53.マルカール

マルカールの重要性を知ったのは、舞台の上で

ソロを踊るようになってからだ。それまでその

重要性をよく理解していなかった私は、ある意

味単純動作ともいえるこのマルカールを軽視し

ていた。先生に「マルカールの練習はとても大

切なのよ」と言われても、どう大切なのか、い

まいちピンと来なかったからだ。

マルカールとは、マークする、印をつけるとい

う意味で、コンパス感を養ったり、コンパスに

のって自由に踊れるようになるための練習方法

だ。歌振りの振り付けは、ほとんどこのマル

カールをつなぎ合わせたようなもの。どんな練

習方法かといえば、例えば、アレグリアスの歌

振りでよく使われる振りつけの1コンパスを、

何度も繰り返し踊る練習がマルカール、と言え

ば理解してもらえるだろうか?それでも分から

ない人は、自分の先生に聞いて下さい。フラメ

ンコのリズムを文章で説明するのが難しいくら

い、マルカールを説明するのは難しいし、勘違

いされては困るのでこれ以上の解説は止めてお

きます。

舞台の上では、誰でも緊張して頭の中が真っ白

になる。突然自分がどこの振りを踊っているの

か忘れたり、次の振りを忘れたりする。そうい

う時、このマルカールの練習が非常に役に立つ

のだ。どう役に立つのかというと、舞台の上で

振りを忘れても、ギターのリズムにのって体が

勝手に動いてくれるのだ。フラメンコは、そも

そも即興的に自由に踊るもの。コンパスをはず

さなければ自由に踊っていいのだ。だから舞台

の上で振りを忘れても、コンパスにのって自由

に踊れば、それは間違えたことにはならない

(群舞は別物)。

マルカールの練習は、音楽を体で感じながらコ

ンパスにのって踊るのが一番効果的。私がまだ

フラメンコに慣れていなかった当時、カウント

をかけながら練習していたので、マルカールの

練習の意味があまりなかったように思う。カウ

ントをかけながら踊っていてはいつまでたって

も自由には踊れないので、頭を真っ白にしてフ

ラメンコのコンパス(アセントも)を体で感じ

ながら単純なマルカールの練習を何度も繰り返

す。 この練習を続ければコンパス感も養われ

るし、次第に振りも取りやすくなってくるので

是非お試しあれ。

2001.11.09.

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