★蔦の細道頂上からの眺望 / 頂上の道標

峠の頂上は見晴らしがよかった。頂上653mと書いてあった。道標があって、このまままっすぐ下れば蔦の細道岡部口、右に行くと蔦の細道(宇津ノ谷峠)となっている。まだこの先にも峠があるのかと思って右に進んだのだが、倒木などもあり道は荒れている。そのうちトンネルの換気口や保安施設のある場所に出てしまった。どう歩いたのかよく分からないが、結局旧東海道に出て、髭題目碑の前を通って本来の「蔦の細道」の岡部側の道に合流した。

第11日目 (5月13日 日曜日) 府中宿〜丸子宿〜岡部宿〜藤枝宿〜島田宿


★駿府城東御門・巽櫓 / 本丸跡に建つ家康像

今回はJRの「日本往来・東海道ウォーキングきっぷ」を初めて利用した。「府中〜丸子コース」ということで静岡までの新幹線往復切符が3割引になる。東海道歩きで一番お金のかかるのは交通費だから、JRのこの企画はこの後もフルに活用させてもらった。というわけで、新幹線で静岡駅に8時45分に着き、前回に引き続き静岡駅から歩き始める。駅前の広い通りをしばらく行くと駿府城址がある。現在は駿府公園として市民の憩いの場となっている。駿府城東御門・巽櫓が復元されている。また、公園内の本丸跡には家康像が建ち、近くに家康手植えのみかんの木がある。


★札の辻跡 / 安倍川餅のお店(安倍川橋手前)

公園に隣接した県庁の脇を通って旧東海道に戻る。伊勢丹デパートの前の歩道に「札の辻跡」の碑があった。ここに高札場があったのだろう。ところで、「府中」という地名は明治になってから「不忠」に通ずるということで嫌われ、近くの山(丘)の名をとって「静岡」と改称されたという。さて、東海道は安倍川に差し掛かる。橋の手前に昔からの名物「安倍川餅」を売っている店が何軒かある。安倍川という川は知らなくても安倍川餅なら知っているという人は多いのではないだろうか。私もここへ来て初めて川と餅の関連付けができた。


★安倍川義夫(ぎふ)の碑 / 安倍川

昔の安倍川はやはり橋がなく、川越人足による渡しが行われていた。安倍川橋の脇に「安倍川義夫(ぎふ)の碑」というのが立っている。昔、ここの川越人足が大金の入った財布を見つけ追いかけて落とし主に手渡したが、お礼を頑として受け取らなかった、という話が美談として伝わり、これを讃える碑が建てられたという。このような正直者がいかに少なく、奇跡的な善行だったということだろうか。


★丸子(まりこ)宿の旧道 / 丁子屋(とろろ汁店)

安倍川を越えてしばらく行き、国道1号線を渡ると丸子(まりこ)の町に入る。広い県道を歩いてゆくと道はだんだんと狭くなり、やがて丸子宿本陣跡に着く。ここには新しい大きな碑が立っている。丸子宿は宿場としては規模は大きくないが、昔から「とろろ汁」で有名だった。広重の丸子宿にはこのとろろ汁屋が描かれている。本陣跡の少し先にこの広重の画に描かれたのと同じようなわらぶき屋根の「丁子屋」があり、とろろ汁を食べることができる。この店の裏(表?)は国道1号線に面していて、観光バスの止まる広い駐車場があり、観光客で賑やかである。このあたりにはとろろ汁屋が何軒か並んでいる。


★国道1号線・道の駅「宇津ノ谷峠」付近 / 蔦(つた)の細道

「丁子屋」の前の丸子橋を渡り、旧道をさらに歩くと、やがて広い国道1号線とぶつかり、しばらく国道を歩くことになる。この先国道は「宇津ノ谷峠」をトンネルで抜けるが、我々「歩き旅」の人は文字通り峠を越すことになる。トンネルの手前に「道の駅・宇津ノ谷峠」があり、ここで少し休憩した。ここから峠を越えるには2本の道がある。ひとつは江戸時代の旧東海道であり、もうひとつはそれ以前の道で、「蔦(つた)の細道」とよばれるものである。私は旧東海道を歩こうと思っていたのだが、結果的に「蔦の細道」をあるくことになった。要するに道の入り口を間違えたのだが、これはこれでよかったと思う。その昔、在原業平をはじめ多くの文人たちが通り、「伊勢物語」などの文学にもその名を残す「蔦の細道」はそのようなことを考えながら歩くとなかなか味わいのある道である。ところどころに「蔦の細道の文学」と題する解説板が立っている。現在はハイキングコースになっているので歩きやすい。






★藤枝の商店街と旧道 / 「上青島の一里塚跡」道標

道は藤枝宿に入ってゆく。東木戸跡の碑を過ぎ、成田山の前を通ってしばらく歩くと、藤枝本町の商店街になる。この先アーケードの商店街は白子名店街、上伝馬商店街、中央商店街などと名前を変えて道沿いに延々と続く。途中に「藤枝宿・長楽寺町」の夢舞台道標があった。昔の宿場の中心は延々と続く商店街の西のはずれの方にあったらしく、このあたりの商店街では昔の屋号を統一した木の看板で表示しており、町の雰囲気作りをしていた。この先、瀬戸川を渡りしばらく行くとJR藤枝駅に通じる分岐点に来た。藤枝駅に出て本日の旅を終了とするか、もう少し歩くか少し迷ったが結局もう少し歩くこととした。途中、上青島一里塚跡などを経て、国道1号線に合流する。しばらく行くと島田市に入り、JRの六合駅入り口の標識が見えた。時刻は16時40分。今日は六合駅から帰途につく。

★横内橋と旧道 / 横内「いっぷく処」

松並木の先に「東海道横内」と書かれた看板があり、ここからは道は車の少ない静かな旧道になる。この道沿いの家の前にはそれぞれ昔の屋号が表示され、主な建物の跡なども表示杭が立てられている。昔の町並みが想像できて楽しい道であった。横内橋の手前に「いっぷく処」が設けられていて「東海道400年祭」の横断幕が掲げられていた。

★岡部宿入口 / 岡部の松並木

峠を越えるとトンネルを抜けてきた国道1号線と再び合流するが、これを横断して旧道に入る。岡部宿は規模としてもそれほど大きな宿場ではなかったようで、遺構もあまり残っていない。県道脇の「岡部宿」の標石、「岡部の松並木」などが昔の東海道とのかかわりを示している。

歩行距離  約28km   歩数 47,900歩