を守るために築いた巧妙な舞台装置だった。
 
▽不 均 衡
クリントン前米政権は、経済分野で「グローバリゼーション」の美名の下にこのシス
テムを駆使した。
 情報技術(IT)革命の浸透や自由貿易のルールづくりを通じて、途上国の経済力
を底上げし、そこに米企業が乗り込んでいくための新たな市場を開く。九〇年代後半、
空前の繁栄に沸く米国が目指したグローバリゼーションは、しかし、「国益の誘導ば
かりが先行し、まず途上国の雇用や教育、福祉などを支援する素地づくりに欠けてい
た」(ライタン米ブルッキングス研究所員)。
 米IT産業は、こうしてグロバリゼーションの素地が整う前に、将来への期待を集
めたその本は、
株価が暴落。今やパソコン需要の低迷などで“IT不況”の冷たい風に吹きさらされ
ている。貿易ルールづくりは、九九年末の世界貿易機関(WTO)シアトル閣僚会議
で、身勝手な米国に途上国が猛反発して行き詰まった。米国の一方的な国益優先の半
面で、「世界の貧困を置き去りにした国際政策の不均衡が、対米テロを生む土壌にな
った」(コープ米外交評議会研究副主幹)との見方もある。
 
▽利権の矛先
そして同時多発テロ事件。米国経済は、IT革命のけん引力で十年間続いた景気拡大
から一気にマイナス成長のふちに転落した。米企業は軒並み収益悪化に陥り、海外展
開への野望など跡形もなく消し飛んだ。政府はいま、国内景気の立て直しに血眼とな
っている。国益誘導の最前線を担った米軍需産業も、弾道弾迎撃ミサイル(ABM)
制限条約からの離脱など、テロ後、本土防衛への傾斜を強めるブッシュ大統領の先導
で、利権の矛先を国内に向け始めた。
 途上国を踏み台にして、国外に稼ぎ口を求め続けた米国の国益誘導システムは、同
時多発テロ事件で大きくつまづいた。テロ後の米国は、国内に閉じこもって国益を守
る保護主義路線を一段と強める気配だ。米一極の強大なけん引力を失った世界経済は
今、全体の成長が急減速する中、回復への足掛かりさえ見いだせないでいる。
                   (「東京新聞」12月27日の6面の記事)
 
 
発癌物質の軍事利用を許していいのか?」『長崎平和研究所通信』投稿
    戸田清(長崎大学環境科学部)     2001年12月18日
 
 通常兵器のなかで最も威力の大きい爆弾、すなわち核兵器に次ぐ威力を持つ爆弾と
して知られる気化爆弾(燃料気化爆弾)という米軍の兵器がある。通称デイジーカッ
ター(ヒナギク刈り機)という名で呼ばれ、1970年にベトナム戦争で初めて使われ
た。湾岸戦争(1991年)では地雷処理とイラク軍の威嚇のため11発投下された。アフ
ガニスタン侵攻において米軍がこの通常兵器として最大のBLU82燃料気化爆弾(重
量6.8トン)を使ったことは2001年11月5日、ペンタゴン(国防総省)筋の話で明
らかになった。ニューヨークタイムズやAP通信など複数の米メディアが11月6日に
伝えた。「爆弾を投下すると、液体燃料が着弾寸前に空気中に放出され点火、大爆発
が起こる。この爆発で全ての酸素が燃焼し尽くされ、急激に気圧が低下する。たとえ
建物や地下の塹壕に隠れていても、付近にいた人間は内蔵破裂を起こし死亡する。」
(CNN日本語ウェブサイト2001年11月6日付による。
http://cnn.co.jp/2001/US/11/6/daisy.cutter/)「通常のTNT炸薬を使った爆弾より
も数倍の爆発力があり核兵器の次に威力があるとされています。地上は火炎地獄にな
り、たとえ建物や塹壕に隠れていても全ての酸素を燃焼し尽くし酸素欠乏により窒息
死、もしくは急激な気圧の変化により内臓破裂を引き起こし死亡に至ります」
http://isweb28.infoseek.co.jp/motor/f15/fae.html)危害半径は4海里(7.4
08km)に及ぶ。湾岸戦争で地雷原除去に使われるときの爆発を遠くで見た兵士は戦
術核兵器の使用かと仰天したという。装甲車両に対してよりも「人員の殺傷」に主眼
があり(核兵器でいえば中性子爆弾が連想される)至近距離であれば高熱で焼かれ、
衝撃波により人の形をとどめずに消し去られるだろうという。「見せしめ」的に使っ
て敵兵の士気を下げる「精神的兵器」ともいわれる。強力すぎるため国際的に禁止す
べきだという声もあがっているが米国は拒否している(その意味ではクラスター爆弾
を連想させる)。気化爆弾の弾頭には酸化プロピレンが使われている。気化爆弾の用
途は「近接航空支援、地雷除去、陣地構築」だそうである。
 
 酸化プロピレンはプロピレンオキシドともいわれ(『化学大辞典』第3巻、化学大
辞典編集委員会編、共立出版1960年)、酸化エチレン(エチレンオキシド)によく似
た物質である。プロピレンオキシド(プロピレンオキサイド)はエチレンオキシド
(エチレンオキサイド)と同じく環状エーテルであり、非常に反応しやすく爆発性で
ある。防爆、防火に注意を要する(『岩波理化学辞典』第4版、久保亮五ほか編、岩
波書店1987年、『有機化合物辞典』有機化合物辞典編集委員会編、講談社1985年)。
反応性に富み、すぐ開環(環状化合物が開くこと)するので重合反応によりポリマー
(ポリエーテル)を形成する。すなわちポリエーテルウレタン(プラスチック)やポ
リエーテルゴム(合成ゴム)になる。これは熱可塑性樹脂である(『有機化学ハンド
ブック』有機合成化学協会編、技報堂出版1968年、507頁)。化学構造式は『化学大
辞典』第8巻(共立出版1962年)や『有機化合物辞典』に図示されている。エチレン
オキサイドは代表的な滅菌剤でもある。化学者に聞いてみるとアルキル化剤としても
働くというので発癌性ではないかと気になって調べてみた。中毒学の権威の本を見
た。やはり次のように書いてある。「酸化エチレン、酸化プロピレンともに、発がん
性、変異原性がある。許容濃度は1ppmと低い」(『中毒百科』内藤裕史、南江堂
1991年、105頁)。酸化エチレンをガス滅菌剤として使うときなどに中毒事故が起こ
ることがあるが、「酸化エチレンは目、肺、胃などに対する刺激作用があり、過敏性
皮膚炎や肺水腫もおこす。これらの作用は酸化プロピレン、酸化ブチレン、エピクロ
ロヒドリンなど、他のエポキシ化合物にも共通である。エポキシドは細胞中でカルボ
ニルイオンに変わり、これがDNA中のR−NHと反応してDNAをアルキル化す
る」
 
 毒ガス(狭義の化学兵器)のなかに発癌性のものがあることは、広島県大久野島の
作業従事者の後遺症などでよく知られている(『生物化学兵器』和気朗、中公新書
1966年、『隠されてきた「ヒロシマ」:毒ガス島からの告発』辰巳知司、日本評論社
1993年)。しかし、毒ガス以外の化学物質で発癌性のあるのもが使われた例はあるだ
ろうか。米軍のベトナム枯葉作戦(1961〜1971年)が思い浮かぶ。農薬(除草剤)
2,4,5−Tの軍事利用であり、除草剤に不純物としてダイオキシンが含まれてい
た。使用目的とした物質は除草剤であって不純物ではない。米国はもちろん化学兵器
禁止条約(1993年)を署名も批准もしている。外務省化学兵器禁止条約室(隅田氏)
に聞いてみると、酸化プロピレンはいわゆる「毒ガス」ではないので、規制の厳しい
表1、表2、表3のなかには入らない。有機化学物質一般も生産量が多いとき(200
トン以上)にはゆるい規制の対象になるが、そのなかにはもちろん入る。酸化プロピ
レンはその反応性の激しさからいっても、発癌性からいっても、事実上「毒ガス」と
いってよいのではないか。巧妙に条約の「抜け穴」を利用しているような気がしてな
らない。
戸田清 TODA Kiyosi
長崎大学環境科学部〒852−8521長崎市文教町1−14 
toda@net.nagasaki-u.ac.jp
 
 
 
新世紀へようこそ/池澤夏樹】
            http://www2.asahi.com/national/ny/ikezawa/index.html
小泉氏の話法
 
 今の総理大臣である小泉純一郎氏は二つの話法を持っています。
 一つは、メモをぼそぼそと読み上げるだけの消極的なもの。
 もう一つは、きっと前をにらんでガンガンまくしたてる積極話法。
 まるで正反対に見えますが、原理は同じです。覚えた内容についてはまくしたてる。覚えきれなかった場合は読み上げる。
 どちらの場合も、対話になっていない点が問題です。国会の答弁を見ていても、質問の内容に対して決して直接には答えない。いつも話を逸らす。頭の中に用意してある数個の論旨の一つを選んで投げ返すだけ。打席に立っているはずなのにバットではなくボールを持っている。ピッチャーを前にしながら自分もピッチャーになってしまう。野球にならない。
 
 しかしながら、小泉氏が頭の中に用意してある数個の論旨はとてもうまくできています。単純明快で、威勢がいい。対話と説得の言葉ではなく、煽動の言葉です。Aである。従ってBであり、Cである。何が悪いか!
 悪いのは、論理を運ぶステップごとに、本来いくつもあったはずの選択肢をすべて無視して、自分に都合のいいものだけで一直線に組み立てていることです。
 
 具体的に見てみましょう。小泉氏は言います──
 1 テロは悪い。
 2 テロは根絶しなければならない。
 3 徹底的に戦わなければならない。
 4 そのために英米はじめ国際社会が団結している。
 5 日本だけが何もしないではいられない。
 入口はわかりやすい。
 
 「1 テロは悪い」──WTCのあの場面と亡くなった人々のことを考えれば、あれが霞ヶ関ビルか、横浜のランドマーク・タワーか、大阪ならば梅田スカイビルだったらと考えれば、誰しも納得します。
 しかし、一歩引いて考えれば、テロの善し悪しは立場によります。第二次大戦でナチス・ドイツに占領されたフランスはレジスタンスで戦いました。ドイツの側から見れば、フランス人がしたことはテロでした。
 「2 テロは根絶しなければならない」──テロは天然痘のように根絶できるでしょうか? テロは社会の底の方から湧いて出ます。収賄や、組織ぐるみの選挙違反や、援助交際とおなじくらい根絶しにくいものです。
 「3 徹底的に戦わなければならない」──勇ましいけれども、戦うにも相手の姿が見えないのがテロです。正々堂々とは戦わないのがテロなのです。軍事戦略が通用しない相手。狂牛病対策に自衛隊を出して牛を撃ちますか?
 「4 そのために英米はじめ国際社会が団結している」──国際社会というのは、お金持ちクラブです。そこに貧国の視点はない。だからこそテロ起こるのです(この話は今月11日に「一か月」というタイトルで書きました)。
 「5 日本だけが何もしないではいられない」──ここが小泉氏の論法のもっとも大きな飛躍です。自衛隊を出す以外の方法は最初から視野に入っていない。おまえも来るかとボスに言われていそいそと駆け寄る、国としての主体性のない、尻馬に乗るだけの情けない応対ではないでしょうか。
 
 その自衛隊を出すことについての小泉氏の論。
 6 戦闘地域には行きません。
 7 武力行使もしません。
 8 人道的支援をするだけ。
 9 それがなぜいけないのですか!
 人の生命がかかっている言葉です。意味は明確でなければいけない。
 6について言えば、戦闘地域はそんなにはっきり定義できません。巡航ミサイルが発射されるインド洋は戦闘地域ではない? 大砲を撃つところは戦闘地域の外で、その弾が当たって人が死ぬところが戦闘地域? そんな自分勝手な線引きはないでしょう。
 いかなる線も引けないのがテロです。今回ニューヨークは戦闘地域の中だったのですか、外だったのですか?
 小泉氏が本当に言いたいのは、敵の弾が飛んで来るところに自衛隊は行かないということです。では何をしに行くのか。海外に行ったという実績を作りたいだけ。テロ撲滅について実際には何の効果もない。むしろテロの標的として日本は名乗りをあげることになるのではないでしょうか。パキスタンの反米デモの参加者が掲げたプラカードにKOIZUMIとあったのは何を意味するのでしょう。
 「7 武力行使もしません」──では自衛隊員諸君を丸腰で送り出しますか? ブッシュ氏はこれは戦争だと言っています。そこに丸腰というのは常識に反します。隊員がかわいそうです。
 どこまでが武器使用か? 小銃はよくて、機関銃もよくて、大砲はだめ? 小泉氏が言っているのは憲法と現実の間をつなぐための、ゴムのように伸び縮みする言葉でしかありません。今やもう憲法そのものが伸びきったゴム輪で、切れる寸前なのですが。
 「8 人道的支援をするだけ」──このあたりが最も大きな欺瞞です。人道的という口当たりのいい言葉に気をつけましょう。米軍のために「後方」で食料などを運ぶのは人道的でしょうか。
 本気で人道的支援をするというのなら、アフガニスタンの人々が今もっとも必要としている小麦粉や井戸掘りの道具をたくさん用意してアフガニスタンに入り、相手の顔を見ながら手渡しで配ってください。なにしろ戦闘地域ですから相当な危険を伴うと思いますが、人道的にふるまうにはそれくらいの覚悟がいる。
 毛布とテントを隣国の空港に届けたくらいで人道的などと思い上がってはいけない。人道というのはまずもって相手の立場に立つことです。日本国内の問題を(具体的に言えば憲法と日米安保のねじれを)解消するために、アフガニスタンの餓死寸前の人々の存在を利用することを人道的とは言えないでしょう。
 
 「9 それがなぜいけないのですか!」──これは問いのように見えますが問いではありません。小泉話法による断定の典型です。問いかけるように見えて、実際には反論を遮断している。
 
 ファシズムは暴論を用いません。その時々、だれにもわかりやすい、国民みんなの心に響く、情緒的な、一見反論しにくい、聞く者を興奮に誘う話法を使います。
 ファシズムとは、一国ぜんぶを巻き込むカルト宗教です。実態は羽毛布団のだまし売りと同じです。
 後になってファシズムを糾弾するのは簡単です。しかし、振り返ってみれば、その時には国民はこぞって支持したのです。1930年代のドイツでは、国民の多くがヒトラー氏の政策を歓迎したのです。わかりやすい敵を指さし、戦いを煽る。みながその気になって棒を持って走り出す。そういう方へ誘導する話法があるのです。
 
 ナチス・ドイツが崩壊してから今までの数十年間で広告戦略は格段に進歩しました。買いたくないものを消費者に買わせる誘導的な話法が徹底的に改良されて、今、ブッシュ氏や小泉氏によって使われています。彼らの背後に広告代理店の有能なディレクターの姿がちらほら見えるような巧妙な展開です。
 
 一歩の距離をおいて、冷めた頭で彼らの言うことを聞きましょう。買いたくないものを買わされないよう気をつけましょう。
(10/14)
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池澤 夏樹
いけざわ・なつき 作家。1945年北海道生まれ。主要な著作に『マシアス・ギリの失脚』(谷崎賞受賞/新潮文庫)、『楽しい終末』(読売文学賞受賞/文春文庫)、『花を運ぶ妹』(毎日出版文化賞/文藝春秋)、『すばらしい新世界』(芸術選奨受賞/中央公論新社)など。現在、朝日新聞に小説『静かな大地』を連載中。
 
「新世紀へようこそ」とは?
米同時多発テロ以降、世界はどこへ行こうとしているのか。池澤夏樹が日々の思考を綴るデイリー・メール・コラムです。
 
 
憲法を軽視する外務省
             若一光司(作家)
                   朝日新聞 10月14日 
 小泉首相が訪米時、自衛隊の派遣を前提とした対米支援策を表明したのは拙速そのものだが、そうした対応を実質的に主導してきたのが外務省だ。外務省は無批判に日米安保体制に依拠することで、日本の平和憲法を国際社会で実効的に機能させるための独自外交を怠つてきた。
 その事実が湾岸戦争で明白になった後も、「外交努力の欠如」を「軍事的協力の欠如」にすり替え、ひたすら責任逃れを図ってきた。平和憲法の最も忠実な体現者でなければならない外務省が、平和憲法を最もないがしろにしている。
 今回のテロに際し、日本政府は国連内に「真相究明委員会」を設置するよう働きかけるべきだった。そこで、テロが「だれによって、どのよらな目的で行われたか」を精査し、浮かび上がった事実を被害当事国や国際社会全体が共有しうるような構造を作ることが最優先されるべきだった。
 国運は98年に国際的なテロ犯罪などを裁くための「国際刑事裁判所」設置規程を採択した。日本政府はこの規定に署名すらしていない。米国はクリントン政権下で署名したが、今も批准を見送っている。
 今回のテロ事件は本来なら、この国際刑事裁判所で扱うべき問題だろう。日本政府は「テロと闘うのは国際社会の一員として当然の責務」と言う。ならば、どうしてこの規程を無視し続けてきたのだろうか。
 
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「ブツシュの戦争」と「日本参戦」の即時中止を求める
                   週刊金曜日 10月12日号(383号)
 「ブッシユの戦争」がついに始まった。「軍事目的に限定した攻撃であり、同時にアフガニスタン国民に食料や医薬品を投下する作戦」とブッシユ米大統領は説明しているが、生活必需品の供給は空爆抜きでいくらでもできるし、戦争がこのまま続けば多くの民間人が巻き込まれることは必至だ。
 自爆テロに報復する今回の戦争は、仮に米国がテロの主犯とみているウサマ・ビンラディン氏らの掃討に成功しても、世界各地で米国の横暴に反発する人たちの報復テロを招き、終わりの見えない泥沼戦争に陥る恐れが強い。
 ブッシユ大統領は世界の40カ国以上が支持していることを開戦の大義名分にあげている。しかし、これはテロ直後の衝撃のなかで、米国の圧倒的な軍事力と経済力を背景に「テロの味方か敵か」と迫って獲得した協力である。時日の経過とともに、「ブッシュの戦争」に対する批判と平和的な手段による解決を求める声が、同盟国の間でも高まってきているさなかでの攻撃開始であった。
 ビンラディン氏らを匿っているとされるタリバン政権は、兵士らの離反が相次ぎ、対抗する政権の樹立も具体化して、内部崩壊さえ取りざたされていた。今回の攻撃は、テロに批判的だったイスラム諸国やイスラム教徒を怒らせ、「聖戦(ジハード)」へ向けて逆に結束を強化させることになるだろう。すでにそうした動きがイスラム圏の各地で出てきている。
 わたしたちはこれまで、「ブッシュの戦争」は国連の明確な承認を得ておらず国際法規に照らして問題が多いと、一貫して反対の論調を掲げてきた。いまからでも運くはない。武力攻撃を即時中止し、平和的な手段によるテロ撲滅に努カするようブッシュ大統領に強く求めたい。 
 このように理の通らぬ「ブッシュの戦争」に対して小泉純一郎首相は全面協力を約束し、自衛隊法の改正やテロ対策特別措置法の制定を強引に進めて、敗戦後初めて戦闘地域に自衛隊を送りだそうとしている。これは明らかに憲法が禁じている集団的自衛権に踏み込む行為であり、「政府の行為によつて再び戦争の惨禍が起ることのないやうにすることを決意」した憲法前文の精神に反している。
 自爆テロ報復を奇貨として平和憲法を一気に骨抜きにしようとする、こうした企てをわたしたちは純対に認めるわけにいかない。
 10年前の湾岸戦争の時、日本が「目に見える貢献」をしなかったという一部の批判が、今度の”参戦”に日本政府を駆り立てる動機になっている。だが、あの時武力参加しなかつたことが、特にイスラム世界などで平和国家日本の評価を高めたことを軽視すべきではない。その実績を生かし、平和的な解決へ向けてイスラム世界と米国の架け橋になることこそが、いま日本に求められている国際協力のあり方ではないか。小泉首相には国民的人気の高さにふさわしい賢明で大局的な判断を求めたい。
 どんな理由があるにせよ、民間人を巻き込んだテロは許されるべきではなく、ブッシユ大統領が言うように撰滅しなければならない、だがそれは、国連憲章にいう平和的な手段で達成されるべきものである。ハーグの国際司法裁判所に提訴するのもよいし、国運は1998年、テロや地域紛争に備えた「国際刑事裁判所」を設置する条約を採択している。批准国が60カ国になったら設置されるが、まだ約40カ国しか批准しておらず、日本も米国も批准していない。テロ撲滅を願うなら、この批准をこそ急ぐべきだろう。
 根本的に必要なことは、今回の背景ともいえる貧困への対処や大国の驕りをただす地道で総合的な戦略である。そうした手だてを欠いた「ブッシュの戦争」や「日本参戦」をただちにやめ、時間はかかっても平和的な手段による解決に努力するよう求める。
週刊金曜日
 
 
 
反米で第三世界の結束招く
北沢洋子                     朝日新聞 10月9日
(59年から8年間、カイロのアジア・アフリカ人民連帯機構書記局に勤務。一貫して第三世界との連帯医を説いてきた。11月に日本平和学会会長に就任予定。著書に「暮らしのなかの第三世界」など。68歳)。
 
 ついに米国はアフガニスタンに対する報復攻撃を開始した。私は9月11日の無差別テロ事件について、第三世界の人々がどのように見ているかを述べたい。
 事件直後、ブッシュ大統領が呼びかけた「世界反テロ同盟」に対して、途上国の首脳たちがこぞって賛意を表明した。これまでタリバーンを支援してきたパキスタンのムシャラフ大統領、米国の経済制裁下にあるキューバのカストロ議長の名まで入っていた。これは驚くべきことだが、これまで米国がイラク、スーダン、ユーゴなどに報復空爆を繰り返してきたことを考えると、うなずける。米国の脅威に屈したことにほかならない。.
 
政府、人々の意見代表せず
 
 第三世界では、政府が人々の意見を代表していない例が多い。最も良い例がパキスタンである。ムシャラフ政権は軍事力で支配しているが、内実は400億ドルの債務返済に追われ、外貨は底をつき、破産寸前にある。教育、保健など民生生部門に十分に予算を向けることができない。貧しい人々がイスラム原理主義に同調する基盤は、すでにあった。米国の軍事攻撃が続けぼ、反米デモがやがて政権打倒につながっていくだろう。
 これはパキスタンに限らない。中央アジア、中東諸国、さらにインドネシアなどイスラム圏全域が、政情不安に陥る可能性がでてくる。
 9月11日以来、インターネット上に見られる第三世界の発言をまとめてみよう。初めのうちは、米国に対する強い「怒り」の発言が多かった。米国は、朝鮮戦争以来、ベトナム、イラクなど20カ国以上の国々に無差別爆撃を行ってきた。湾岸戦争当時、米軍がイラクに投下した劣化ウラン弾はどれほどの放射能被害をもたらしているか。続く経済制裁では、多くの子どもたちが栄養失調で死んでいる。3年前、ケニア、タンザニア米大便館に対する自爆テロの報復として、米国がスーダンの医薬品工場を誤爆したが、その結果、予防ワクチンが不足し、2万人の子どもたちが死んだことに、米国はどう責任をとるのか。米国こそ最大のテロ国家ではないか。
 時間を経るにつれて、発信の内容に変化が見られる。アフリカでは、今回の米国でのテロ犠牲者とほぼ同数の人々が、毎日エイズで死んでいる。憤務の支払いによって、毎日、1万9千人の子どもたちの生命が奪われている。経済のグローバリゼーションが、第三世界の貧困を深刻化している。1日1ドル以下の生活を強いられている貧困層の数は、13億人に達している。
 第三世界の人々の目には、このグローバリゼーションの推進勢力と米国は、重なって見える。ブッシュ大統領の報復戦争は第三世界全体を反米で結束させ、「反テロ世界同盟」に参加した政権の不安定化をもたらすだろう。
 
報復に日本は「ノー」を
 
 米軍の軍事攻撃が続けば、アフガニスタンから大量の難民が発生するだろう。また、それ以上の人々が”国内難民”となって、飢えと寒さにさらされる。日本はブッシュ大統領の報復攻撃に「ノー」と言うべきである。そして、政府、地方自治体、赤十字、NGO(非政府組織)が共同して、国内の被災者と難民の救済に全力を尽くすべきだ。これこそ、日本が世界に発信する平和のメッセージである。
 
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テロ報復 無条件の関与、日本に禍根
  エルモスタファ・レズラズィ  アラブ首長国連邦戦略研究所上級研究員
                           (朝日新聞10月8日)
 
 米国に向けられた今回のテロは私たちを震撼させた。まさに人間性への攻撃だった。テロリズムは民主主義、人権、社会の安定に対する脅威であり、世界は、この惨劇を引き起こした者たちを特定し、裁きを受けさせるため連帯すべきだ。
 私は、国連安全保障理事会の主導で“市民の生命と暮らしと人権を危険に陥らせることなく、容疑者を逮捕し起訴するために全世界が全力を尽くすことを強く要請したい。
 しかし、現実の米大統領府の議論には、残念ながら理論も戦路も強力な証拠もない。示されたのは「生きていても死んでいても(ビンラデインを)捕まえろ」という西部劇流のレトリックだけである。
 アフガニスタンでは、すでに4人に1人が海外からの援助食糧に依存している。それを助ける外国人全員が米国の武力行使を恐れて去った。飢餓は必至だ。
 米国および自国民をテロで失った関係国は、9月11日の出来事をテロ犯罪行為と位置づけ、タリバーンとの間で生じている問題は国運憲章にいう平和的手段で解決する義務がある。また、「民問航空の安全に対する不法行為の防止に関する条約」(71年)や、各国がテロ爆撃の被告人の訴迫あるいは引き渡しを行うことを規定する「テロ爆撃に対処する国際条約」(97年国運総会採択)などに依拠すべきだ。さらに米国はこの問題をハーグの国際司法裁判所に提訴すべきであろう。
 中東諸国の政策立案者たちが懸念するのは、いま、以下の3点である。
 第一は、米の保守的エリートが「十字軍」戦争という言説をもちだしたこと。ブッシュ大統領は謝罪したが、パキスタン、アフガニスタンや周辺諸国の大衆や宗教指導者たちは、この意図的な表現に懸念を表明し、イスラム教とイスラム教徒が標的にされるであろう戦争というものに反対している。
 第二に、米国に協力を表明している国々が自国内の紛争解決に、この「戦争」を利用しようとしていること。ロシアはチェチェン独立運動に絡めてテロ撲滅をいい、インドはカシミールでの独立運動、中国はウイグル独立運動、フランスやベルギーは不法移民問題に絡めている。イスラエルのシャロン首相は、占領地域での解放運動をテロの温床と非難することで、パレスチナ問題を終結させることを望んでいるようである。
 第三は、原油価格の下落が戦争に利用されていること。もっとも、ホワイトハ
ウスが戦争費用をカバーするため石油輸出国機構(OPEC)に原油価格を下げさせることに成功したとしても、エジプトやイラン、サウジアラビアといった主だったイスラム諸国は米連合軍に加わっていない。こうした国々の参加がない以上、米国および同盟国は、この戦争が「対イスラム」「対イスラム諸国」であるとの非難を免れ得ない。
 私は、日本は米国の支援要請にこたえるにあたり、自国の利益や安全に十分に配慮すべきだと思う。無条件で関与すれば、湾岸地域でも中央アジアでも、日本はすべての利益を失いかねない。
 日本は過去2年間、エネルギーの確保と日本産品の販路拡大で、著しい成果を上げた。今年2月には、イランと湾岸諸国との間に安全保障面での進展をみた。この戦争がやみくもに始まれば、世界の安全は損なわれ、世界経済も打撃を憂ける。なかでも目本経済への影響には計り知れないものがある。(原文日本語)
 
 
世界戦略の再考米に直言を
          豊下楢彦(とよしたならひこ) 関西学院大学教授(国際政治論)
                           (朝日新聞10月5日)
 「湾岸戦争の轍を踏むな」というのが今回のテロ事件に対応する小泉政権の合言葉である。「小切手外交」と揶揄された屈辱を繰り返したくないという強迫概念は、いわゆる「新しい戦争」とミスマッチを引き起こすであろう急ごしらえの「新法」の提出をもたらした。しかし「湾岸戦争の轍」とは何であっただろうか。
 あえて言えば、仮に日本が湾岸戦争から全く別の教訓を引き出して世界に訴えていたならば、日本は国際社会において真の意味で「名誉ある地位」を獲得し、その後の国際社会の動向を多少なりとも変え得たかも知れないのである。
 
将来の脅威を育成
 
 それは、主要国の中で唯一日本だけが、イラクのフセイン政権に直接的な兵器供給を行っていなかったという事実である。
 主要国、なかでも米国はイラン封じ込めのために80年代からクウェート侵攻の前夜まで膨大な軍事援助をイラクに供与し、生物化学兵器を含む軍事技術関連の輪出総額だけでも15億ドルに上った。この結果、制御不能の地域軍事大国が作り出されて、それは今なお米英のサウジアラビア駐留の根拠とされ、その駐留がビンラディンの卑劣なテロ宣言の口実とされているのである。
 米国は同じ轍をアフガニスタンでも踏んだ。86年、米中央情報局(CIA)はソ連に対抗すべく、世界中からイスラム急進派をパキスタンに結集させてテロ活動のノウハウと武器を全面的に供与することに踏み切った。結集した3万5千人の急進派の中にビンラデインがいたことはよく知られたところである。さらに米国は、94年にタリバーンが登場して以来4年近くにわたり、イラン封じ込めとパキスタンに抜ける石油パイプライン構想という思惑から、抑圧的な同政権を支え続けたのである。将来の脅威を育成するという誤りが再び犯された。
 ところが、同様の事態は今も繰り返されつつある。コソボ問題で米国は、ミロシェビッチに対抗すべく、マフィアと結んだ。「テロ集団」と認定していたコソボ解放軍に援助を与えて軍事的に利用した。こうして「テロ集団」の浸透によって、今や隣国マケドニアがバルカンの新たな火種となりつつあるのである。
 
反米感情生む構図
 
 米国市民の犬半はこうした非公式の軍事活動を知らないであろう。しかし、「敵の敵は友」といった場当たり的な対応が結局は反米感情を生み出し反作用として米国に跳ね返ってくるという構図を断ち切らない限り、それこそ悲劇は「無限」に繰り返されることになるであろう。
 問題が「ビンラディン一人ではなくテロリズムの根絶にある」とするならば、途上国の民衆に潜在する反米感情を取り除く方策が採られねばならない。日本が真に米国の同盟国であるならば、米国の軍事外交政策において「負の連鎖」を生み出す側面の再考を直言すべきだ。
 こうした直言をしても米国が日本を見放すことは断じてあり得ない。なぜなら、在日米軍基地なしに米国の世界戦略は一日たりとも成り立たないからである。極限すれば、日本や米国が真の意味での「湾岸戦争の轍」を認識する時に初めて「テロリズム根絶」の展望が切り開かれてくるのである
 
 
テロリスト追求 国際法整備を 
                           (朝日新聞10月5日)
鳥取環境大学長加藤尚武氏
専攻は環境倫理学と哲学。京大大学院教授などを経て今年4月から現職。日本哲学会委員長も務める。
 
 米政府が準備する「報復戦争」は、正当性も有効性もない。
 国際法上、「戦争」は主権国家などの開戦の意志表示で成立する。テロは犯罪であって戦争ではない。オサマ・ビンラデイン氏が容疑者であるのなら、米政府は、訴訟上有効な方法で収集された証拠でテロを指揮した犯罪者と立証すべきだ。
 国運憲章は、いかなる紛争においても平和的な解決の努力を義務付けているが、ブッシュ政権に十分な解決への取り組みがあったとは思えない。報復のための攻撃も、予防的な正当防衛も、国違憲章は決して認めていない。
 「ビンラデイン氏を引き渡さねば、武力行使する」と米政府は主張するが、犯人引き渡し条約がなければ、引き渡し義務が生じないのも国際法の原則だ。日本政府はペルーのフジモリ元大統領の引き渡し要求を拒否している。米政府の主張はそれ自体が国際法違反だ。 有効性も疑問だ。『これだけの犠牲を払うならテロはやめよう」という打算はテロリストにはない。報復はさらなるテロを生むだけだ。
 テロリストは犯罪者として裁かれねばならない。そのためには、無差別殺人は条約がなくとも引き渡す義務を負うとする新しい国際法を模索するのも一案だろう。
 本来のイスラム教は、主権者の意思によらない武力行使を否定するなど平和を希求する宗教だ。タリバーンなどのイスラム原理主義とは全く異質なことを私たちは学ぶべきだ。イスラムとの対決構図を描いてはならない。イスラム諸国やその民と語り合い、テロリストを追いつめる共同こそが今、何より必要だ。
 
 
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新たな国連決議必要 根拠不明の後方支援 「派兵」が既成事実化
                           (朝日新聞10月4日)
                         編集委員 外岡秀俊
 
 同時多発テロをめぐり、自衛隊が米軍を後方支援するための新法論議が国会で始まった。「非常事態」の言葉に惑わされ、重大な針路を過つことがないにしたい。
 議論の核心は、後方支援の「根拠」である。2度の大戦を経た国際社会は、「戦争」そのものを違法化する歩みの過程で、国連を結成した。憲章第2条は、「武力による威嚇または武力行便」を原則的に禁じた。国連軍による強制措置で制裁するという「集団安全保障」の考え方である。
 だが、5大国が拒否権をもつ安全保障理事会が、いつも機能するわけではない。憲章第51条はそうした場合に、暫定措置として、「武力攻撃」に対する個別的・集団的自衛権の発動を認めた。冷戦時代には安保理の機能がマヒし、自衛権が武力行便の根拠とされた。 しかし冷戦の終わりと共に、5大国協調の流れが生じた。湾岸戦争で安保理は、米軍主導の多国籍軍の武力行使を容認する決議をし、その後もいくつかの国連平和維持活動(PKO)で、憲章第7章の「強制措置」をとるよう決議した。
 今回の事態はどうか。
 
「復仇」の禁止
 
 「報復戦争」という言葉が平然と使われるが、国際法は武力を伴う「復仇」を禁止している。武力行使は「個別的・集団的自衛権」の発動か、国運による集団安全保障のいずれかである。
 政府によると、今回の後方支援は、9月12目の安保理決議を根拠としている。決議は前文で「テロ行為で生じた国際の平和と安全に対する脅威にあらゆる手段で戦うことを決意」し、「個別的・集団的自衛権」があることを確認した。だが前文は拘束力をもたない。本文はテロ非難と、「あらゆる必要な措置を取る用意」を表明する内容だ。
 湾岸戦争で安保理は、イラクが11の決議を実行しなければ、加盟国が「あらゆる必要な手段を用いることができる」とうたった。これと比較すれば、今回の決議を「武力行便の授権」と見なすのは困難だろう。前文で「自衛権」を確認している以上、米国の個別的自衛権と、他の国々の集団的自衛権の発動と考えるのが目然だ。
 北犬西洋条約機構(NATO)は条約第5条で集団的自衛権を定め、参加には一定の法的根拠がある。日本はどうか。
 日米安保条約は、改定の過程で、日本の憲法が集団的自衛権の行使を禁じていることを前提とし、条約の適用区域と発動条件を「日本国」でのいずれかへの「武力攻撃」に限定した。代わりに米軍は、「日本の安全と極東における平和及び安全の維持」のために在日基地を使用できるとうたった。日本で武力攻撃が発生していない今回は、安保条約が適用されないケースだ。しかも、「周辺事態法」の想定した極東の範囲を夫きく超え、同法も適用されない。
 大切な論点は、どこまでが「武力行使との一体化」にあたるかどうか、ではない。憲法上の整合性がとれたとしても、自衛艦が極東を越え、インド洋に出て日米が共同で対処すれば、事実は消えない。その「派兵」の根拠は、憲法、条約上どこにあるのだろう。
 
弁解は通らず
 
 日本は、「武力による威嚇または武力の行使」を放棄した憲法下で、根拠の不明な武力行便をする恐れが出てくる。
 緊急事態であれば何でも許される、というのは奇弁に過ぎない。少なくともアジア諸国は、緊急時には自衛隊が米軍と一体となり、どこにでも出動すると見なすだろう。
 米軍がどの国・地域に、いかなる戦力を投入するか正確にはわからない。軍事目標も、投入期間も不明だ。私たちは「後方支援しかしていない」という弁解は、国際社会に通用しない。
 
決議へ努力を
 
 最低限の条件として、新たな安保理決議のみが、「後方支援」の根拠になる、と私は思う。その場合に憲法の枠内で対処するのは当然のことだろう。
 今回の紛争を、西側対イスラムの「聖戦」とせず、無際限の報復の連鎖としないためにも、国際社会の結束は欠かせない。当面は新たな決議がないとしても、その努力を最後まで続けるべきだ。
 直ちに取り組むべきことは警察の総力で国内でのテロ発生を防止し、起きた場合に備えることだろう。まず人の命を救うのが、政府の役割だ。
 
 
周辺・中東の混乱誘う恐れ  
  ウイリアム・ホプキンソン/英王立国際問題研究所 (元英国防次官補)
                             (朝日新聞10月1日)
 タリバーンの戦力はとるに足りないが、山岳部でのゲリラ戦ではあなどれない。基地や後方支援に恵まれたソ連軍を駆逐し、風土の大半を制圧した。巨大な後方支援を必要とする米軍がうまくやれるとは思えない。
 たとえ、屈服させたとしても、そこにとどまることは難しい。これは古典的な戦争ではない。米軍が帰れば、状況は元に戻るだけの話だ。
 アフガニスタンは極度に貧しい。干ぼつが3年も続き、まともな政府機能もない。人口は過去10年で約半分になった。19世紀の大英帝国とロシア帝国による確執以来、この国がまともな姿になったことはない。今度の反テロ戦争後も、安定を予見させるものはな
い。
 米国が攻撃すれば、周辺世界も変わる。パキスタンは、ばらばらになる恐れがある。制裁解除で経済は多少上向こうが、インドとの間にカシミール問題を、国内にイスラム原理主義をかかえるこの国は、今回の対米協力によって、政治的には一層不安定になろう。難民も大量に流入する。
同じことは、タジキスタンをはじめ他の中央アジア諸国すべてについていえる。
 中東地域でも、多くの衝突を誘発するだろう。カブール爆撃で、もし一般市民が千人も死ねば、サウジアラビアでは反体制運動が燃え上がろうし、エジプトでもそうだ。イスラエルは過去の悪い行動様式に戻り、事態態を悪化させよう。
 ブッシュ米大統領には、何かしなければならないという圧力がかかっている。問題は、量初の攻撃が有効でなかった後の長い戦いだ。ビンラディンを殺したとしでも、次の目には20人の新しいビンラデインが生まれるかもしれないのだ。
 テロとの戦いは、短期的には警察的活動、諜報、国際的な司法の整備、長期的にはパレスチナ問題やイスラム世界の貧困に取り組む政策だ。米国が一国主義的に軍事に傾斜すれば、団結は壊れる。ブレフ英首相はブッシュ氏に正しい方向を指し示すべきだ。日本ができることは、テロの原因を断つには何をすべきか、国際社会のご意見番になることだと思う。
(ロンドン=村松泰雄)
 
 
 
 
正義は国際裁判で実現せよ
        小池政行:日本赤十字看護大学教授(国際人道法)(朝日新聞9月30日)
 
 国際社会には、犯罪を行った個人を裁く常設の国際裁判所は現在、存在しない。市民に対し無差別攻撃というテロを行った者を捕らえるのに、米国は「新たな戦争だ」として、軍事力の行使を表明している。これまで、国際社会は、交戦国が敵を降伏させ、戦争犯罪人などを捕らえた場合でなければ、個人を国際裁判にかけることはできなかつた。
 しかし、1997年に160カ国が参加した外交会議において採択された「国際刑事裁判所を設立する条約」は、集団殺害、人道に対する罪、戦争犯罪などを犯した個人を、常設の国際裁判所で裁くことを可能とした。戦争や武力紛争において、無数の戦争犯罪、テロ行為などの人道に対する犯罪が行われたが、それら違反行為を命じ、または実行した人々が、敗戦などの特別な場合を除き、放置されてきた。このことを深刻にとらえて、国際正義を法の裁きにより実現するためにつくられた条約である。この条約には現在139ヶ国が署名し、欧州諸国を含め37ヶ国が批准している。60ヶ国の批准によりこの条約は発効するが、4年間に37ヶ国が批准したことからして、遠からず発効するものと見られる。
 ブッシュ米政権は、海外に駐留する米兵が駐留国から国際刑事裁判所に訴追される恐れがあることなどを理由として、批准しない、としている。日本も、関連国内法の未整備などを理由として、同条約には署名さえしていない。
 最近の米国議会は、米兵を国際刑事裁判所から逃れさせるための米要員確保法を採択させ、同条約を批准した非NATO(北大西洋条約機構)国に対して軍事援助をカットすることや、国連PKOに参加しないこと、さらには訴追された米兵を解放するため、軍事力の行使も可能とする方向に進んでいた。
 これは国際刑事裁判所条約の「補完性の原則」をよく理解していないものである。たとえ米国が同条約の受諾国となって、米兵などが他の受諾国から訴追されても、まず米国の国内裁判所が管轄権を有するのである。米国内で公平な裁判が行われない場合に限って、国際刑事裁判所が管轄権を有するのが、この「補完性の原則」である。
 集団殺害やテロの計画・実行は、国際的な広がりをもつ一方、集団ないしは特定の国家の支持を受けた個人が首謀者となっている。主権国家併存を基礎とする国際社会が裁くことができなかった、このような個人犯罪に対しても、国際刑事裁判所は裁きを司能としている。テロの犯人に対しては、「人道法や人権の重大な侵害行為の責任者の免責は、許されない」という、ナチ犯罪人が当時のドイツ刑法上時効となることを防止するため68年の国運総会で採択された「時効不適用の原則」が貫徹されるべきであり、決して犯人を逃してはならない。
 しかし、だからと言って、一般住民が巻き添えになり、無辜の人々が命を落とすことになる軍事力の他国への行使を、絶対の正義と見なすことには反対である。テロは無差別の暴力である。しかし、他国への軍事力の行使も、命を落とす一般住民にとっては、暴力なのである。
 21世紀の国際正義は、米国の軍事力によってでなく、公平な国際刑事裁判所条約へ米国や日本が加入し、法に照らして実現することの必要性を強く訴えたい。
 
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前田哲夫氏(軍事評論家)の「10.21国際反戦デー」事前学習会レジメ
                           2001年9月27日、大阪で
 
1)事態の本質と背景,
@今回の事件を歴史的な文脈から切り離して論じても,真の解決にはいたらない.
Aアメリカの中東政策(資源戦略)とイスラエル擁護政策(2重基準)が根底にある.
B同様に問われるべきはアメリカのユニ・ラテラリズム(単独行動主義)である.
 
2)何が破壊されたのか.ーーアメリカの場合
@経済・軍事覇権の象徴としての世界貿易センタービルと国防総省ビル.
A「グローバリゼーショソ」,「前方展開戦略」の盲点としての米本土防衛態勢.
B21世紀型技術覇権の目玉としての宇宙軍拡一「ミサイル防衛」推進政策.
 
3)何が破壊されつつあるのか.ーー日本の場合
@「政府の行為によって再び戦争の惨禍が起ることのないようにすることを決意し,ここ に主権が国民に存することを宣言し,この憲法を確定する」一憲法前文
A「日本国民は,正義と秩序を基調とする国際平和を誠実に希求し、武力による威嚇又は 武力の行使は,国際紛争を解決する手段としては,永久にこれを放棄する」一9条
B「自衛隊は、わが国の平和と独立を守り、国の安全をたもつため、直接侵略及び間接侵 路に対しわが国を防衛することを主たる任務とし…」一自衛隊法第3条
 
*今回の政府が目指す自衛隊海外派兵の「法」によって、自衛隊の「定義」(性質)が完全に変わってしまう。(引用者注)
 
4)「我が国の支援措置」の間題点.
@「核使用の可能性も排除しない」米軍事行動に対し.白紙小切手を切る危険性.
A1万キロもかなたの戦場に自衛隊部隊を送り込む「海外派兵」と「集団的自衛権」.
B「周辺事態法」プラスαの新法ができると,地方公共団体と民間も協力対象になる.
 
*1991年の「湾岸戦争」では、フィリピンの米軍基地が戦争遂行に最大限「活用」されたが、すでにフィリピンの米軍基地が撤去されたので、今回の「報復」という名の国家テロには、日本の米軍基地が最大限、「活用」されようとしている。この意味で、日本は米軍にすでに大変「貢献」してしまっている。(引用者注)
 
5)目本の立つべき原則と執るべき方策.
@テロリストは、ポルポトやミロシェビッチと同様の「集団殺害」容疑者である.
A法の裁きを行う国際条約と国際法廷がすでに存在し機能している.
Bアメリカの軍事報復は国際法に違反するものであり,日本は同調すべきでない.
 
*国際的な動向については、上の正義は国際裁判で実現せよを、見てください。(引用者注)
 
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共同声明

米国のテロ報復戦争に反対し、日本政府の戦争支持の撤回を求める

 

2001年9月18日

 

 9月11日、米国の経済・軍事中枢にたいして、何者かが、ハイジャックした旅客機を武器とする「道連れ自爆攻撃」を行い、大量の死と破壊をもたらした光景を目の当たりにし、私たちは強い衝撃を受けました。数千にのぼる罪のない人びとが生命を奪われ、夥しい数の人びとが肉体と精神に深い傷を負いました。暴力のない世界を求める私たちは、実行者の目的が何であれ、この行為を許すことはできません。私たちは、犠牲者とその遺族、縁者の方々に深い哀悼の意を表し、傷ついた方々の回復を心から願うものです。

 だが私たちはいま、この事件への「報復」として米国が開始した対応にいっそう大きい衝撃を受け、深刻な危機感にとらわれています。ブッシュ大統領とその政府は、この攻撃をアメリカ合州国への「戦争行為」であると宣言し、報復のために「テロリスト」にたいして世界中を巻き込んだ「21世紀最初の戦争」を発動すると決定したのです。今回の「アメリカへの攻撃」の実行主体をオサマ・ビン・ラディンの率いる「イスラム過激派」と特定した上で、全世界にちらばった「テロリスト・システム」を殲滅する本格的戦争を開始しつつあるのです。世界最大国家が、国家でない敵に宣戦を布告したのです。ウオルフォウイッツ国防副長官は、テロリストとそれを庇護する国家にたいして軍事作戦を行い、「テロ支援国家を終結」させる(〔終結〕はNHKの訳語)ことがこの戦争の目的であると説明しました。大統領は「戦争は大規模かつ継続的なもの」になると言明し、フライシャー報道官は、「あらゆる選択肢を排除しない」と発表しました。アメリカの上下両院は、大統領に対して「必要なすべての武力行使の権限」を与える決議を採択し、400億ドルの戦費支出を決めました。NATOは、同盟国が攻撃されたケースとして集団安保条項を適用し、この戦争に参戦を決めました。ブッシュ大統領は、このアメリカの戦争に同盟国ばかりでなく、「国際社会」全体を巻き込もうと懸命に努力を続けています。

 戦争をもってテロに報復する、というのは異常な対応です。一般市民に対するこのような大量殺戮は、国際犯罪として、人道への罪を構成します。米国国内法とは別に、国連など国際社会が国際刑事法廷を設置して、その実行者や共犯者を国際法に基づいて公正に訴追し、処罰すべきです。その手続きもなく、アメリカはすでに戦争状態に入りました。当面タリバン支配下のアフガニスタンへの軍事侵攻が差し迫っていますが、テロリスト壊滅という戦争目的からして戦場は特定されないのです。

 私たちは次のような理由からこの戦争に力を込めて反対し、ブッシュ政権がこの戦争計画を即時廃棄するよう要求します。

 第一に、この戦争が問題の解決をもたらすどころか、世界を暴力と憎しみの果てしない応酬の連鎖に引き入れることが確実だからです。なにより、国家の正規の軍事行動で、不定形のネットワークを根絶やしにすることなどは、事柄の性質上、不可能なことです。テロを生み出す社会的土壌があるかぎり、一つの組織を壊滅させても次の組織が生まれるでしょう。そして9月11日の事件そのものが、今日の「先進国」社会の傷つきやすさを、そしてそれをこの種の攻撃から完全に防衛することなど不可能であることを衝撃的に例示したのです。米国の報復戦争は、テロと無差別な報復攻撃、そしてさらに規模を拡大したテロと報復攻撃という、いたずらに市民の犠牲のみを伴う出口の見えぬ泥沼の中に世界を引き入れることが予見されます。それを防ぐためには世界社会の隅々まで、個人の自由とプライヴァシーを奪い民主主義を根底から破壊する完璧な監視システムを導入するしかないでしょう。この方向への不吉な動きはいま急速に推進されています。

 第二に、報復を叫ぶ米国政府と世論のなかに私たちは恐るべき傲慢と憎悪の響きを聞き取るからです。「文明と野蛮」という植民地時代の露骨な図式が大手を振って復活しています。テロリストから「文明を守る」戦争(パウエル国務長官)、「悪にたいする善の戦い」(ブッシュ大統領)が公言されています。アメリカからの報道はアラブ人への憎悪が掻き立てられている状況を伝えています。ヨーロッパの世論もこの図式に当然のように同調しているかに見えます。文明をアメリカ・ヨーロッパと等値するこの傲慢さこそが、イスラム世界を傷つけ、のけものにし、ついにその中から敵対者を作り出すにいたったことの自覚は、そこには一片もないのです。

 「ショック、怒り、悲しみはいたるところに満ちている。だが、なぜ、人びとが、これほどの残虐行為を、自分の生命を犠牲にして行うところまで追い詰められたか、あるいは、なぜ米国が、アラブやイスラム諸国だけでなく、途上国のいたるところで、これほどひどく憎まれているのか、という認識はかけらほども存在しない」(シューマン・ミルン『ガーディアン』9月13日)。

 まさにこの認識の欠如にこそ、テロという絶望的な反抗形態が生み出される根源があります。米国がこれまで、ベトナム戦争や湾岸戦争で、南米やアジアの独裁政権援助で、スーダンや旧ユーゴ爆撃で、そして、何よりパレスチナを不法占領し続けるイスラエルを支援することで、直接、間接に今回の犠牲の何百倍、何千倍の数の非戦闘員の人命を奪ってきたことを世界の人びとは記憶しています。そして、現在アメリカの権力的一極支配は、未曾有のものに達しています。米国は、途方もない貧富の格差や環境破壊を引き起こすグローバル化を世界の圧倒的多数の人びとに強権的におしつける世界的な権力として振舞っています。とくにブッシュ政権は、「単独行動主義」(ユニラテラリズム)を公言して、地球温暖化や核拡散や国際刑事裁判所や人種差別反対国際会議などさまざまな国際的取り決めを、「米国の国益」を振りかざして、つぎつぎと一方的に破壊してきました。このような米国に対して、世界中の民衆の中に怒りと批判が渦巻いています。米国自身が作り出したこのような世界状況こそが、今回の事件の歴史的な背景になっているのです。この意味で、今回のテロで犠牲になった人びとは、米国政府の世界的な権力支配の犠牲者であると私たちは考えます。

 

 小泉首相はいち早く、「日本はアメリカの報復を全面的に支持する」と米国への無条件の忠誠を宣言して私たちを驚かせました。これを受けて、日本政府は、アメリカの「報復戦争」にどのように自衛隊を参加させるかを脱法行為から法改正を含めて汲々として探し求めています。さらにこれを好機とみて、危機管理体制の強化、社会の軍事化を全面的に進めようとしています。政府与党は、米軍基地を守るための自衛隊法改悪を決定し、有事体制や治安出動を公言しています。国家主義的な勢力は、米国の報復戦争を、日米ガイドライン体制を発動して、米国の軍事行動に協力する好機到来と、戦争のできる国家への試運転を狙っています。

 私たちは、米国の報復戦争開始の前夜にあたって、日本のなすべきことはまったく逆の方向にあると考えます。国際平和を誠実に希求し、国権の発動たる戦争と、武力による威嚇または武力の行使を国際紛争を解決する手段として永久に放棄した日本ならば、日本政府がなすべきことは、アメリカに武力行使を思いとどまらせ、平和を愛する諸国民の公正と信義に信頼して問題解決の方策をさぐるよう堂々と、自信をもって、説得することでなければならないはずです。そして、今回の事態は、そのような方向のみが悲劇の再発を防ぐ道を切り開くことができることを強く示唆しているのです。

 私たちは、日本政府に、日本国憲法の平和主義にしたがって、報復世界戦争というブッシュの計画への支持を取り消し、参加・協力を拒み、ブッシュ政権に、報復戦争を思いとどまるよう申し入れるよう要求します。

 私たちは、日本政府が、この戦争に便乗して、「戦争のできる一人前の国家」として伸し上ろうなどという企てをはっきり棄てることを要求します。すなわち有事法制、米軍基地の防衛のための自衛隊法改定、ガイドライン関連法規の脱法的適用などを行わないよう要求します。

 私たちは、日本政府が、全世界で社会的緊張と軋轢を耐えがたいところまで高めているグローバル化政策を根本から再検討し、WTOその他グローバル化推進のための国際機関で地球的規模の社会的緊張、底辺の人びとの排除、自然の破壊などを和らげるための方向転換を提案するよう要求します。

 民衆の安全が問題なら、この方向に歩むことが、アメリカの市民たち、日本列島に住む人びとも含めて、世界の民衆の安全を高める唯一の道なのです。

 いまこそ暴力と憎悪の悪循環を断ち切らなければなりません。9月11日の悲劇が、そのための出発点になるのか、それとも悪循環の全世界的な拡大の引き金になるのか、それは、アメリカ合州国の目覚めた人びとも含めて、この戦争の勃発と拡大を阻止する国境を越えたしっかりした結びつきを作り出し、それを力に変えていけるかどうかにかかっています。

 私たちは、悲しみに打ちのめされたニューヨークを始め米国の人びとの間から、「復讐でなく平和を!」という声が次第に湧き上がっている知らせに励まされています。マンハッタンの惨禍を味わった多くの人びとは、衝撃と悲しみの中から、戦争とは何か、爆撃とは何か、を身に引き付けて感じ取るなかで、圧倒的軍事力で復讐し、アメリカの怖さを見せつけるという姿勢が、悲しみをつぐなうにそぐわないと感じ始めたようです。米国の平和運動や知識人の間から「報復戦争」に反対する声は次第に高まりつつあります。この声は世界のいたるところで高まりつつあります。

 私たちもこの声に加わり、報復戦争を止めさせ、テロを生まない世界をつくるため、ともに行動しましょう。

 

秋山眞兄(日本ネグロス・キャンペーン委員会)
天野恵一(戦争協力を拒否し、有事立法に反対する全国FAX通信)
石崎暾子(草の実会)
鵜飼 哲(一橋大学教員)
大島孝一(キリスト者政治連盟)
太田昌国(民族問題研究者)
大津健一(NCC総幹事)
大橋由香子(SOSHIREN女(わたし)のからだから)
小笠原公子(日本キリスト教協議会平和・核問題委員会)
小田 実(作家)
小河義伸(キリスト者平和ネット)
木邨健三(カトリック正義と平和協議会)
小倉利丸(ネットワーク反監視プロジェクト)
栗原幸夫(編集者・評論家)
杉本理恵(地域科学研究会)
立山紘毅(山口大学教員)
 
俵 義文(子どもと教科書全国ネット21)
遠野はるひ(APWSL)
冨山一郎(大学教員、インパクション編集委員)
富山洋子(日本消費者連盟)
中山千夏(作家)
花崎皋平(さっぽろ自由学校「遊」)
福富節男(市民の意見30の会・東京)
松井やより(VAWW‐NET・ジャパン)
水島朝穂(早稲田大学教授)
水原博子(日本消費者連盟)
武藤一羊(ピープルズ・プラン研究所)
山口泰子(婦人民主クラブ)
山口幸夫(原子力資料情報室)
吉川勇一(市民の意見30の会・東京)
渡辺 勉(国際労働研究センター)
(2001年9月20日現在)
 

「共同声明―米国のテロ報復戦争に反対し、日本政府の戦争支持の撤回を求める」に賛同します。

 

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共同声明に賛同いただける方はこのフォームをe-mail(ppsg@jca.apc.org)またはFAX(03-5273-8362)で下記の仮集約先までお送りください。なお、お書きいただいた連絡先は、公開したり他の目的に使用することはありません。

 

共同声明の仮集約先

ピープルズ・プラン研究所

〒169-0072 東京都新宿区大久保2-4-15-3F

TEL/FAX: 03-5273-8362

e-mail: ppsg@jca.apc.org

 

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連続テロに対する報復戦争の国際法的な正当性は成り立たない」
                       加藤尚武(日本哲学会委員長)
 
 加藤尚武さん(鳥取環境大学学長、日本哲学会委員長)のアピールが転載
されてきました。転載可だそうです。
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(以下終わりまで転載)
私は国際法の専門家ではないので、多くの方に私の判断についての意見をうかがいたいと思います。現在のジャーナリズムはあまりにも一面的な判断だけを流しているのは不当だと思ったので、新聞社の友人たちにも知らせました。
是非多くの人から意見を聞きたいと思います。公表はもちろん結構です。
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  「連続テロに対する報復戦争の国際法的な正当性は成り立たない」
 
1、国際法上の「戦争」とは、単に軍事行動が行われたという時点では成立せず、
  主権国家もしくはゲリラ団体が戦争の意思表示をすることで成立します。
  ゆえに、今回の連続テロは犯罪であって、戦争ではありません。
  犯罪として対処すべきです。
 
2、国際法では、いかなる紛争にたいしてもまず平和的な解決の努力を義務づけ
  ています。
  ブッシュ大統領が、連続テロの今後の連続的な発生の可能性に対して、
  平和的な解決の努力を示しているとは言えないので、新たな軍事行動を起こ
  すことは正当化されません。
 
3、国際法は、報復のために戦争を起こすことを認めていません。
   したがって、たとえ連続テロが戦争の開始を意味したとしても、現在テロリス
  トが攻撃を継続しているのでないかぎり、報復は認められません。
 
4、連続テロに対する報復戦争が正当防衛権の行使として認められるためには、
  現前する明白な違法行為に対しておこなわれなくてはなりません。
  予防的な正当防衛は、国際法でも国内法でも認められていません
  連続テロに対する報復戦争を正当防衛権の行使として認めることはできませ ん
 
5、国家間の犯人引き渡し条約が締結されていないかぎり、犯人引き渡しの義務
   は発生しないというのが、国際法の原則です。
   「犯人を引き渡さなければ武力を行使する」というアメリカ大統領の主張  は、それ自体が、国際法違反です。
 
以上の理由によって、私は連続テロに対する報復戦争は正当化できないと判断します。
 
   9月19日 加藤尚武(鳥取環境大学学長、日本哲学会委員長)
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日本列島にも勇気のある本当の知識人がいることを知って、私は本当にうれしいし、誇らしい。      N        (2001年9月22日)
 
 
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グローバルな友情を断ち切るいかなる報復戦争も断じて許さない
 
今回の米国ワールドトレードセンター等への旅客機突撃事件は、極めて残酷な事態であり、私達はこのような行為をどのような理由であれ許すことはできない。しかし、その報復のために、今回の事件にまったく何の関係もない人たちの生命を奪うような報復戦争には断じて反対する。そして日本政府がこうした米国、NATOなどによる報復戦争に人的、経済的その他の手段によって加担することにもはっきり反対したい。

米国が主張するような意味での「テロリスト」に、戦争で報復することは、問題の本質的な解決への道とはならず、単なる憎悪にかられた復讐の連鎖を生み出すだけである。そして、歴史が教えているように、こうした憎悪の復讐によっていかに多くの無関係な人々が犠牲となってきたかを今はっきりと思い起こすべきだ。

20世紀の戦争は、常に正義の名の下に、まったく無関係な市民を無差別に巻き込む戦争としてくりかえされてきた。日本がアジアに対して行った残虐な行為を私達は知っている。そして米国による空襲、広島と長崎の原爆、ベトナム戦争での北爆や枯葉剤散布、湾岸戦争、イラク空爆、NATOのユーゴ空爆、スーダン空爆、これらはいずれも今回の事件に匹敵するどころかそれ以上の惨劇として、まったく無関係の無数の人々を巻き込んだ攻撃であり、ブッシュの言う「テロリズム」と何ら変りのない出来事であったことを忘れるべきではない。これまで無差別の攻撃を繰り返してきた米国の戦争と今回の事件は決して無関係ではないということを私達はきちんと踏まえておく必要がある。同時に、この半世紀の歴史が教えていることは、米国の報復戦争は必ずといっていいほど未曾有の悲劇を引き起こしてきたということも忘れるべきではない。

ネットワーカーには国境はない。国家という枠組も絶対のものではない。私達は国家の利害に左右されることを望まない。国境をこえ、文化や宗教、民族の違いを越えたコミュニケーションとコミュニティのなかで相互の理解をはぐくむことが私達ネットワーカーにとってなによりも大切なことだ。国民国家の枠組には収まりきらない人々の新しいコミュニケーションのつながりは、民族、宗教、文化などの違いを越えた相互理解と協調を強め、よそ者扱いや差別を排して、国家による大量殺戮の連鎖を断ち切る重要な手がかりとなる可能性をはらんでいるし、私達はそのような方向を望んで努力を重ねている。

しかし、今回の事件をきっかけに、国家の利害はこうしたネットワーカーや人々のグローバルな連帯のためのコミュニケーションを破壊し、虚構の愛国心を鼓舞し、戦争へと駆り立てようとしている。そして、アラブ系の人々やイスラム教徒へのいわれのない迫害が各地で見られるようになっている。

国境をこえた人々のコミュニケーションは、自由な言論とプライバシーの保護なしには成り立たない。しかし、報道によれば、米政府は、米政府がテロリストと目すグループを対象として以前より盗聴を行い、事件を示唆する内容の通信を捕捉していたといわれているが、結局、あのような惨事を防ぐことができず、国際的なテロリズムを押さえ込むという建前は、見事に崩れ去ったといわざるを得ない。テロ事件の予防に盗聴や監視は役立たず、ただ市民の自由なコミュニケーションを阻害するだけである。にもかかわらず、この事件を契機に、 FBIは、カーニボーと呼ばれる電子メール盗聴装置などを用いてインターネットのコミュニケーション監視を強化すると報じている。

私達は、国際的な「テロリズム」を押さえ込むという口実を用いてインターネットの自由なコミュニケーションをさらに監視、統制しようとするさまざまな方策が導入される現実的な危惧に直面している。たとえば、欧州評議会のサイバー犯罪条約、国連の国際組織犯罪条約などから、エシュロンのような軍事諜報ネットワークの強化まで、私達のコミュニケーションを監視し、市民的な自由すら奪いかねない深刻な事態がすぐそこまで来ている。

諜報活動やコミュニケーションの監視は治安弾圧や軍事的な攻撃を導き寄せる。軍や警察の監視、諜報活動は、それ自体としては一滴の血も流さないとしても、将来における大きな犠牲にかならず結びつく。そして、歴史が証明しているように、こうした活動が、戦争を抑止したり「テロリズム」を未然に防止したことはなく、むしろそれらを巧妙に放置し、軍事的な行動のために利用されてきたといったほうがいい。

私達は、米国政府、日本政府そして各国政府がいかなる理由であれ、報復の戦争を開始することに断固として反対する。私達ネットワーカーは、国境を越え、民族、宗教の違いを越えて互いに培ってきた友情を大切にしたい。私達はこうした友情を断ち切ろうとする報復戦争や憎悪を扇動するいかなる企てにも断固として反対する。

ネットワーク反監視プロジェクト(NaST)
http://www.jca.apc.org/privacy/
2001年9月15日

 
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日本政府への申し入れ書】
 11日、米国で起きた「同時多発テロ」として報道されているこの国際的無差別暴虐行為は、世界中を震撼させました。いかなる国、またいかなる信条の下で行なわれたとしても、かけがえのない人の生命と生活を破壊するテロ攻撃やミサイル攻撃は、犯罪行為以外の何ものでもなく、それを認めるわけにはいきません。
 私たちは、犠牲者の方々を深く哀悼し、瓦礫の下に助けを求めている人たちの一刻も早い救出と、傷ついた人たちの心身の癒しを、心から祈ります。
 このような暴挙が誰によって、なぜ行われたのか、何をねらいとしているのかなど、真実は一日も早く究明され、その責任者は断罪されなければなりません。しかしこれは軍事的報復攻撃によってではなく、あくまで国際的な機関による、完全に法的、理性的、平和的方法でなされるべきです。
 NATOは、同条約第5条に規定された集団的防衛権を発動する方向にあるようですし、ブッシュ大統領は、この「同時多発テロ」を「戦争行為」と非難したということです。小泉首相は、米国への強い支持と協力を宣言し、自民党は、有事法制化の動きを早め、次期臨時国会での自衛隊法の改定を検討していると報道されています。また、政府の「安全保障会議」において、「国際緊急援助隊の派遣」、「状況に応じ、随時必要な措置をとる」と言われました。さらに、米国政府の報復を支持すると明言しました。これに先立っての日米外相会談で、田中外相は、米国に対して「軍事面でも武力行使の一本化の検討をすすめる」という意志を伝えられたとのことです。
 「テロ」に対するたたかいには、武力報復しかないと、米国政府をはじめ西欧諸国も日本政府もこぞって、声高に主張しているように思えます。小泉首相は、米国とともに日本が報復戦争を遂行するために国内法を変更し、または拡大解釈を行おうとしているようにさえ思えます。
 首相にとって最も大切な相手は、日本の民衆ではありませんか。
 冷静に見れば、沖縄をはじめ、在日米軍基地は、外国による「テロ攻撃」の危険にさらされているといいますが、より危険にさらされているのは地域住民です。そして、この国土には、非戦を誓った日本国憲法があるのです。首相は、今こそ、日本国憲法の前文と、特に第9条の精神を遵守することを確約すべきです。「有事法制の整備を急ぐ」などということは、平和的解決への道とは全く方向性が逆です。
 テロ攻撃の映像を見て、日本で一番衝撃をうけているのは、かつて本土防衛の盾とされ、焦土とされた沖縄の人々でしょう。今また、沖縄が、もしこのような攻撃にさらされることがあれば、取り返しがつきません。米国の報復攻撃を、「当然だ」と言われる首相は、基地のおかれた地域の人々、特に沖縄への責任を認識されているのでしょうか。基地は、軍事的脅威と報復のための装置であり、平和の装置にはなりえません。基地は撤去されるべきです。そして、国際間の緊張は、あくまで、軍事的報復によらない完全に平和的手段によって緩和され、和解がはかられるべきです。「報復」は、敵意と軍拡の相乗作用を増幅させるだけで、平和を脅かし、人々を恐怖と不安に陥れるだけだからです。
 今回の攻撃で、ミサイル防衛、宇宙防衛構想など、いかなる科学的先進的技術による防衛も、敵意のあみ出す巧妙な攻撃を完全に封じることはできないことがわかりました。軍拡競争への道を遮断し、和解と平和への道を模索する他、人類が生き延びる道はありません。日本が米国と真に協力していくことを望むとすれば、平和憲法前文の思想を共有するという原点に立って、対話を模索するべきでしょう。滅びに到る「報復」のワナにおちいってはなりません。
 数千人にも及ぶといわれる直接の犠牲者とその家族の方々に、限りない哀悼を捧げます。瓦礫の下の人々の一刻も早い救出と手当てを、また、精神的にも深い傷を受けた人々への十分なケアがなされるように願います。日本にいて、現場にかけつけることもできず、悲嘆と心労に打ちひしがれている犠牲者や行方不明の方の家族に、政府はもっとも必要な情報とサポートを提供してください。同時に、このような残虐で悲惨な行為が二度と引き起こされることのないよう、いかなる暴力も許さない世界に向けた平和構築の努力を、平和憲法をもつ日本のイニシァティブをもって行ってくださることを強く求めます。
 
2001年9月13日
日本キリスト教協議会
 
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アメリカ下院議会におけるバーバラ・リー下院議員の発言
                          2001年9月14日
**********************************
とりあえずバーバラ・リー議員の下院での発言を翻訳しましたが、
この格調高い演説をどれだけうまく翻訳できたか自信はありません。
あまり意訳しないで直訳調で も、リー議員の意図が伝われば、と思います。
 転載は大歓迎ですのでどうぞご自由に。(全交事務局スタッフ・森文洋
************************************
 
 議長、私は今日、ニューヨーク、バージニア、ペンシルベニアで
殺され傷つけられた家族と愛する人々への悲しみでいっぱいに
なりながら、耐えがたい気持ちで演説に立っています。
 アメリカ国民と全世界の何百万もの人々をとらえた悲しみを
理解しないのは最も愚かな者か最も無神経な者だけでしょう。
 アメリカ合衆国に対するこの筆舌に尽くしがたい攻撃のために、
私は向かうべき方向を求めて自らの道徳指針と良心 と神に
頼らざるをえませんでした。
 
  9月11日は世界を変えました。最も深い恐怖が今や私たち
の心に付きまとってます。しかしながら、私は軍事行動は
アメリカ合衆国に対する国際的なテロリズムのこれ以上の
行動を防がないと確信しています。
 私は、大統領はこの決議がなくても戦争を行なうことができる
ことを私たち全員が分かっているにもかかわらずこの武力行使
決議が通過するのだということを知っています。
 この[反対]投票がどんなに困難なものであろうとも、私たちの
何人かが自制を行使するように説得しければなりません。
 
 しばらく距離を置いてみて今日の私たちの行動のもつ意味を
通して考えよう、その結果をもっと十分に理解しよう、と言う何人
かが私たちの中にいなければなりません。
 私たちは従来型の戦争を扱っているのではありません。
私たちは従来型のやり方の対応はできないのです。
 私はこの悪循環が制御不能になるのを見たくありません。
今回の危機には国家の安全や外交政策や社会安全や情報収集
や経済や殺人といった諸 問題が入っているのです。
 私たちの対応はそれと同様に多面的でなければなりませ ん。
 私たちはあわてて判定を下してはなりません。
 あまりにも多すぎる罪のない人たちが既に亡くなりました。
 
 アメリカ合衆国は喪に服しています。もしも私たちがあわてて
反撃を開始すれば、女性や子どもやその他の非戦闘員が十字
砲火を浴びるという大きすぎる危険な目に遭う恐れがあるのです。
 同様に私たちは、残忍な殺人者によるこの狂暴な行為に対する
正当な怒りがあるからと、あらゆるアラブ系のアメリカ人やイスラム
教徒や東南アジア出身者や他のどの人々に対しても人種や宗教や
民族を理由として偏見をあおることはできません。
 
 最後に、私たちは退場の戦略も焦点を合わせた標的もなしに
無制限の戦争を開始しないように注意を払わなければなりません。
 私たちは過去の過ちを繰り返すことはできません。
 1964年に連邦議会はリンドン・ジョンソン大統領に攻撃を撃退し
さらなる侵略行為を防ぐために「あらゆる必要な手段をとる」権力を
与えました。その決定をした時に、本議会は憲法上の責任を放棄し、
長年にわたるベトナムでの宣戦布告なき戦争へとアメリカ合衆国を
送り出したのです。
 当時、トンキン湾決議にただ二人反対票を投じたうちの一人である
ワイン・モース上院議員は言明しました。
 「歴史は我々がアメリカ合衆国憲法をくつがえし台無しにするという
重大な過ちを犯したのだということを記録するであろうと私は信じ る。
……次の世紀のうちに、将来の世代の人々はこのような歴史的な
過ちを現に犯そうとしている連邦議会を落胆と大いなる失望をもって
見ることになるだろうと私は信じる。」
  モース上院議員は正しかったのです。私は今日、同じ過ちを
私たちが犯しているの ではないかと恐れています。
 そして私はその結果を恐れています。私はこの投票をするのに
思い悩んできました。
 しかし私は今日、ナショナル・カテドラルでのとてもつらいが美しい
追悼会の中でこの投票に正面から取り組むことにしたのです。
 牧師の一人がとても感銘深く「私たちは行動する際には、
自らが深く悔いる害悪にならないようにしましょう。」と語ったのです。
 
 Statement of Rep. Barbara Lee on the floor of the House of
Representatives
 
 Sept. 14, 2001.
 
 Mr. Speaker, I rise today with a heavy heart, one that is filled withsorrow
 for the families and loved ones who were killed and injured in New York,
 Virginia, and Pennsylvania. Only the most foolish or the most callouswould not understand the grief that has gripped the American people and millions
 across the world. This unspeakable attack on the United States has forced 
me to rely on my moral compass, my conscience, and my God for direction.
 
 September 11 changed the world. Our deepest fears now haunt us. Yet I am
 convinced that military action will not prevent further acts of
 international terrorism against the United States. I know that this
 use-of-force resolution will pass although we all know that the President
 can wage a war even without this resolution. However difficult this vote 
may be, some of us must urge the use of restraint.
 
 There must be some of us who say, let's step back for a moment and think
 through the implications of our actions today--let us more fully understand
 its consequences. We are not dealing with a conventional war. We cannot
 respond in a conventional manner. I do not want to see this spiral out of
 control. This crisis involves issues of national security, foreign policy,
 public safety, intelligence gathering, economics, and murder. Our response
 must be equally multi-faceted.
 We must not rush to judgment. Far too many innocent people have already
 died. Our country is in mourning. If we rush to launch a counter-attack,we
 run too great a risk that women, children, and other non- combatants will 
be caught in the crossfire. Nor can we let our justified anger over these
 outrageous acts by vicious murderers inflame prejudice against all Arab
 Americans, Muslims, Southeast Asians, or any other people because of their
 race, religion, or ethnicity.
 
 Finally, we must be careful not to embark on an open- ended war with
neither an exit strategy nor a focused target. We cannot repeat past mistakes. In  1964, Congress gave President Lyndon Johnson the power to ``take all
 necessary measures'' to repel attacks and prevent further aggression. In
so doing, this House abandoned its own constitutional responsibilities and
 launched our country into years of undeclared war in Vietnam.
 
 At that time, Senator Wayne Morse, one of two lonely votes against the
 Tonkin Gulf Resolution, declared, ``I believe that history will record that
 we have made a grave mistake in subverting and circumventing the
 Constitution of the United States.........I believe that within the next
 century, future generations will look with dismay and great disappointment
 upon a Congress which is now about to make such a historic mistake.''
 
 Senator Morse was correct, and I fear we make the same mistake today.
And I fear the consequences. I have agonized over this vote. But I came to
grips   with it in the very painful yet beautiful memorial service today at the National Cathedral. As a member of the clergy so eloquently said, ``As
we act, let us not become the evil that we deplore.''
 
 
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Statement from the War Resisters League

New York, New York
FOR IMMEDIATE RELEASE
September 11, 2001

戦争抵抗者連盟の声明】
 わたしたちがこれを書いているいま、マンハッタンは包囲攻撃を受けているように感じられる。すべての橋、トンネル、地下鉄が閉ざされ、何千人、何万人もの人々がマンハッタン南部から北へゆっくり歩いている。ここ戦争抵抗者連盟の事務所にすわっていて、わたしたちがまず想うことは、世界貿易センターの崩壊で命を落とした何千人ものニューヨーカーのことである。天気は快晴で、空は青い。しかし、煙りの下の瓦礫の山の中でおびただしい数の人々が死んだ。その中には、ビルの崩壊のときその場にいた数多くの救急隊員も含まれている。
 もちろんわたしたちは、ワシントンの友人・同僚たちが、ペンタゴンにジェット機が突入したときに巻き添えになった一般市民について想っていることを知っている。そしてわたしたちは、この日ハイジャックされた飛行機に乗っていた何の罪もない乗客たちのことを想っている。現時点で、わたしたちはどこから攻撃が来たのかわからない。
 わたしたちは、ヤサー・アラファトが攻撃を非難したことは知っている。もっと情報が入るまで、詳しい分析は差し控えるが、しかし幾つかのことは明らかである。ブッシュ政権はスター・ウォーズ計画に膨大な支出をすることを議論しているが、それが最初からでたらめであることははっきりしている。テロリズムはもっとありふれた手段でこんなにたやすく攻撃することができるのである。
 わたしたちは、合衆国議会とブッシュ大統領に対して、次のことを求める。これから米国がどのような対応をするにしても、米国は一般市民をターゲットにすることはしないこと。一般市民をターゲットにする政策をいかなる国のものであれ認めないこと。これらのことをはっきり認めてほしい。このことは、イラクに対する制裁──何万人もの一般市民の死をもたらしている──をやめることを意味するであろう。このことはまた、パレスチナ人によるテロリズムのみならず、イスラエルによるパレスチナ人指導者の暗殺や、イスラエルによるパレスチナ住民に対する抑圧、西岸およびガザ地域の占領も非難することを意味するであろう。
 米国が追求してきた軍国主義の政策は、何百万もの死をもたらした。それは、インドシナ戦争の悲劇から、中米およびコロンビアの暗殺部隊への財政援助、そしてイラクに対する制裁や空爆などに至る。米国は世界最大の「通常兵器」供給国である。米国が供給する兵器は、インドネシアからアフリカまで、最も激しいテロリズムを助長している。アフガニスタンにおける武力抵抗を支援した米国の政策が、結局、タリバンの勝利とオサマ・ビン・ラディンをつくりだしたのである。
 他の諸国も同じような政策をとってきた。わたしたちは、これまで、チェチェンにおけるロシア政府の行動や、中東およびバルカンにおける紛争当事者の双方の暴力などを非難してきた。しかし、米国は自己の行動に責任をとるべきである。たったいままで、わたしたちは国境内で安全だと思ってきた。快晴の日、朝起きてみて、米国の最大の都市が包囲攻撃されているのを知って、わたしたちは、暴力的な世界においては誰ひとり安全ではない、ということを思い起こした。何十年もの間、米国をとらえてきた軍国主義を、いまこそ終わらせるべきである。
 わたしたちは、軍拡と報復によってではなく、軍縮、国際協力、社会正義によって安全が保障されるような世界をめざすべきである。わたしたちは、きょう起きたような、何千人もの一般市民をターゲットにする攻撃をいかなる留保もなしに非難する。しかしながら、このような悲劇は、米国の政策が他国の一般市民に対して与えているインパクトを想起させるものである。わたしたちはまた、米国に住むアラブ系の人々へ敵意を向けることを非難し、あらゆる形態の偏見に反対してきた米国人のよき伝統を思い起こすよう求める。
 わたしたちはひとつの世界である。わたしたちは、不安と恐怖におびえて暮らすのか、それとも暴力に代わる平和的なオルタナティヴと世界の資源のより公正な分配をめざすのか。わたしたちは失われた多くの人々を悼む。が、わたしたちの心が求めているのは、復讐ではなく和解である。
   ───────   
 これは戦争抵抗者連盟の公式の声明ではないが、悲劇が起きた直後に書かれた。戦争抵抗者連盟の全国事務局のスタッフと執行委員会のメンバーが署名して、公表される。
2001年9月11日
       ニューヨーク            (君島東彦さん訳)
 
Believing war to be a crime against humanity, the War Resisters League, founded in 1923, advocates Gandhian nonviolence as the method for creating a democratic society free of war, racism, sexism, and human exploitation.
 
 
 
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