
それは、A氏の電話で始まった。
「Mari、この間のカンテクラス、女性に教える
のがこんなに大変だとは思わなかったよ。オレ
は仕事で毎日歌わなければいけないし、今の値
段ではこれ以上教えられないよ。」と言ってき
たのだ。 スペイン人は後から値段を上げてくる、
という話は聞いていたけど、こんなに早くくる
とは思わなかった。やれやれだ。それからまた
毎日、電話で交渉したり、El Flamencoまで出
向いたりした。 どんな交渉をするのかといえば、
値段を上げた時のデメリットをしつこく説明す
るのだ。日本では、最初の約束を守らなくては
いけないこと、約束を破ると信用がなくなること、
信用がなくなると次から仕事がこなくなること、
値段が安いと人が集まるからトータル的に考え
ればそっちの方が儲かるということ、etc。。。
しかし、彼は私の話を聞いているような振りを
して、実をいうと聞いていなかった。次はこれ
を言うぞ、みたいな態度がありありとでていた
から。そして彼は、信じられないようなことを
言ってきた。
「1時間も歌うのはしんどいから、2回くらい
歌ってそれをテープに録音して、後はテープ
を聞きながら練習をしよう。」私は耳を疑った。
もしかして、私の聞き間違いかと思って、
「えっ、今何んて言ったの?」と聞き直した。
彼は、私が聞き逃さないようゆっくりと二度
くり返して答えた。「テープに録音して、それ
を使ってレッスンをしよう。一人5000円でね。
全部で10回だよ。」
テープを聞きながら歌を習う????それに
1時間5000円???そんなカンテクラス聞いた
ことがないわよぉ!私は怒りを押さえながら、
そんなレッスンに5000円も払えない!と言った。
大抵の日本人は、ここで言いなりになって払って
しまうみたいだけど、私は違う。ここで彼の言い
なりになったら、また後から値段を上げてくるか
もしれない。そんなことをしているから、日本人
はいつもぼったくられるのだ。だから心を鬼にし
て、A氏のクルシージョを中止にすることにした。
クルシージョの申し込み者から苦情がくるかなぁ
と思ったら、その反対で「ぼったくり価格に反対!
きっぱり断ってくれてどうもありがとう」という
メールがたくさん届いた。皆考えていることは一
緒なんだなぁ、と思うと、とても心強い。
これにめげず、これから他のメンバーと交渉して
みるつもりだ。こんなことでいちいち凹んでいら
れないよ。
2001.05.05.
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