〜今日のお気軽ひとこと翻訳・書類保管庫 (September 2001 - )〜




英国になじみのある方、特にロンドンの地下鉄を利用したことがある方は、タイトルをご覧になってあっと思われるかも知れません。今回はわたし自身の体験に触れながら、日本人にはちょっと取っつきにくいかも知れない単語"Mind"を使った、日常頻繁に使われる表現をいくつか取り上げてみます。



Mind The Gap.


Mind the gap.
隙間に注意。

Mind the step.
足元に注意。

Mind your head.
頭上に注意。


初めてロンドンの地下鉄を利用したとき、もうすぐ列車が入ってくる、というところで突然プラットフォームに響き渡ったのがこの"Mind the Gap"。人は多いしマイクの音は籠って(というか割れて)いてはっきり聞き取れない、それで音量だけはやたら大きいので、初めは何か一大事が起こったのかとぎょっとしました。しかし周囲の人は平然としている、ということはこれは「いつもの放送」なのに違いない、ともう一度よく聞いてみると、どうやら上記のように聞こえる。何かに注意、と言っているらしいけど、gapって何?割れ目、溝...駅が老朽化してあちこちに壊れているところがあるとか?(当時はそれも納得できるような駅が結構あった)意味がよく分からないままに機械的な男性の声で"MIND, theGAP. MIND, theGAP."と繰り返されるのはかなり不気味。
と、そこに列車が入ってきて扉が開くと、待ってましたとばかりにまた"Mind the..."が繰り返される。そこでその状況と、日本の駅でのアナウンスを思い返して納得。つまり、「列車とプラットフォームの間の隙間(溝)にご注意」と言っていたのでした。これはどうやら英国特有の表現らしく、実際同じ英語を母国語とする他の国の人たちでも、初めて聞くと戸惑ったりするようです。おそらく鉄道、特に地下鉄が早くに発達したこの国で、乗客の乗り降りの際に一番気をつけてほしいところを最も簡潔に伝えるため、こういう表現になったのでしょう。逆に英国やロンドンの事情をある程度知っている人は、現地以外の場所でこのフレーズを聞くと思わずにやりとする、ということで、お土産用のTシャツに地下鉄のシンボルマークと共にプリントされて売られていたり、音楽アルバムのタイトルに使われたりもしています。

この地下鉄での表現はちょっと特殊としても、ここでのmindは「気にする、用心する」といった意味の動詞で、日常の様々な場面でよく使われます。例えば工事現場や改装中の建物の内部などにMIND THE STEPという注意書きがあったら「足元にご注意(気をつけて歩行してください)」ということだし、天上の低いところにMIND YOUR HEADとあったら「頭上注意(頭をぶつけないように)」となります。注意書きだけでなく、こういう状況で誰かに口頭で注意を促すときも同じ表現がそのまま使えます。台所でお料理をしているお母さんの背後を通るとき、普通は"Excuse me."でいいですが、自分が食器をたくさん抱えていて急に動かれると危ない、などというときには"Mind your back (, I'm carrying plates)"「後ろに気をつけてね(、お皿を運んでるから)」というふうにも使えます。

ちょっと面白い使い方では、何か演説やお説教めいたことを言っているときに、挿入句として"Mind you,..."と言うもの。これは「いいかね」「よく聞きなさい」というような意味で、自分の言いたいことに特に相手の注意を引きつけたいときなどに人さし指を立てながら言ったりします。 また目上の人が若い人などに"Mind what you say."と言えば、「物言いには気をつけなさい」という忠告になります。これらの表現で使われるmindは、先の例の「注意を促す」という目的から発展して警告または命令というような、やや強い意味あいを帯びてきます。多かれ少なかれ威圧的なニュアンスが入ってくるので、よほど親しい間柄か、会社のプレゼンテーションや論文の発表などで複数の人に対して自説を声高に主張するような場でもない限り、目下の人が目上に向かって使うことはあまりありません。さらに強い意味あいの例では、映画などで耳にしたことがあるかも知れませんが、誰かに親切にしてあげようかと思ったら"Mind your own business."と言われた...この場合のmindは「気にする」またはそこから派生して「専念する」という意味になりますが、「お仕事頑張ってね」と言っているわけでは(例えにっこり微笑んで言われたとしても)なくて「自分の仕事だけ気にしていろ」=「余計なお世話だ、引っ込んでいろ」ということです。この種のmindの使い方にはいささか注意が必要です..."Mind what you say."(言葉に気をつけろよ)と言われないように。



20/1/2002




「今夜の宿」


ROSEVILLE

★ A COMPLETELY NON-SMOKING ESTABLISHMENT
★ ALL BEDROOMS EN-SUITE OR PRIVATE FACILITIES
★ OFF STREET FORECOURT PARKING

You are welcome to come and stay in our comfortable Victorian town-house
with central-heating and guests' TV lounge.
Children aged over 12yrs only.
Accommodation and varied breakfast menu from £22.00 per person


ローズヴィル荘

★ 完全禁煙制
★ 全室浴室付きまたは専用設備付き
★ 通りから外れた前庭駐車場

集中暖房設備とお客様用テレビ休憩室を備えた、居心地のいいヴィクトリア風町屋敷へようこそ。
お子様は13歳以上に限ります。宿泊・各種朝食メニューはお一人様22ポンドより。



from an advertisement on "Shrewsbury 98" brochure.

旅行記でも取り上げたような英国やアイルランドで一般的な民宿、B&B(Bed & Breakfast)の典型的な広告です。B&Bはホテルなどに比べ、経済的でありながらなおかつ安全で静かな滞在を提供する宿、というのが一般的イメージなので、若いバックパッカーや仕事で滞在する人よりも、比較的年輩のカップルや家族連れ、女性の旅行者などが多く利用します。そのため広告でも概して、女性が好む特徴を強調する宿が多いようです。

en-suite は旅行記でも触れたように、浴室が客室に付属になっている部屋のこと。private facilitiesは浴室が付属していない部屋の場合、独立した浴室を他の部屋の客とかち合うことなく、自分のものとして自由に使えるというもの。off streetは「主要道路から外れた」、つまりここでは静かで安全な(例えば車泥棒などの心配が少ない)駐車場です、ということを強調しています。この場合のoffは「...をちょっと離れた」というニュアンスで、The shop is off Oxford Street.(その店はオクスフォード通りをちょっと入ったところです)と言えば「オクスフォード通り沿いではないが横道をちょっと入った、そう離れてはいないところ」という意味あいになります。よく使われる「off Broadwayで上演された舞台」などという表現も、演劇関係者なら誰でも憧れる最高の舞台ブロードウェイ、とまではいかないけれども、劇場としてそれほど大きくひけをとらないところ(または舞台そのものの出来)という意味。同様に「オフ・ブロードウェイで活躍している人」と言ったら一流の実力がないというわけではなく、むしろ大舞台までもうすぐそこという才気溢れる人物ということになります。

central heatingは文章に書くと素晴らしい設備のようですが、各部屋の壁際にあるパネルに熱を伝えて部屋を暖める設備で、英国の一般家庭ならまずどこでも見られます。英国やアイルランドでB&Bを利用する人は、1日や2日の忙しい滞在ではなく週単位で予約して、そこを基地として最寄りの名所を訪ねたり土地の景観を楽しんだりするのが普通で、前述したように仕事や家事から離れてのんびりしたい年輩の人なども多いことから、宿側でも騒がしくなりがちな小さい子供連れを敬遠するところもありますが、逆に赤ちゃん連れやペット歓迎、というところも結構あります。children aged over 12 yrs は= We only take children over 12 years old. の意味ですが、overの訳し方に気をつけてください。overは「何かから離れて」「...を越えた」という意味、つまりここでは「12歳を越えた」ということになるので、日本語では「13歳以上」となります。「12歳以上」と言う場合は12 years old and over、同じように「12歳以下」は12 years old and under となります。

ちなみに、英国やアイルランドでは郊外の「お屋敷」というわけではない、町中の一般の家でもちょっと気取って「○○荘」などと付けたりしますが、昔から品種改良などにも力を入れているお国柄だけあって、特に英国では家の名前にばらに関係したものをつけることが多いようです。"Rose Cottage"と名付けられた家が英国中に何件あるか、調べてみると膨大な資料が集まるかも。



7/9/2001


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