まりの麻雀日記


第5話「タケモトのおやじ」

同巡ロンだのジュンカラリーチだの罰符の限りを尽くしている私。 勘のいいあなたならもうお気づきの事と思いますが、 ノーテンリーチはお約束。 フリテンもお友達。誤チー、誤ポンも大親友。 そんな私を見かねて、プレステじゃない本物の麻雀を教えてくれる人物が現れたの。

毎日通ってるうちに顔見知りになった、 「タケモトのおやじ」と呼ばれている常連のお客さん。 このおじさん、どっからどー、ひいきめに見ても素人には見えない。 風貌がヤバイ。

いまどきパンチパーマに派手なセーター。手には金のロレックス・・・麻雀は鬼のように強い。 私が負け込んで、いつものようにウルウルと涙目で打っていたら、いつのまにか背後に椅子をもってきて座って指導しはじめた。

ホラ、なにしてんだよ!
そこは右から2番目を切るんだよ!
オラ!ポンだよ、ポン!

とか怒鳴りながら椅子の背もたれにケリを入れる。 怖い......。 ツモれないと「このアホガキ!」と吐き捨てる。 怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い......。

私はビビりながらも、タケモトのおやじの指導の元、日々上達して、 なんとか人様に迷惑をかけない程度に打てるようになってきた。 まー、ほとんど麻雀二人羽織状態だったけど。 基本の役とかスジとかカベとか引っ掛け(これはヨケイだと思う)なんかも全部、タケモトのおやじが教えてくれた。点数計算だけは、「人間になったら教えてやる」と、意味不明な事を言われたけど。

結局、タケモトのおやじは私に点数計算を教える事なく、 他のお客さんとのケンカが原因で店を出禁になってしまった。

でも私にとっては先生だったから今でも感謝してるんですよー。ホントに。 勝った時に「ワシのおかげだよな」と言って勝手に私のチップでビール飲んだりするのだけは、 やめて欲しかったけどね。競艇場のコーチ屋と変わらないじゃないのー。