
73. ヘレスフェスティバル2002
今年もまたヘレスのフェスティバルに合わせてスペイ
ンにやってきた。でも今回はフェスティバルのクル
シ−ジョを取るのはやめることにした。理由は受けた
いクラスが一杯だったのと、毎日開催されるカンテラ
イブとテアトロ公演、たまにあるペーニャ通いに時間
と心の余裕を持っていきたかったからだ。だから昼間
は個人レッスンと自習稽古に絞ることにした。今考え
ても、そうして正解だったと実感している。
今年のビジャビセンシオ宮殿で行われたライブは、昨
年に比べると無名の若手を中心としたもので、あまり
期待して行かなかったせいか、予想していた以上に楽
しめた。一番印象的だったのは、ギターとヴィオリン
の演奏ライブで、メロディーのかけひきがとても心地
よく、今でも耳に残っている。
ビジャマルタ劇場で行われた公演は、昨年にくらべる
とカンテソロとギターソロが充実していて、バイレと
バランスが取れた充実した内容だった。今でも記憶に
強く残っているのが、エル・ペレのカンテと、イスラ
エル・ガルバンのバイレだ。 エル・ペレの心の奥底
から湧き出るカンテは、身体中が鳥肌もので、久しぶ
りにドゥエンデを全身で感じた素晴らしい公演だった。
こんな素晴らしい歌い手を知らなかった自分が何だ
か悔しかった。
別の日のイスラエル・ガルバンのバイレは、感動とい
うより、感心と尊敬の目で釘付けになった。最初フラ
メンコっぽくない動きで驚いたけど、彼独特の振りと
楽器と化した彼の世界に知らないうちに引きずりこま
れてしまった。あそこまで自分の道を貫き通せるなん
て、アーティストとして凄すぎる!
他にも素晴らしい公演はたくさんあった。モライート、
イサベル・バジョン、メルチェ・エスメラルダ、ミ
ラグロス・メンヒバル、ハビエル・ラトーレ、マイ
テ・マルティン、ベレン・マジャ、マヌエラ・カラス
コ等、どれも見ごたえのあるものだった。こんな感じ
でほとんど毎日レベルの高い公演が観れるわけだけ
ど、残念ながらハズレの日もある。踊りがいまいち
だったり、衣装のセンスが悪かったり、がっかりし
てしまうこともあるけど、そういう日があるからこ
そ当たりの日が余計引立つのかもしれない。大当た
りの日なんか、もう嬉しさは倍増になってハッピー
になってしまう。
このヘレスのフェスティバルは、世界中のフラメン
コファンが集まってくるし、スペイン全土からもた
くさんのアーティストが観にやってくる。だから観
客の質がとてもいい。ハレオのタイミングも、空気
もいいから、観ていて本当に楽しめる。
さて、ヘレスのフェスティバルはこれだけでは終わ
らない。ヘレス各地で開催されるペーニャも楽しみ
のひとつなのだ。だいたい夜中の12時過ぎから始ま
るから、朝からまじめにレッスンしていたら眠気と
の闘いになって、楽しむどころではなくなってしま
う。やっぱりクラスを取らなくてよかったぁーと実
感する。今回一番楽しかったのが、年輩のセニョー
ラ達が歌い踊ったペーニャだった。相撲さんみたい
に太ったおばちゃん集団がひとりひとりさりげなく
踊るのだ。難しいパソなんて、もちろんしない。
シンプルな振りをブレリアのリズムにのって、軽や
かに踊る姿をみて、こっちまで踊りたくなってし
まった。そうよ、こういうのが見たかったよ!こう
いうブレリアを踊りたかったのよ!私は嬉しさのあ
まり興奮してこの日の晩はほとんど眠れなかった。
なんたってこの日は大当たりの日だったからね。
今回の大ハズレは最終日の締めであるペーニャだっ
た。こういう書き方をすると誤解を招くかもしれな
いので、正確に言うと、大ハズレの原因はペーニャ
そのものではなく、一部の観客のマナーの悪さだっ
た。椅子に座っている人がたくさんいるのに通路で
立って観る人がいたり(お陰で何も見えなかった!)
リズムの合わないパルマを叩く人がいたり、それを
注意しても無視する態度はもっと腹が立って仕方が
なかった。ありがたかったのは、それが日本人では
なかったということ。どこの国の人か知らないけど、
あんなにマナーの悪い人がフラメンコファンだとし
たら、とても悲しいことだ。本当に。
最後がこんな感じで終わってしまったので、次の日
はどっと疲れが襲ってきた。しかしのんびりしてい
る暇はない。これから本格的なレッスンが始まるか
らだ。
2002.04.13.
|