〜今日のお気軽ひとこと翻訳・書類保管庫 (September - October 2000)〜



「商品にご不満なときは」(22/10/2000)


If you're not happy with anything you buy from us,
contact us within 30 days of receipt and we will replace the item or refund you in full.


もし当方でお求めになったものにご不満の場合、
商品お受け取り30日以内に連絡いただければお取り替えまたは全額払い戻しをいたします。



from "How to Order" page on The Good Book Guide magazine, September 2000 issue.

新刊書やこれまでに発行された本の評論や推薦文を載せて通信販売する契約雑誌の「注文方法」ページに載っている文です。日本でも本に限らずカタログや通信販売の商品注文書などにはほとんど必ず似たような文が載っていますね。前回の時刻表の注意書きはかなり固い書き方でしたが、今回は企業から利用者に向けたものと言っても顧客により親しみを感じさせ気軽に利用したい気分にさせるため、文体もある程度リラックスした感じになっています。前回の文が「この注意書きを理解した上で利用者は行動するように(=注意を明示している以上鉄道では規定以上の責任は取れない)」とやや読み手との距離を置いた書き方なのに対して、ここではcontact us / we will replace...と繰り返し「私達」と言及して、言わば販売者側の顔が見える形で「お客様のご不満に積極的にお答えします」という姿勢を見せていることでもそれがうかがえます。

be not happy はこの場合「幸せではない」→「不満だ」という意味で使われています。同じ意味でIf you're not satisfied(ご満足されない場合は)...とも言えますが、日常の会話などでもより頻繁に用いられるhappy を使うことで仰々しくない印象になっています。またyou are をyou're と省略している点でも同じ効果があります。よりかしこまった文章、手紙などでも、例えば日本でいう「拝啓 皆様にはご健勝のことと...」などという文体の場合には普通 I'm, Don't などの省略形は使いません。
receipt は「領収書、レシート」の他に「受領すること、受け取ること」という意味があります。item(s) は本でも服でも食べ物でも、販売者が一般的に「商品」という場合よく使われます。in full は「値引きせずに、省略せずに」。"Please write your name in full."と言えば「フル・ネームをお書きください」となります。



22/10/2000





「時刻表の変更にご注意」(15/10/2000)


Please note that schedules are subject to change.
Passengers are advised to confirm them in Britain before date of travel.


時刻表は変更される可能性が多分にあるのでご注意ください。
利用者の皆様には英国国内にて、旅行日前に確認されることをお勧めします。



a notice on a Britrail timetable sheet "THE PASSENGER RAILWAYS OF BRITAIN".

英国鉄道の早見時刻表に書かれている注意書きです。英語が母国語ではない人が読む可能性もあるため、読み違えなどによって誤解が生じては困るので省略を避け、文章自体もかなり固いものになっています。が、逆に固すぎて慣れない人はちょっとたじろいでしまうかも知れません。
note はこの場合「記録する、ノートをとる」ではなくて「...に注意する」。that 以下のことに注意して下さい、ということです。be subject to は「...を受けやすい、...しやすい」、つまり時刻表は変更になる「こともある」ではなく「可能性が高い」と言っています。もう少し柔らかく=schedules are likely to change とも言い換えられます。二つ目の文の前半は直訳すると「乗客はそれらを確認することを勧められている」となり、=We advise passengers to confirm...と書き換えられます。これもWe(鉄道会社)を出さないやや堅苦しい書き方ですが、文頭にPassengers(乗客)と出すことで当事者、つまりこれを読む鉄道利用者が「自分のことだな」と注意を向けるという効果もあるでしょう。confirm them のthem は前の文のschedules(時刻表)を指していて、自分の移動日には乗車予定の列車が時刻表通りに動くかどうかを確認するように勧めています。

この文章は時刻表の裏表両方の下部に赤い大文字で書かれているため、いやでも目に入ります。読んで意味を理解してもまあ一応念のためにこう書いてあるんだろう、と思われるかも知れませんが、そうでもないのです。同じような文章でよく...shcedules are subject to change without notice (予定は予告なく変更される可能性も多分にある)という表現も見られます。日本では時刻表通りに列車が運行しないのは一大事ですが、英国ではむしろ始発から終電まですべての列車が予定通り1分違わずに動くほうが奇跡、と言っていいほどなので、この注意書きは決して軽く見てはいけないのです。大きなターミナル駅のプラットフォームの入り口の上には空港のロビーにあるような大きな時刻表があって、常にカシャカシャと入れ替わって各列車の情報を表示しています。どういう理由でこれほど変更が多いのか詳しくは分りませんが、発車番線が変わることなどはいつものことだし、目的地が変わって途中で乗り換えなければならなくなったり、あっさり「◯時◯分発◯◯行き:CANCELLED」などということも珍しくはありません。というわけで時刻表の下には常に大勢の旅行者が立ち尽くしたり座り込んだりして、文句も言わずにひたすら自分の列車の情報が出るのを待って一様に上を見上げ続けています。2つ目の文の最後に「旅行日の前に英国国内で確認」とあるのはこういうわけで、時刻表は目安程度に考えて最新の情報を現地で確認するのがもっとも安全、ということなのです。とは言っても、結局当日に時刻表を見上げながら立ち尽くすことにはなるのですが。目立つように書いてある文章にはそれなりの理由があるのですね。

15/10/2000


「わが心のフィレンツェ」(8/10/2000)

I lost my heart in Florence

...The city continually takes your breath away when you least expect it.
I love it because it is incredibly beautiful and unspoilt,
yet you don't feel that you are in a museum.
And, like other Italian cities, it's very stylish.


「わが心のフィレンツェ」

この街はいつでも、一番思いがけないときにはっとさせてくれる。
わたしがこの街が大好きなのは、驚くほど美しく時代に毒されていないにも関わらず、
博物館にいるような気分にはならないからだ。
そして、イタリアのほかの都市と同じように、ここもとても流行には敏感なのだ。


extract from a travel guide by Sarah Dunant on The Guardian website Travel section, Saturday Sep.23,2000.

The TimesやIndependent紙と並ぶ英国の新聞「ガーディアン」紙のウェブサイトの旅行ページに載った、イタリアはフィレンツェの街に関する記事の抜粋。ガイドというよりはエッセイ風に書かれているので、普通のニュース記事や広告とも違って「簡潔に短く」する代りに、ちょっときれいで聞き心地のいい単語や表現を使って興味を引き付けようとしています。
takes your breath away / when you least expect...のyouはこの場合特に「あなた」というわけではありませんが、しいて言えば「わたしもそうだからあなたもきっとそう」という一般的な意味に使われています。「わたしの」と言わずにyouを使うことで読者にただ漫然と文を読ませず、自分の世界に引き込もうという意図とも取れます。このあとの文でも自分自身の感情を述べるI love it 以外はyouを使い続けています。
2つ目の文の後半のyetは「(前の文で述べたこと)にも関わらず、それでもなお」。似たような単語でstill(それでも)などに置き換えも可能ですが、yetのほうがやや勿体ぶった感じで印象が深くなり、文が引き締まります。本文中に出てくるit は最初の文の一番最後のit(=はっとさせられること)を除けばすべてこの文の主題、The city(=フィレンツェ)を指しています。
この文章のあとにもフィレンツェの紹介文は続きますが、筆者は最後まで具体的にここを訪れるべきとか見どころはどことかいうことは述べていません。むしろきれいで歯切れのいい表現や文章で自分が見た街の魅力的な雰囲気を現して、読者の想像力をかき立て興味を持たせようとしています。

タイトルのI lost my heart...は「フィレンツェの魅力に心を奪われてしまった」とでも解釈すればいいでしょうか。"I lost my heart to her."と言えば「僕は彼女に恋してしまった」となります。 take one's breath awayは「はっとさせる、驚いてあぜんとさせる」。息をするのも忘れるほど驚いて「息を持っていかれてしまう」という感じでしょうか。映画「トップ・ガン」の「愛のテーマ」のタイトルもそのまま"Take My Breath Away"でした。あまり悪い状況では使われないようです。"She took my breath away with her elegant dress."「彼女の優雅なドレス姿に僕は息を呑んだ」など、なかなかきれいな表現。spoilは「だめにする」特に「(子供などを)甘やかして増長させる」という意味あいがありますが、観光地はえてして至れり尽くせりに整備され過ぎたりもっと客を呼ぼうとして街全体が安っぽいコマーシャルに甘んじたりしがちなことから、ここではそういう俗っぽい観光化に「毒されていない」という意味でunspoiltを使っているようです。stylishはカタカナ英語でもよく使われますが、この単語の場合は日本でも大体原語と同じ意味で使われているようです。

8/10/2000





「日曜日の空模様」(30/9,2000)

Sunday
Many parts starting dry with bright or sunny spells but showery outbreaks of rain, perhaps thundery, in the far west are likely to edge slowly and erratically east.


日曜日
多くの地域で雨が上がりはじめ、しばらくの間晴れ間が見えるが、最西部にあるおそらく雷を伴う
断続的な雨の範囲がゆっくりと不規則に東に移動する。



from UK Weather forecast on BBC Online, by Peter Gibbs, 23 Sep.2000.

英国BBC放送のニュースサイトに載った英国内の気象予報です。日本の天気予報でも「東の風、晴れときどき曇り」などというように、大切な情報だけをすばやく伝えるため文章は短く、省略できるものはできるだけ省かれています。前半の文は=Many parts are starting to be dry、文末のeast の前にはtowards (...のほうへ)などを補うとわかりやすくなります。but以降の部分はいくつも挿入があるためわかりにくいかも知れませんが、showery outbreaks (of rain, perhaps thundery, in the far west) are...とすれば文型が見えてくると思います。前半は(前日の)雨が上がって晴れるという情報、後半はまた雨が移動してくるという情報を一つの文のなかに詰め込んでいますが、butを見逃さなければここからまた新しい話題が始まっているのがわかります。

英国の気象予報の単語の使い方は、おそらくちょっとユニークだと思います。dry はこの場合空気が乾燥しているとかいうことではなく「雨が降らない」。曇りの場合も雨さえ降らなければa dry day です。同じように"It will be a wet day tomorrow."と言えば「明日は雨でしょう」となります。spellは「しばらくの間、ひと続き」。shower は辞書には「にわか雨」などと出ていますが、英国の場合(強い弱いに関わらず)大抵の雨はあまり長く続かずさあっと降っては雲間から陽射しがさし、またそれを一日に何度か繰り返すことも多いので、日本の一度強く降って終わるにわか雨とはちょっと違う感じ。ここではshowery outbreaks of rainと言っているためわかりやすいですが、上記のような雨の場合大抵は単にshowerとだけ使います。ちなみに一日中ずっと降り続く場合はrain を使うようです。よくこの国は一年中雨ばかり降っているように言われますが、上で書いたように日本で「明日は雨」と言った場合に連想される終日降り続くような日はあまりなく、またヨーロッパは全体的に空気が乾燥しているため、雨が降ってもそうじめじめした感じはありません。英国では「一日のうちに四季がある」と言われるように目まぐるしく天候が変化して、朝晴れていてもいつの間にか雲が出てきてざあっと雨が降り、また青空が広がるということが珍しくないため、気象用語の使い方もちょっと独特なのだと思います。

30/9/2000



「じゃがいもの保存法」(24/9,2000)

STORING POTATOES

Storing potatoes in the fridge converts their starch into sugar and ruins the texture.
Best to keep them at room temperature - and only buy as many as you can eat within a few days.


じゃがいもの保存法

じゃがいもを冷蔵庫で保存すると、でんぷんが糖分に変化して本来の食感が損なわれてしまいます。
室温で保存するのが一番。買うときには数日で食べきれるだけの量にしましょう。


by Mr. T. Reading on "Tips" page in BBC Good Food magazine, October 1999 issue.

料理雑誌に載った読者投稿の「料理の秘訣」。最初の文は人を主語に据えると少々長くややこしくなるところを簡潔にすっきり書くため、「じゃがいもを冷蔵庫に保存すること」という行為そのものが主語になりいわば擬人化されて、じゃがいもの成分を変質させる、という形になっています。次の文はBestの前にit isが省略。文の後半(only) buy...は中学校などでは「...しなさい」と命令の形に訳されますが、よほど強い調子や威圧的に言わない限り(または親などが子供に言う場合を除いて)、普通この手の文はいきなり"Do this."と言っても「命令」というより提案やアドバイス、説明的な言い方として捉えられます。ウェブサイトの案内などで日本語では「...してください」と書かれているところも、ほとんどの場合この形で書いてしまってまず問題ありません。ただし「〜してくれますか?」という依頼の意味が入ったり相手に何らかの手間を取らせることを期待する場合(サイトへのアンケートを求めるとか)はpleaseなどをつけないと無礼な場合もあります。

この記事は"Tips"と題されたページに載っていました。tip は「ちょっとしたコツ、日常生活で知っていると役立つちょっとしたこと」という意味あいでよく使われます。fridge は=refrigerator、冷蔵庫のこと。ネイティヴの人もやはり長たらしい単語は言いにくいと見えて、特に英国の場合会話ではほとんどこちらを普通に使うようです。ruin は「破滅させる、荒廃させる」という凄まじい意味だけでなく「だめにする、使い物にならなくする」という意味で幅広く使われます。(例:"You ruined the party."「あなたのせいでパーティが台なしよ」とか)texture は生地などの織り方やきめ、風合いのほかに食べ物の歯触り舌触りを表現するときにもよく使います。"This chocolate has a creamy texture."「このチョコレートは滑らかな舌触りだね」などというふうに。as...as は「...だけ」とこれだけ訳してもよくわかりませんが"Take as much as you like." (食べ物などを)「好きなだけ取ってね」 "Can you come as far as the station? Then I'll come and pick you up." 「駅まで来られる?それなら迎えにいけるから」など実にさまざまな場面で使えるので、とても便利な表現。


〜 Q&A 〜

Q: 最初の文を人を主語にしたらどうなる?

A: いくつか書き方はあると思いますが,
If you store potatoes in the fridge their starch will turn into sugar and the texture will be ruined.
これで書いた場合細かく分けるとif you...のyou、their(じゃがいもの) starch will...のstarch、texture will...のtextureとそれぞれ3つの違った主語が出てきてしまうことになります。主語をyouで一貫させようとすると

If you store potatoes in the fridge you will turn their starch into sugar and (you will) ruin the texture.
といちいちyouを思い出させないといけないのでうるさい感じになるし、実際に人が冷蔵庫の中で細工してでんぷんを糖分に変質させるわけではないので何となく妙な文になります。

24/9/2000







「おいしいリゾットを作るには」(9/17,2000)

IT TAKES TIME TO MAKE A GREAT RISOTTO.
12 MINUTES TO BE EXACT.


おいしいリゾットを作るには時間がかかります。
正確に言えば12分。


from "Riso Gallo" advertisement on Waitrose Food Illustrated magazine, March 2000 issue.

水を加えてかき混ぜるだけでできるという、インスタント・リゾットの広告文。広告文はぱっと見て強い印象を与えなければ見過ごされてしまうため、できるだけ短く、かつ分りやすいものでなければいけません。この広告は料理雑誌に載っているものなので、読者は当然多かれ少なかれ料理に興味のある人。リゾットを実際に作ったことがあれば材料を刻んで、スープを作って、お米を炒めて...となかなか手間と時間がかかるのは承知しているし、そうでなくてもできあがったものを見たことがあれば大体想像はつきます。ここでは最初に「おいしいリゾットには時間がかかる」と当たり前の事を言っておいて、すぐ「12分」と続けることで「え、それだけ?」と興味を持たせ、読者の注意を商品に引き寄せようとしています。広告の手法としては常套的ですが、実際効果的。

後の文はTo be exact, (it takes) 12 minutes.でも同じですが、英語では基本的に大切なことは先に述べるのと、文章をできるだけ短く簡潔にして一目で目に入るようにするにはこちらのほうがずっと効果的です。逆に日本語では最後に「決め」の言葉がくるほうが印象が強くなります。
take time は「時間を取る、かける」。例えば誰かと外出するときに、まだ用意ができていなくて焦っている友人に"Take time."と言えば「急がなくていいよ、ごゆっくり」という意味になります。

17/9/2000

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