
フラメンコ初心者の人でも、アレグリアスなど
の振付けを習うようになると、ジャマ−ダとい
う言葉をよく耳にすると思う。このジャマ−ダ
は、歌を呼ぶ時とかテンポを変えたい時にカン
タオ−ルやギターリストにそれを知らせる合図
のことを指す。これは一見簡単そうで、実をい
うととても難しい。
私がジャマ−ダの難しさを初めて知ったのは、
東京の美香先生の発表会でソロを踊った時だ。
初めてギターとカンテと合わせて踊るリハー
サルで、「歌は踊りで呼びなさい」と美香先生
に言われ、一切の説明もなしに踊ってみたら、
ティエントの最後のタンゴはひとつも歌を呼
ぶことができなかったのだ。(詳しくは奮闘
記5をご覧下さい)それまで、与えられた振付
けをただ踊っていた私は、振付けの奥に潜む
意味を深く考えるようになった。
発表会が終わって、ジャマ−ダは私にとって
大きな課題としてのしかかってきた。これは
先生から習うものではなく、自分で探究する
しか方法はないと美香先生から聞かされ、踊
りで歌を呼ぶジャマ−ダの研究が始まった。
私の場合、いろんなギタリストやカンテの人
に協力してもらった。自習する時に、彼らに
来てもらって、説明なしで踊ってみて、どう
したら歌を呼びやすいか、試行錯誤をくり返
した。フラメンコの公演を観に行くと、踊り
手はどんなジャマ−ダをかけるのか、いつも
興味深く観察した。そういうのを半年くらい
続けると、ジャマ−ダにはテクニックがない
踊り手でも比較的歌を呼びやすいものと、踊
り手のキャリアがないと呼びづらいもの、逆
に歌を呼ぶのを邪魔するようなもの、などい
ろんなものがあるということが分かってきた。
これは、踊りの構成にも左右されるみたいだ。
この経験のお陰で、ブレリアやタンゴの振付
けをしやすくなった。
問題は、頭では理論が分かっていても、実際
自分が踊るとなると上手くいかないというこ
とだ。スペイン人から習った振付けの多くは、
キャリアがないと呼びづらいジャマ−ダばか
りで、これをきちんと踊りこなすにはかなり
の経験と感性が必要になってくる。 あぁ〜。
ふぅ〜。ひぃ〜。まぁ、足掻いてもしょうが
ないので、私は今も稽古に励む毎日を送って
いる。
2001.06.24.
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