57.意識を高く

フラメンコ鑑賞は好きだけどフラメンコ無関係

者である(習ってもいなければそういう仕事も

していない)友達は、時々どきっとすることを

言う。 「この前ベレン・マジャの踊りを観たけ

ど、周囲(フラメンコ関係者)が絶賛するほど

大したことなかったよ。」

「その時、体調が悪かったんじゃないの?それ

か気分が乗らなかったとか。」とまるで自分の

ことのように言い訳をする私。

「ほらっ、どうしてそこでMariちゃんが言い

訳するの?他の友達も同じように言い訳をす

るのよ。ゲストだから控えめに踊ったとか、

ね。 でも考えてみてよ。ベレン・マジャを初

めて観るお客さんは、その1回で彼女の踊り

(芸)を評価するのよ。お客は夢を求めてお金

を払って観に行くのに、夢が買えなかったらも

う二度と観には行かないよ。それが芸ってもん

でしょ?言い訳なんかしちゃいけないよ。」

この言葉は胸にずんと響いた。芸に対する姿勢

が甘い、情けない自分を発見してしまったから

だ。

恥ずかしながら私はフラメンコの仕事をするよ

うになってきたが、美香先生からプロ意識が

低いと指摘されている。タブラオとかでちょっ

と踊れたらいいやレベルの踊り手ではなく、本

場スペインでも通用する本当のいい踊り手を目

指しなさい、と指導されているのに、今だ意識

が低いから踊りのレベルも上がらないのかもし

れない。

いい踊り手を目指したい、という気持ちは確か

にある。どうせ目指すなら上に行きたい。でも

自分の住んでいる地域、サラリーマンを夫に持

つ既婚者であること、自分の年齢、そういう状

況を考えると果たして可能なのだろうか?自分

は本当にこの芸の世界で挑戦していけるだけの

才能があるんだろうか?と悩み自信を無くして

しまう。 しかし、舞踊家としてやっていくには、

自分の住む環境や状況を言い訳にしてはいけな

い。趣味の研究生はそれが許されるけど、プロ

は別だ。

努力だけではどうにもならない厳しい世界に、

片足を踏み込んで初めて知る現実。自分が想像

していた華やかな世界は舞台の上だけ。嫉妬、

妬み、中傷、足の引っ張りあい、こういうのに

耐えられる強さも必要だ。

精神的にもっと強くならなきゃと叫ぶと、

「心配するな、お前は十分強いから。」と旦那

が一言。そう、私にあるのは人並み外れたバイ

タリティーだけ。でも、とにかく頑張るしか方

法はない。 プロの厳しさを痛感している日々

だけど、それでも夢と希望を持ち続け、自分の

可能性にチャレンジしたい。

2001.12.08.

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