★草薙神社の大鳥井 / 静岡市内の国道1号線と静岡鉄道

さらに進むと、草薙神社の大鳥井が見えてきた。神社はこの鳥居のずっと先らしいので通り過ぎる。もう静岡市内である。東海道も大きな都市の周辺に来ると道幅は広くなり、交通量も多くなる。当然の帰結として、足早に通り過ぎようという気が働く。というわけでせっせと歩いた。国道1号線の脇を静岡鉄道の電車が走っていたのが印象に残っている。静岡か、思えば遠くに来たもんだと、このときはじめて思った。JR静岡駅にたどり着き、16時40分発のひかり号で帰途につく。

★細井の松原道標 / 江尻宿の様子

清見寺を後に国道を歩く。途中に「細井の松原」という夢舞台道標がある。昔はこのあたりに200本ほどの松並木が続いていたという。現在はほとんど残っていない。もう少しで江尻宿に入る。江尻と清水は昔から隣町で、江尻は宿場町、清水は港町として栄えた。現在、江尻は清水市の一部となっており、清水の方が圧倒的に全国的な知名度が高い。「江尻宿」の夢舞台道標があり、江尻のアーケード商店街が続いている。

★興津川 / 清見寺 / 五百羅漢像

薩た峠を下りたあと、興津川を渡る。今見るとそれほど大きな川でもないが、昔は川越人足の肩車による徒歩渡しなどが行われ、ときには川止めなどもあったらしい。
興津川橋を渡ると興津(おきつ)宿である。本陣跡の碑を見てさらに進むと、名刹「清見寺」がある。県道からすぐのところに山門があるが、山門と本殿との間に東海道線が走っており、陸橋で渡るようになっている。寺の創建は古く奈良時代にさかのぼるという。また、海を望み景色のよいことでも有名だったらしいが、残念ながら現在は埋め立てられ、海はほとんど見えない。このお寺で面白いのは、五百羅漢像である。それぞれ顔つきの違うたくさんの羅漢さんが並んでいて、見ていてあきない。

★薩た峠から駿河湾、富士山を望む

時々後ろを振り返ると、だんだんと視界が開け、広大な海と富士山が見えてくる。駿河湾の海岸線の向こうに真白な富士山が聳えている。まさに絶景である。さらに登り、薩た峠の頂上に着くとここからの眺めもすばらしい。眼下に東名高速、国道1号線、東海道本線の三本が走り、駿河湾の向こうには富士山がくっきりと見える。頂上からのハイキングコースは途中までゆるやかな坂道で、この絶景を見ながらのんびりと下ってゆくことができる。(2008年現在、このハイキングコースには道標が整備されており、これにしたがってゆけば最短距離で興津に出ることができる)

第10日目(4月28日 土曜日)蒲原宿〜由比宿〜江尻宿〜府中宿


★由比本陣公園 / 東海道広重美術館

4月の中旬は、ちょっとした外国旅行をしたので4週間ぶりの東海道歩きである。今日は道中でも風光明媚で名高い「さつた峠」を越える。天気は快晴である。前回に引き続きJR蒲原駅から歩き始める。駅前からすぐに県道(旧国道1号線)になり、これをしばらく行くと旧道は左にゆるいカーブで曲がってゆく。その先に由比本陣公園東海道広重美術館がある。本陣跡が公園になっており、その中に東海道広重美術館がある。これは、歌川(安藤)広重の作品だけを集めた非常にユニークな美術館であり、東海道ファンには見逃せないものである。ちょうど私が行ったときには「東海道三役展」というのをやっていた。広重が東海道53次を描いたもののうち「保永堂版」「行書版」「隷書版」の三つが特に有名で、この三つを役というそうだが、この全作品を展示する企画である。ただし、今回はちょうど半分の日本橋〜袋井宿までの作品の展示だった。同じ宿場を描いてもこの3つは微妙に、あるいはまったく違う。この辺の違いが分かってとても面白かった。やはり「保永堂版」がなじみがあり、親しみを感じた。なお、ここには1枚の版画が刷りあがるまでの過程の展示もあり、興味深かった。(入館料500円)










歩行距離  約29km   歩数 46,800歩

★追分羊羹の店と道標 / 草薙の一里塚

江尻宿を出てしばらく行くと東海道と清水道の追分に着く。ここには古くからの「追分ようかん」の店がある。創業元禄8年だそうである。店の横には道標も残っている。しばらく行くと一里塚跡の碑がある。草薙の一里塚と呼ばれ江戸から数えて43番目のものだという。

★正雪紺屋 / 明治時代の郵便局舎

さて、本陣公園の前に「正雪紺屋」という染物屋がある。江戸時代から400年も続いており、由比正雪の生家といわれている店である。現在でも土産用の暖簾、手ぬぐいなどを売っている。由比正雪は江戸時代初期に幕府の転覆を企てて失敗し、自刃している。もう一人の首謀者丸橋忠弥は捕らえられて鈴が森の刑場で処刑されている。この店の先には明治時代の郵便局舎が残っている。明治のはじめに郵便業務をはじめ、昭和2年まで使用されていたという建物が現存している。

★倉沢集落の旧道

由比川を渡り、旧道をさらに行くと東海道線由比駅の前を通る。今日は天気も良いし、これから「薩た峠」方面へハイキングに行こうという若い人や、中年女性のグループが何組か見られた。旧道は一旦県道にぶつかるがこれを渡るとさらに続いている。この辺は倉沢集落で昔からの雰囲気がよく残されている。道の幅といい、旧道特有の微妙なカーブといい、こういう道を歩くとうれしくなる。途中に古い小池邸、「あかりの博物館」(有料)などがある。

★藤屋(望嶽亭) /さつた峠への道

西倉沢集落のはずれに「藤屋」という古くからの店が残っている。「望嶽亭」とよばれ、ここからの眺めは江戸時代の「東海道名所図会」にも「富士を見渡し、三保の松原手にとるごとく・・」との記述があり、海道一との評判だったそうである。残念ながら現在はここからはそのような景色は見られない。この店の前に、一里塚跡の碑、夢舞台道標「倉沢」が立っている。さて、道はいよいよ「さつた峠」に向けて急なのぼり道になる。登るほどに道の両側には夏みかんの畑になってくる。崖の上から下までずっとみかんの木が続いている。時々農作業の軽トラックが道を通る。