41.マドリッドとアンダルシア

スペインでは、買物をしているとお店の人が気

さくにしゃべりかけてくる。私がスペイン語を

しゃべれると分かると、魚が釣れた釣り人のよ

うに目を輝かせ、「どうしてスペイン語がしゃ

べれるんだ?」とか「ここで何をしてるんだ?

スペイン語の勉強か?」と根掘り葉掘り聞いて

くる。ここからお決まりの台詞が私を待ってい

る。「フラメンコを学びに来ています。」そこ

から話題はフラメンコになる。 面白いのは、

アンダルシアの人達の反応だ。「マドリッドで

フラメンコ短期留学していたので、そこでスペ

イン語も勉強しました。」と答えると、「マド

リッドでフラメンコを学んだって?ちょっと

あんた、マドリッドのフラメンコはフラメンコ

じゃないのよ。知ってるの?」と怒られ、私は

驚いた。フラメンコ関係者が言うのならともか

く、普通のおばさんが、どうしてそんなことを

言うのか理解に苦しんだけど、スペイン人は自

分の国や自分の住む町にすごい誇りを持ってい

るので、何となく納得することにした。最初こ

の対応に困ったけど、今じゃ平和的に解決して

いる。「ええ、知っています。その当時はフラ

メンコが何かよく分からなかったのでマドリッ

ドに行きましたが、今はセビーリャやヘレスで

勉強してますよ。」この返答に彼らは満足して

笑顔を返してくれる。中には、さらに熱弁を

ふるう人もいる。「フラメンコに一番大切なの

はコラソン(心、ハート)なんだ。テクニック

じゃないだ。見てみれよ、ギタリストのパコ・

デ・ルシアのテクニックはすごいけど、コラ

ソンはモライートの方が上なんだぜ。」そう

言い切ってしまうアンダルシア人を、私は

すごいと思う。自分の考えをここまで主張でき

る強さに、学ぶべき何かを発見した。

マドリッドのフラメンコの特徴は「テクニック」

「センス」「モデルノ」だと私は思う。アンダ

ルシアの特徴は「グラシア(愛嬌)」「アイレ」

「コラソン」かなぁ。

これはレッスンにも影響してきていると思う。

マドリッドのレッスンはテクニカが多いのに対

して、アンダルシアのレッスンは振付けがほとん

どだから。

2001.08.16.

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