産地訪問記 1999.4.18
滋賀県甲賀郡信楽町朝宮



 今回は、「朝宮茶」のお茶生産者「かたぎ古香園」片木明さんの茶畑、工場、倉庫の見学とお茶に関するいろいろな話を伺いに、自然食品店や自然食レストランの方々 約40人で訪問することになりました。片木さん宅の信楽町は、滋賀県の南部に位置し、京都府と三重県に接する標高400mの山間の地です。春はすがすがしい季節なのですが、この日は明け方より小雨が降り続くあいにくの天気になってしまいました
 


 今回の集合場所は立木観音駐車場でした。伏見からは20分ほどですが、宇治川の上流であるこの辺りは、水はきれいで流れはとても速いです。兵庫、奈良、滋賀京都の各方面より約10台の車で集合しました。

朝宮茶の片木さん宅と工場朝宮茶の片木さん宅の写真

 集合場所より山間の細い道路を進み、ここより信楽町の標識があると極端に道がきれいになりました。すると、すぐのところに かたぎ古香園の看板が見え、片木さん宅に到着しました。大きな3階建て倉庫の左にお店と展示場、その左に旧家と新築の大きな家が二件並んでいました。
 倉庫の1階が20帖ほどのホールになっており、畳が敷き詰められてテーブルなども用意されており、みんなで お茶に関するお話を聞きました。

片木 明さん朝宮茶の片木さんの写真

 まずは、お茶の歴史から話が始まり、世界のお茶、日本のお茶の種類、そして、信楽町朝宮の地の気候風土や昔からのお茶作り伝統、片木家6代目としてのお茶作りへと話は続きます。
昭和50年に消費者の方々の直接顔を見て取引するのをきっかけに、自身の農薬害などもあり 無農薬茶に挑戦が始まったそうです。まる3年間はまったくだめ、周囲からの非難ばかり。その後、害虫の天敵であるクモやテントウムシの発生による自然の力で徐々にお茶が出来あがったそうです。

片木さん宅前の茶畑朝宮茶の片木さんの茶畑の写真

 今回の参加者の皆さんと近くの無農薬茶畑の実際を見しました。
裏山には広い茶園があるそうですが、雨のために近くの茶園へ歩いて見学し、現在のお茶の成育状態、天候の予測、温度の管理や霜など、すべて自然が相手なので大変なのがわかりました。茶葉は80%が水分で、残りの部分がお茶として出荷されるので農薬や問題のダイオキシンなどかなり多くが残留します。洗う事もなく、お湯に抽出して食するのでもっとも注意したい食品のひとつです。
 畑の間には除草と肥料とをかねて わらを敷き詰めてありました。この畑は二人で機械刈りが行われているためきれいに整えられており、少しずつ芽が伸び始めています。この地区では標高が高いため、まだまだお茶摘みは始まりません。片木さん宅の裏には、整木されていない茶の木があり、熟練された方が手摘みして品評会などに出される特別のお茶の木だそうです。

片木さん宅での昼食会
朝宮茶の片木さん宅での昼食会の写真A    朝宮茶の片木さん宅での昼食会の写真B

 昼になり、用意されたおにぎりや料理で昼食会が始まりました。
 昼食会中も遺伝子組換え食品についてのビデオが上映され勉強会でした。わいわいがやがやとしていた子供たちも お腹がふくれるとようやくおとなしくなってきました。

片木さんたちの製茶工場朝宮茶の片木さんの製茶工場の写真

 続いて朝宮の共同製茶工場を見学しましたが、この地域では今はまだ茶工場は稼動していません。現在、十数名の共同で使用している製茶工場で、ここで朝宮茶が一連の工程を経て出荷される前の大きな紙袋に袋詰めされます。かなりの量が作れる機械のラインですが、奥にもうひとつのラインがあり、さらに最新鋭の機械が今年も新たに導入されるため、機械の設置作業が急ピッチで進められていました。5月の始めからの約2ヶ月間はフル回転で動くそうです。

朝宮茶について
信楽町朝宮には、1200年の昔、伝教大師が中国から薬としてお茶の実を持ち帰り、この地に植えられた事が始まりとされています。特に、お茶の香りは恵まれた気候風土のおかげで日本屈指とされ、広く茶人に愛好されています。
お茶の種類
  1. 煎茶・・・生産者が作った荒茶を精製して、茶葉だけをきれいに仕上げたもの。
  2. カリガネ(茎茶)・・・煎茶を仕上げるときに茎だけを抜き出して出来たお茶。
  3. お抹茶・・・お茶の新芽に黒い覆いを20日ほどかけた後に収穫し、加工したものを碾茶いい、それを時間をかけて石臼で丁寧に挽いたもの。
  4. 番茶・・・新芽以外(春番茶、秋番茶)の堅くて分厚い茶葉を収穫し加工したもの。
  5. 焙じ茶・・・煎茶、カリガネ、番茶などを遠赤火入れや直下ドラム式で炒り揚げた者。
  6. 玄米茶・・・上記の原料に炒った玄米を何割かまぜあわせてたもの
お茶の成分とその効能
  1. ビタミン類が豊富で、葉緑素のビタミンA、多量のビタミンC、老化を予防するビタミンEが含まれます。
  2. カフェインが含まれ、疲労回復や眠気防止の効果があります。
  3. 含有されるフッ素は、歯の表面を強くし,虫歯になり難くします。
  4. 含有されるカテキンは、コレステロールの増加を抑制し、動脈硬化や心筋梗塞などの予防効果があるといわれています。
  5. また、カテキンは、食中毒等を防ぐ強い殺菌効果があり、最近ではガンの予防効果もあるとの発表され注目を集めています。
  6. ノンカロリーで、運動前後に飲まれるとダイエット効果を高めます。
朝宮茶の入れ方
  1. 沸騰したお茶を70から80度にし、お茶碗に8分目ほど入れます。
  2. お茶の葉を5人分で約10g(大さじ2杯)を急須にいれます。
  3. お茶碗のお湯を急須につぎ、一分ぐらい待ちます。
  4. お茶碗に回し継ぎし、最後の一滴までお茶を絞りきってください。
お茶がらの効果
  1. お茶がらの中にはビタミンA、Eが含まれていますので、天ぷらやおしたし等、食べるお茶として使えます。(無農薬茶に限ります)
  2. 肥料成分がありますので、植木や盆栽などに施して下さい。
  3. 乾かしてガーゼに包んで冷蔵庫の脱臭剤にでき、鍋で炒ってお部屋の悪臭取りにも効果があります。
片木さんからの一言
 お茶は私たち日本人の生活に密着し、昔からの飲み物だけにあまりにも身近にあり過ぎて、お茶そのものの本質を忘れてしまってはいないでしょうか。

 現在はすべてのものに合理化が図られ、生活も多様化し、食生活についても大きく変化しつつあり、いわゆる調理済み加工食品の台頭などにもその姿を見ることが出来ます。

 農作物の分野についても、出来るだけ早く 見かけの良いものを作ろうと、農薬や化学肥料の大量使用が必要となってきます。

 そんな中 私は、毎日愛飲され生活に欠くことの出来ないすばらしい特性を持つお茶を安全で且つおいしいお茶にするために、先人が築き 伝えた自然な栽培に回帰して、自分自身が納得できる本物のお茶づくりを目指して完全無農薬のお茶作りに取り組みました。

 長年の間、害虫や病気に苦しめられる苦労がありましたが、天敵であるクモやテントウムシ等の自然の力により、すばらしいお茶を作ることが出来ました。

 この経験を基にして、日本中のお茶の生産農家に働きかけ、どこで誰が買っても、安心して飲んでいただけるお茶作りを進めていきたいと思っていますので、皆様のご支持をお願い申し上げます。


このページのトップへ 上ページヘ
バックへの絵
前のページへ
ホームへの絵
ホームヘ
次への絵
次のページヘ