59.バレエを習って

自分のフラメンコを探究して稽古していると、

フラメンコ性を優先させるのか、舞踊性を優先

させるのか、よく悩む。両方同じくらい稽古出

来たら一番いいのだろうけど、それがなかなか

出来ないので困ってしまう。私に与えられた時

間は1日24時間で、悲しいかな、その全てをフ

ラメンコに捧げることは出来ないのだ。限られ

た時間で効率良く稽古するしか道はない。

フラメンコ性を優先させる稽古なら、カンテを聞

きながら自在に踊ったり、エスコビージャのリ

ズムやパソを考えたいと思う。フラメンコには、

いろんな曲種がある上、例えばタンゴなら地方

によってノリやセンティードが違うから、その

違いも身体で覚えないといけない。エスコビー

ジャのリズムは、全体の構成がまず大切だし、

どう盛り上げるか、見せ場をつくるか、考えだ

したらキリがない。死ぬまで課題はたくさんあ

る。このことについては、また別の機会に書き

ます。

舞踊性を優先させる稽古なら、美しく魅せるため

身体を鍛えないといけないし、舞台空間の使い

方や照明効果などたくさん勉強する必要がある

と思う。こちらも探究すればするほど課題が出

てくる。

私が舞踊性を重視しだしたのは2年くらい前だ。

身体の使い方や表現力に限界を感じたので、バ

レエを習うことにした。ありがたいことに、自

宅の近所に基本のバーレッスンをしっかりやる

バレエ教室があり、また解剖学を学ばれた先生

なので身体が故障しないよう筋肉の使い方を教

えてくれるので、とても勉強になっている。フ

ラメンコの公演があるとつい休みがちになって

しまうけど、次第に体の軸が安定してきて、か

たかった動きがなめらかになってきた。しかし、

ここに至るまで1年以上の年月がかかったし、

これを維持するには休むことなく稽古を続けな

いとすぐ元の身体に戻ってしまうのだ。舞踊性

を重視するということは、絶え間ない稽古を覚

悟しないといけないということに、自分が体験

してみて強く実感している。

実を言うと、フラメンコを習い始めて4年目く

らいの時に、バレエを習おうと一度バーレッス

ンを受けたことがある。それはスペインで、受

けたクラスのレベルがすごく高すぎたことも

あって、一度で挫折してしまった。見るのとや

るのとではぜんぜん違い、分からない用語だら

け、レッスンのバリエーションはフラメンコと

はぜんぜん別もの、これらをきちんと覚えてや

ろうとしたら、フラメンコだけでも低一杯の私

にはどっちつかずになると思ったから、しばら

くバレエはやめておこうと決めたのだ。

今考えても、あの時に習わなくてよかったと思う。

2001.12.26.

back next