EXUPで遊べる?


FZS1000なら、フルエキに交換していなければもれなくEXUPが付いているはずです。エキパイ集合部の黒いところにある排気デバイスです。せっかくついているんだから、ちょっとこれで遊んでみようと思いました。
  1. まずはうんちく
  2. EXUP観察日記
  3. ケーブルあそび調整法
  4. ちょっと遊んでみる
  5. EXUP追加情報


まずはうんちく(ちょっとはずかしい...)

EXUP (Exhaust Ultimate Power Valve) は、'87にレース用特別仕様のFZR400に装備されたのが初めてだそうです。自分的には、以前乗っていた'85モデルのDT200RにYPVS(Yamaha Power Valve System、RZにも付いていましたね)というEXUPのいとこのようなものが付いていたので、もう少し前からあったように思っていましたが、市販車では'88からだそうです。ちなみに、YPVSではメインキーをONにするとウィンウィンと一往復空回りするところが好きだったんですが、FazerのEXUPは何の芸もしてくれないので、ちょっと寂しいです。
高回転域で最大トルクを発揮するように吸排気バルブのオーバーラップを調整すると、低・中速回転では反対にオーバーラップが長すぎ、混合気の充填効率が低下してトルク不足が生じます。これは、排気管の設計(例えば、4−2−1にして2の部分を長くするとか)でもチューニングできるのですが、これも同じように、低回転か高回転のどちらがが犠牲になります。そこで考え出されたのが、マフラーの絞りを回転域によって調整する可変排気バルブです。バルブ開度は、低回転では閉じており、高回転になるにつれて徐々に開いていきます。このバルブで背圧を調節することで、低〜中〜高回転で排気系の設計のおいしいところを使えるわけです。
ついでに、混合気のロスを抑えることができるので、燃費が向上し、低回転での排気音も小さくなるという効果もあります。


EXUP観察日記

エキパイ集合部の左側のカバーを外すと、右の写真のように可変バルブを回すプーリーが見えます。このあたりの作業は、次のケーブルあそび調整とともにPat's Motercycle Pageに詳しく載っています。ここを開けて、バルブがどんなふうに動いているか調べてみました。EXUP photo


全開時はここまで開きます。
この写真はほんとにエンジン回転レッドゾーン手前です。もちろんダイノの上ですが。(^^;


では、こいつをさらに解剖してみましょう。

プーリーを外して、周辺のナットを3本外すと可動バルブが抜けます。その中身はこんな感じです。

左側から排気が入ってくる4カ所の穴が見えます。可動バルブの回転軸を中心に90度くらいの範囲が穴になっています。右側はもっとがらんどうの空間で、車体右より(この写真では奥)に出口があるだけです。

これが、EXUPの可動バルブです。バルブというより、丸まったシャッターという感じですね。エンジン停止時にこの「シャッター」がちょうどエキパイ側の穴中央に「立ちはだかる」のですが、シャッターのほうが回転軸から90度より狭い範囲しかないようですので、「全閉」にはならないようです。エンジン低回転時にはそこから時計回りに約30度なので、エキパイ側の穴はほぼ半分塞がれた状態です。
それにしても、この構造だと、一番大事な集合部がなんとなく集合しているだけのように思います。最近のR1のEXUPのように集合部手前でバタフライバルブが入っているまじめ(?)な構造なら、もっと性能出るんじゃないでしょうか?


ケーブルあそび調整法

(FZS-1000Nサービスマニュアルp.3-26〜27を参考にしました。)
  1. 集合部左側のEXUPバルブプーリーカバーを取り外す。(要8mmボックスレンチ)
  2. プーリー手前空中のケーブル真ん中付近を外側に引っぱって(チェーン遊びを計る要領)まっすぐの状態とたわんだ状態の差が遊び。標準は最大1.5mm。遊びが少なすぎるとサーボモーターが働かなくなり、エラー表示(タコメーターが間欠的に7000rpmを指す)が出る。遊びが大きめのほうが良いとの情報多数。
  3. ケーブルは2本で、カバーを開けると1、2と番号が振ってあり、
     1番:プーリー上側で金具が銀。引っぱるとバルブ開く。
     2番:プーリー下側で金具が黒。引っぱるとバルブ閉じる。
  4. ガソリンタンク右下にあるアジャストボルトも、それぞれのケーブル金具と同じ色になっている。ロックナットを緩めてから、アジャストボルトを両方緩める。
  5. adjuster photo

  6. プーリーのノッチを通してバルブ本体側の穴に4mmのビスなどを差し込み、プーリーを固定する。
  7. タンク右下のアジャストボルトを回し、両方のケーブルの遊びがなくなるまで引っぱる。
  8. そこからゆるむ方向に両方のアジャストボルトを1/2回転戻す。
  9. ロックナットを閉め、カバーも戻す。



ちょっと遊んでみる

まあ、ネジ3本でカバーを外して確認しながらケーブル調整するだけなので、ちょっと遊んでみることにします。FZ1OAの掲示板で時計回りにすこしずらしたほうが良いとの情報がありましたが、現状で低回転で排気が抜けすぎている気がするので、両方試してみました。
まずは、合わせマーク位置(アジャストナットの位置でもほぼ同じなので、こちらのほうがわかりやすい)で時計回りに2〜3mm回転した状態(開け気味)で試乗。やっぱり、エンジン音が大きくなった。加速感は最初良くなったような気がしたが、ある程度乗ったところでは、純正サイレンサーをスリップオンにしたときの変化をすごく弱くしたような印象です。7000rpmくらいから上は良いけど、低回転でエンジン音の割には回転がついてこない感じで、スロットルレスポンスが低回転と中高回転とで違っています。
次に、半時計回りに2〜3mm回転した状態で試乗。これは、閉め気味のほうにめいっぱいで、これ以上はエンジン停止時にバルブが当たってしまう。こちらは、先ほどとは逆に純正サイレンサーに少しだけ近づいた印象で、こんどは低回転でもスロットルレスポンスがあまり悪くならない感じです。
少なくとも、LeoVinceスリップオンと現時点でのキャブセッティングでは、絞り気味のほうが上から下までスロットルレスポンスが揃っていて好みのセッティングなので、反時計回り2〜3mmに決定しました。スリップオンサイレンサーのメーカーによる排気系のヌケの違いを少し補正するのには使えそうです。


Ivan'sジェットキット装着後のEXUP調整結果については、こちらをご覧下さい。


EXUP追加情報

  • マルチゲージでEXUPサーボをしばらくモニターした結果、新発見がありました。
    これがEXUPのおよその動きをまとめたものですが・・・
    (1)エンジンoff 全閉
    (2)アイドリング〜4000rpm 30°開
    (3)4000rpm〜9000rpm 30°〜100°開
    (4)9000rpm以上 100°開
    (5)エンジンアイドリングかつ車速>0 全閉(しばらくすると30°開)
    (5)の状態は、これまで気づきませんでした。
    どんな状態で現れるかというと、街中を走っていて前方信号赤で停車するときシフトダウンして、最後のほうはクラッチを切ってすーっと停まりますよね。そういうときに、一端EXUPが全閉になって、停車中何秒かするとまた30°開に戻ります。
    スリップオンを付けている人なら、そのような状態で注意深くエンジン音を聞いていると本当にEXUPが閉まるのが音質でわかります。おそらく、アフターファイアー防止のためじゃないでしょうか?
    EXUPもまめなことをしているんですね〜。


    Fazerトップへ戻る