
新人公演にでることになって、自分で振付けをす
ることにした。と言っても、今までいろんな人に
習った振りをほとんど組み合わせたものだけど。
人からもらった振付けをそのまま踊ると、どうも
自分らしさがでない。 どんな曲種にするか悩んだ
けど、アレグリアスにすることにした。いろんな
人から振りをもらっていたので、振りのバリエー
ションが一番豊富にあったからだ。
最初は、歌を習うことから始まった。レトラやメ
ロディーを知らないと、振付けが難しいからだ。
歌を聞きながら踊らないと、スペイン人から「ロ
ボットみたいな踊り」ってバカにされるし。
そして、習った歌に合わせて振付けをおおざっぱ
に考え、スペイン人のカンタオールとギタリスト
に来てもらって、歌を聞きながら最終的な振付け
を決めていった。スペイン人のバイレの友達にも、
リンピアールしてもらったり、エスコビージャの
パソの一部をもらったり、協力してもらった。
こうして、なんとか全体の構成が決まり、少し
ほっとした。 まだ早いかなって思いつつ、美香
先生にリンピアールしてもらうため、7月初旬に
一度東京に行くことにした。ちょうど、バック
アーティストが決定したので、何度かエンサ−
ジョ(バックとの合わせ、リハーサル)をする
ことになった。 最初のエンサージョで、カンテの
ポーラにいろんなことを聞かれた。
「どんな歌がいい?コルティージャはどうする?」
私は歌を指定した。でも指定したのにも関わらず、
彼は同じ歌を歌ってくれなかった。レトラの長さ
もばらばらだった。スペイン人のことだし、同じ
歌が歌いたくないのねと諦め、歌を聞きながら、
何とか踊った。不思議なことに、いろんなメロ
ディーのいろんなレロラを聞きながら踊っている
と、インスピレーションが湧いてきて、こうじゃ
なくて違うイメージで踊りたいって感じるように
なってきた。2回目のエンサージョの最後に、
ポーラがこんなことを聞いてきた。 「何で君に注
文された歌を歌わなかったか分かるか?」「他の
歌を歌いたかったからでしょ?」「違う、踊りは
歌をききながら踊らなきゃいけないんだ。振りに
合わせて歌うのではなくて、歌に合わせて踊らな
きゃフラメンコじゃないんだ。分かるか?」これ
には、衝撃を受けた。「最初の時より、今日の方
が歌がきけていたみたいだからこれからもこれを
続ければ、もっと良くなるから、頑張るんだ」と
励まされて、何だか自分が恥ずかしくなった。
だって、彼は私のことを考えて、意図的にいろん
な歌を歌ってくれていたのに、私は彼ことを同じ
歌が歌えない人だと思っていたからだ!
このエンサージョで、たくさんの課題が生まれた。
美香先生からは、身体の使い方(特に背中)や身
体の重心を指摘された。エスコビージャのレマ−
テがぜんぜん抜けていないとか、自分らしさがま
だないとか、たくさん注意を言われた。大阪に帰
る前に、「誰にも真似できないMariちゃんにしか
踊れないAlegriasを踊りなさい。頭で考えて踊る
んじゃなくて、Mariちゃんの血で踊るのよ。」と
言われ、この言葉が今も頭から離れられないでいる。
ギタリストからは、君の踊りにはタメ(溜め)が
ない、と指摘された。タメがないから、次のパソ
の予測がついてしまって、退屈すると言われた。
「観客を裏切る踊り(次のパソを予測させない)
をしないと」の一言には、ずんと胸に響いた。確か
どこかの記事でプロとアマの差は「タメ(溜め)」
である、と書かれていたのを思い出したからだ。
記事の内容は、アマチュアは踊っている最中に、
余裕がないから意識はすでに次のパソに行って
しまって、現に踊っているパソをおろそかにし
てしまっている、と書かれていた。あ〜、確かに
今の私の踊りには余裕がない。
こうして私は、練習不足を実感したのだ。
新人公演まで後数週間、どこまで課題をクリアに
できるか、自分との戦いが始まった。
2001.07.26.
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