
以前ハビエル・ラ・トーレのクルシージョを受
講した時、彼の振り付けをすぐ自分のスタイル
に変えて踊っている人がいた。その変換の仕方
があまりにも素早く格好良かったので、おもわ
ず見とれてしまったことがある。同じ振り付け
でも、こうも違う踊りに魅せられるなんて感心
してしまった。残念ながら私はまだ自分の踊り
のスタイルを持っていない。そして今私のあ
たっている大きな壁でもある。
絵画で例えるとルノワールは印象派で光による
表現技法で絵を描き、ピカソはキュビズムで三
次元を表現したように、踊りも自分の表現方法
が明確にないと没個性のつまらない踊り手に
なってしまうと、私は考えている。
ちなみに私が目指す踊り手は、エバ・ラ・ジェ
ルバブエナだ。彼女独特のスタイル、 少しずつ
変化が見える彼女のひたむきな努力、小柄なの
にエネルギッシュな踊りに、 いつも感動を覚え
るからだ。
今年11月初旬、2年前に美香先生に振り付けて
もらったティエントスを、久し振りにリンピ
アールしてもらった。2年前に比べれば、稽古
もずっとしているし、仕事でも使っている振り
なので、テクニック的には上達しているはずだ。
しかしいくら練習しても煮え切らず、なにかが
物足りなく感じていた。そんな私の踊りをみて、
「もっと振りを熟成させなさいって前から言っ
ているのに!新人公演の時にあれだけ教えたの
に、ぜんぜん身になっていないじゃない、、。」
と美香先生はとても悲しそうにうなだれてし
まった。
「踊る前に何を表現したいのか、自分というも
のをきちんと持たなきゃ、いつまでたってもこ
の振りは”加藤美香のティエント”よ。」
頭をハンマーで殴られたようにショックなコメ
ントだった。実を言うと、こうしなければいけ
ないことに前から気付いてはいたけど、それを
どうしたらいいのかがよく分からなかったし、
一歩間違えると誤った道に足を踏み入れてしま
う恐れがあったから、 怖くて避けていたのだ。
言われたことが当たっているだけに、自分が
情けなくなった。 この壁を乗り越えられない
と、いつまで経ってもいい踊り手にはなれない。
そこから逃げては前には進めない。自分のス
タイルを見つけるのに、どれくらいの年月が
かかるんだろうか?あーーー(溜め息)。
まぁくよくよ悩んでも先に進まないから、コ
ツコツ地道に努力するしかないなぁ。気付い
たら婆ちゃんになってたじゃあんまりだし、
早くこの壁が乗り越えられるよう頑張るぞぉ!
2001.12.01.
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