
フラメンコを習って間もない小羊達が「伸び悩むっ
てどういうことですか?」とか「スランプってどう
いう状態をいうんですか?」と無邪気に聞いてくる。
私にもそんな無邪気な時期があったなぁ、と昔を懐
かしむ。
「伸び悩む」時期は人によって違うし、その内容も
人によって違う。私は結構早くて3年目くらいだっ
た。先生から与えられた振付けを間違えることなく
踊ることはできたけど、身体の使い方がぜんぜん上
達せず、成長がぴたりと止まってしまったのだ。
ちょうど同じ時期に、同じクラスの友達数人がぐん
ぐん成長していたので、私の「伸び悩み」が弥が上
にも目立ち、先生からちくちくと注意され、とても
嫌な思いをした。これは半年くらい続いたと思う。
「伸び悩む」と、壁にぶつかる。この壁を叩き割れ
るのは、先生でもない、友達でもない、自分だけだ。
自分でそれをぶち破らないと、前には進めないのだ。
そこからは自分とのたたかいになる。その壁がなか
なか破れないとつらいけど、壁がぶち破れた時の喜
びはひとしおだ。 「伸び悩み」の時期はつらくても、
踊るのが嫌になったり、踊りたくなくなることはあ
まりない。(自分自身に負けてフラメンコを止める
人は別)そういう踊ること自体が苦しくなる時期を
「スランプ」という。だいたい壁にぶつかって、身
体の故障や不調がきっかけで、今までの自分の踊り
ができなくなり、踊るのがとても、それは説明でき
ないくらい苦しくなる。私はフラメンコを習い始め
て7年目の今年9月にこの「スランプ」に陥った。
今まで「伸び悩み」でつらい思いをしたことはあっ
たけど、踊りたくないと思ったことはなかった。
踊るのが苦しくなって、踊りを止めてしまおうかと
さえ思った。11月の発表会と12月のライブを前に、
いくらなんでもそれでは無責任すぎると思ったので、
つらくても稽古は続けた。そして嫌々稽古する自分
自身にびっくりしたし、訳も分からず泣いたりもし
た。そんな私を精神的に刺激してくれたのは、シド
ニーオリンピックの日本選手の活躍だった。ちょう
ど「スランプ」の時期にシドニーオリンピックが開
催されていて、日本選手の活躍に感動した。特に柔
道の田村選手と、シンクロの団体は、そこに至るま
での苦労話をテレビの報道で知っていただけに、深
く感動して勇気付けられた。彼女達の苦労を考えれ
ば、私の「スランプ」なんて大したことない、と自
分自身を奮い起てた。有り難いことに、私は約3週
間でこのスランプから脱することができた。
人前で踊るには、昨日や今日の練習だけでは踊れ
ない。日々の稽古の積み重ねが大切だ。どんなにつ
らくても、とにかく稽古は続けないといけない。
この「続ける」ということがどれだけ大変なこと
か、東京の美香先生の「下手な才能より、努力し
て稽古を続ける根性の方が大切」という言葉も、
自分が経験して初めて分かった。
私はフラメンコ先輩に自分のスランプ話をした。
「たった3週間でスランプから脱したの?私はスラ
ンプに陥ってから1年以上も経つのに!」
どうもスランプに陥ると大抵の人はその期間が長
期にわたるらしい。そういえば、東京の美香先生
もスランプに陥って2年経つ、と言っていたなぁ。
もしかして、私ってかなりの単純バカかも???
2000.11.25.
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