
Lさんのカンテクラスは、最初にメロディー
を覚えながらゆっくり歌い、それからコンパ
スにのって歌い、ひとりひとり歌わせ、アド
バイスをするという内容だった。Lさんは、
アセント(アクセント)がどこに入るかと
か、どこを強調するとか、もっと自分をさら
け出せとか、いろんなことを教えてくれた。
そして、音程をはずしてもいいけど、コン
パスは絶対はずしちゃいけない、と何度も
力説していた。
カンテを習う人間がこんなことを言うのは
何だけど、私は音痴なのでひとりで歌うの
が嫌で堪らなかった。歌を知るために習っ
たので、ひとりで歌う必要はないと思った
が、運営と通訳をする立場上、とにかく歌
わざるを得なかった。案の定メロディーが
取れなくて、苦労した。言い訳かもしれな
いが、両親がひどい音痴なので致し方ない。
そんな私が、このカンテクラスである発見
をした。何故か歌の始まるところとか、ど
こにアセントがくるとか、不思議とすぐ分
かったのだ。音程はよくはずしたけど、コ
ンパスははずさなかった。この点だけは誉
められた。石の上にも3年、頑張って稽古し
てきたお陰なのか、知らないうちに、それ
なりのコンパスが身についているようだ。
他の人の歌を聞いていて感じたのは、歌も
踊りも一緒だなぁということ。いくらメロ
ディーがすぐとれる人でも、コンパスに
はまっていなかったり、センティード(フ
ラメンコらしい感覚)がなかったりしたら
フラメンコらしくないのだ。踊りも、振り
という表面的なものがとれても、コンパス
感がなかったり、センティードがないと、
フラメンコらしくない。そうと分かっても、
こういうのを身に付けるのは本当に大変な
んだけどね。
私はそれまで歌うのが嫌いだった。音痴だ
からだ。音程を外すのが嫌で恥ずかしかっ
たけど、それもあまり気にならなくなった。
自信なさそうにぼそぼそ歌う方が恥ずかし
いじゃない!とまで思えるようになった。
フラメンコはコラソン(ハート)とリズム
が大切なんだから、ね。でも聴かされる人
には迷惑かも。その時は許してね!
2001.09.30.
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