椿貝塚

(No.21/1999.6.9)宮城県亘理郡亘理町上郡字椿

 阿武隈丘陵の北端を迂回した阿武隈川は宮城県南部の亘理町で太平洋に注ぐ。 椿貝塚はその阿武隈山地の北端部にあり、阿武隈川からは約2キロメートル、海岸線からの距離は約6キロメートルで、麓が東の平地に達する地点に位置する。
周辺の標高50メートルほどの台地には中期の遺跡が点在する。特に北に対面する台地上には八ツ入遺跡があり、未調査ではあるが広範囲に遺物の散布がみられ、大集落跡の可能性を秘めている。
椿貝塚は北東に張り出した標高13メートルの低丘陵にあり、斜面周囲を馬蹄状に150メートルから100メートルの範囲で貝塚が認められる。 戦後何度か小規模な調査が行われていて、丘陵上に溝やピットの遺構が確認されていた。 昭和48年この丘陵を両断する町道工事のため事前調査が行われている。 貝塚の主体はシジミでカキ、はまぐり、ウミニナ、アカニシ、オオノガイ、アサリを少量含む。貝層は表土下40センチメートルに70〜80センチメートルにも達し、晩期後半大洞A′の遺物が、また貝層下の黒褐色土層からは大洞C2の遺物が出土している。 この調査で丘陵上からは後期後半の竪穴住居跡が見つかっている。
貝塚の現状は耕作地である。町道斜面には貝殻が散乱し時より土器片が見られる。 椿貝塚は後期後半から晩期末にかけての良好な遺跡であり、土器などに優れたものが有る。出土品は亘理町郷土資料館で見ることができる。

■参考文献■
「亘理町史」上巻