
公演の1週間前に、昔の古傷(右足の袋はぎが肉離
れ)が痛み出した。足がつったような感じで、時々
ずきずき痛む。公演直前にまた肉離れなんて、絶
対ごめんだ。私がマッサージのいい先生を探して
いたら、美香先生が治療所を紹介してくださって、
診察してもらった。想像していた通り、昔の古傷
はまだ完治しておらず、かさぶたのような状態で
あまり良くないから十分気をつけるようにと注意
された。早めにそのことが分かったお陰で、足を
冷やさないようレッグウォ−マーをしたりしたの
で、何とか当日まで持ちこたえることができた。
自分自身の問題は自分で何とか解決することがで
きるが、バックアーティストの問題はどうにもな
らない。
公演の2日前のエンサージョで、いつも少し遅刻
するギタリストがいつも以上に遅刻してきた。以
前からそのことに腹を立てていたカンタオールの
二人は、御機嫌斜めだった。ギタリストがなかな
か来ないので、トイレに行って戻ってきたら、彼
がスタジオに座っていた。何故か顔は怒っている。
どうやら私がいない間に、カンタオールの二人が
ギタリストを無視したのか、文句を言ったのか
よく分からないけど、何かが起こったようだっ
た。それでもエンサージョは始まった。ぴりぴり
した空気が流れていて、ギターのメロディーが
いつもと違っていた。それを言うか言わないか
悩んだけど、私が「ギターのメロディーがいつ
もと違います。」と言ったところで、機嫌がさ
らに悪くなってもらっては困るし、君の踊りが
悪いからだよ、なんて言われたらもう踊れなく
なるから、大人しく踊ることにした。でも、
踊っていて本当に気持ちが悪かった。自分の踊
りにだけ集中したかったのに、それが出来なく
て、私を助けて欲しいバックがこんな険悪な
ムードになってしまって、私はパニックに陥っ
た。その日の夜は、ぜんぜん眠れなかった。
バックがこれじゃいつものように踊れなくなる
から、何とかしなくっちゃ、といろいろ考えた
けど、気付いたらもう朝になっていた。もう公
演の前日だ。 公演の前日は、さらに事態は悪く
なっていった。エンサージョの始まる数十分前
に、ギタリストから電話がきて、「今日のエン
サージョは軽く1曲流すくらいにして欲しいか
ら、1時間遅れて行くので。」と、約束の2時間
を1時間に短縮してくれ、と一方的に言ってき
たのだ。でも、カンタオールの2人は約束の時間
にやってきた。ギタリストが1時間遅れてくる、
と行ったら激怒して、美香先生にギタリストを
変えろだの、これじゃmariが可哀相だの言って
いて、美香先生はカンタオールの二人をなだめ
てくださった。こんな状況じゃ、自分の踊りに
集中しようにも、公演前日の緊張も手伝って滅
茶苦茶だった。踊っている最中、カンタオール
が私を励まそうとハレオをかけてくれたりした
けど、全員でまとまることは出来なかった。自
分には負けたくなかったけど、こういう状況で
バックをひっぱるなんて、経験の浅い私には
難しかった。胃は痛いし、気分は悪くなるし、
ただ涙だけが溢れてきた。
彼らの名誉のために補足しておくが、私と彼ら
の相性はいいし、個々の私に対する態度はとて
も親切だった。ただ、ギタリストとカンタオー
ルの相性が合わなくて、こんなことになってし
まったんだと思う。
私は、公演の直前にバックアーティスト同士の
相性の重要性を思い知ったのだ。踊り手との相
性だけでは、絶対だめなのだ。今さら分かって
も、泣こうがわめこうが、公演当日はやってきた。
2001.08.29.
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