71. コンク−ルが終わって

コンクールが終わって、自分の踊りをビデオで

研究した。冷静にみると悪いところばっかり目

立って、自分のいいところが全く分からなく

なってしまい、ひどく落ち込んでしまった。

落ち込む私にさらに追い討ちをかけるように、

偶然会ったスペイン人の友達にコンクールは

どうだった?と聞かれた。正直なところ聞いて

欲しくなかった。

「予選通過出来なかったの」と答えると

「何で?!!」としつこく尋ねられた。

「たぶんミスをしたからだと思うんだけど。」

「そんな、キコがマリの踊りすごく良かったっ

て言ってたのよ。」

どうも、キコが勝手に私が予選通過したような

ことを言っているらしい。何故か腹が立った。

すぐ会って訂正しないと、と思っていたら、

偶然にもスタジオの入り口でばったり鉢合った。

「マリ、この間のコンクールは良かったなぁ。

もうビデオ観たか?」とご機嫌な彼の顔を見て

複雑な気持ちになった。予選通過出来なかった

ことを告げると、まるで自分が落選したかのよ

うに落ち込んでしまって、その落胆した様子に

こっちがびっくりしてしまった。彼は本心で私

のことを誉めてくれたことを知り、彼に対して

腹を立てた自分が恥ずかしくなった。そんな彼

を元気づけるために、予選には落ちてしまった

けど、カンテはとても好評だったことを告げる

と、今度は水を得た魚のように目を輝かせなが

ら「オレのアレグリアス、すごく良かっただろ

う!最後のブレリアもカッコイイと思わない

か?」とはしゃぐ姿に、逆に元気づけられた。

その数日後、伴奏してくれたギタリストにコン

クールの審査基準や、審査委員にどう評価され

たのか聞かれた。

私の踊りが審査委員からどう評価されたのか全

く知らないと答えたら、彼はこうつぶやいた。

「エスコビージャのところで少しミスをしてい

たからそれが減点の対象になってダメだったん

やろうなぁ。それを除けば全体的にすごくいい

感じだったから、審査委員に良い印象を与えた

のは確かだよ。」

普段お世辞を言わない人からこんな評価をされ

た上 「伴奏していて、楽しかったで。」と言わ

れ、正直戸惑った。きっと私を励まそうとして

くれたんだと思う。

そうと分かっても、何故か夜になってもこの言

葉が頭から離れず、気付いたら涙が頬をつたっ

ていた。考えてみたら、落選してから一度も涙

を流していなかった。それまで貯まっていた涙

が爆発するかのように湧き出てきた。わずかで

も自分の成長した喜びと、落選した悔しさで、

いつまで経っても涙は止まらなかった。

このコンクールで、自分の進むべき道がさらに

はっきりした。ひとりで構成から振付けまでを

して、これからひとりでやっていける自信が

ついた。

東京の美香先生に相談して、これからひとりで

頑張ることになった。快く了解してくれた美香

先生に心から感謝します。

今回のこの悔しい気持ちを今後のかてにして、

自分のフラメンコをさらに追求していきます。

2002.02.25.

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