フラメンコを始めて数年は、何をしても新鮮だし

刺激的で楽しい。レッスン以外でも一生懸命練習

し、発表会ではお金を投資し、のめり込んでいく。

それが不思議なことに、そのフラメンコ熱が冷める

時がやってくる。「これだけの時間とお金と労力を

費やして、一体何になるの?他のことに同じだけの

お金と労力を費やしたら、もっと身になるんじゃ

ないの?」と。

この症状は、恋愛のそれとよく似ている気がする。

好きな人ができると、一緒にいたくなる。一緒にい

るでけで幸せ、という気分になる。それが冷めと、

今度は相手が鬱陶しくなったり、一人の時間が欲

しくなったりする。相手の嫌な面が目立ってきて、

些細なことで腹が立ったりする。フラメンコもこ

の症状とよく似ている。フラメンコ熱が冷めると、

フラメンコの嫌な面が目立ってくるのだ。

フラメンコ熱が冷めるのと、スランプは別物だ。

私はフラメンコを始めて3年目に一度、4年目に一

度冷めたことがある。 最初はドイツに引っ越して

1年目に訪れた。往復6時間もかけて習いに行くの

に、レッスン内容があまりにも単調で、振付けも

ぜんぜん進まなくて、だんだんつまらなくなって

きたからだ。そんな冷めた私を熱くしたのは、ティ

モのクルシージョだった。
(詳しくはこのページを読んでください)

その次はフラメンコを始めて4年目の終わりだった。

ドイツの発表会が終わって燃え尽きて、すぐ日本

帰国の準備に追われ、日本に帰国してから逆カル

チャーショックを受け、何だかどうでもよくなっ

た時期があった。それでもフラメンコはやめられ

なかったから、「フラメンコは週1日のレッスンで

片道1時間以内のスタジオで趣味として割り切ろう」

と再開した。そんな冷めた私を再び燃え上がらせた

のは、ラ・トレアのクルシージョだった。彼女は私

の内に眠っていたパワーを引き出してくれた。そし

て自分の可能性を発見し、現在に至っている。

フラメンコはプロとアマの線引きがはっきりして

いない。本人は趣味として習っていても、先生が

本格的なフラメンコを目指していて、時として生徒

にそれを押し付けることもある。上達しない人を

認めず、レッスンをたくさん受講するよう精神的に

追い込む。発表会では、生徒の懐より自分の懐か自

分のこだわりを最優先させる。(注:そうでない先

生もいます)そこで多くの生徒は悩むだろう。趣味

でやっているのに、プロとしての道が約束されてい

るわけでもないのに、何でこんなにお金と労力を費

やさないといけないんだろう?と。。。。

そこでプロを目指して頑張れる人はいいけど、家庭

の事情とかで目指せない人だっている。

私が思うには、生徒一人一人の意識が変っていか

いと、この現状を変えるのは無理だ。つまり、趣味

でやっていくには、自分が許せる時間とお金の上限

をはっきりと決め、それを超えないよう調節するこ

とだと思う。「つらい」と感じたら、無理してやら

ない。踊りたくなったら踊ればいい。フラメンコと

距離をおくのも、たまにはいい。う〜ん、これって

やっぱり恋愛と似ているなぁ。

さてさて、フラメンコとどう付き合っていくか、

それを決めるのはあなた自身です。

2000.12.20.

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