
62. ハレオ
フラメンコを盛り上げるのに欠かせないのもの、
それはハレオだ。以前ヘレスのペーニャ(愛好
会)に行った時、私は本当のフラメンコを全身
で感じたことがある。観客のほとんどがパルマ
を叩き、舞台の上でブレリアを歌うカンタオー
ルにハレオを掛けるのだ。そのパルマの上手い
ことったら!そこの観客は、それまで私が知っ
ていた日本の観客とは全然違って、受け身で聴
くのではなく、自分もまるでアーティストの一
人かのように、楽しんでいるのだ。アーティス
トと観客が一体になって盛り上がっていく臨場
感はもうたまらなかった。そこで私は体がぞく
ぞくしたのを今でも覚えている。
ハレオがどれだけ大切なものか分かっても、実
際ハレオを掛けるのは難しい。オレ!以外何を
言ったらいいのか、いつ言ったらいいのか、そ
のタイミングすらよく分からなかった。それか
らビデオを観たり、タブラオに行ったり、スペ
イン人アーティストに聞いたりして、ハレオの
研究をした。その一部をここで紹介します。
オレ! ole!
ビエン! bien!
バモ! vamos!
エソ エ! eso es!
ケ グアッパ(男性はグアッポ)! Que guapa/o !
ケ ボニータ(男性はボニート)! Que bonita/o!
チキージャ(男性はチキージョ)! chiquilla/o!
アサ! arsa! rはほとんど発音しない。
トマ! toma!
ダレ! dale!
アンダ! anda!
ベンガ! venga!
ケ ミル テ! Que mire uste!
バマ ジャ アラ ロ ケ バイラン(カンタン/トカン) ビエン! vamaos alla los que bailan/cantan/tocan
bien!
ティエネ ラ マノ ヘ プラタ! tiene la mano de(je) plata!
※sは基本的に発音しない。
それぞれの単語に意味のあるものと、そうで
ないものがある。誉める時などによく使うのが、
「ビエン(いいよ!すごい!みたいな意)」
「エソ エ(それよ!みたいな意)」。
盛り上げる時には「バモ(さあ!行こう!みた
いな意)」「アサ」などがよく使われる。
チキージャ(かわいこちゃんみたいな意)のよ
うな男性名詞と女性名詞にはくれぐれも注意し
て欲しい。
バマ ジャ アラ ロ(ス) ケ バイラン
(カンタン/トカン) ビエン!は、カンテに
はカンタンを、ギタリストにはトカンと言う。
ティエネ ラ マノ ヘ プラタ!は、ギタリ
ストに対してのみ使う。
これらを組み合わせると、さらに言い方が増え
る。例えば「ケ グアッパ チキージャ マリ
ア!」「トマ ケ トマ ケ トマ!」「オレ
カンテ ビエン!」など。
ハレオのボキャブラリーが増えたら、タブラオ
で生ハレオを聞いて欲しい。どんな時に掛けて
いるか、どんなことを言っているか? スペイ
ン人のハレオを聞いていると、その時の気分で
色んなことを言っているのでおもしろい。
「水が飲みたい!」「ポテトが食べたい!」な
んて叫ばれたら、思わず笑ってしまう。観客が
冷めていた時なんか、「なんて冷めているの
よぉ!」とアーティストが怒りながら叫んでい
た。これは日本のあるタブラオでのこと。観客
の反応が冷たかったら、アーティストは踊りづ
らい上やる気も失ってしまうから、いいフラメ
ンコを観たかったら受け身にならず自分も楽し
むことだと私は思う。
「ハレオの言い回しは分かったけど、どんなタ
イミングで掛けたらいいの?」
私は色んなスペイン人に聞いたけど、返ってくる
答えはどれも同じ。
「掛けたい時に掛けたらいいのよ。」
という訳で、タイミングについては個々で探っ
て下さい。失敗を恐れず、どんどん挑戦してみ
れば、ここだぁ!というツボを見つけられます。
そしたらフラメンコがもっとおもしろくなりますよ。
2002.01.21.
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