

彼女は、何時の間にか、朝、一番に籠から出して遊んでもらう事が、日課になっていました。
こちらの、都合なとまったくお構いなしで、毎朝「フィーフィー」と出してもらえるまで、
玄関でなき続けるのです。
けして、途中であきらめることなく、ひきつけを起こしそうになるまで、やめません。
たいした根性です。
すぐ出してやれる時はいいのですが、出せない時は同じ「フィー」でも、
だんだん切羽詰って声が裏返ってしまいそうな、そんな鳴き方になって来るのです。
かわいそうでした。
あの訴えるような鳴声、今も耳から離れません。
でもすぐに出してやれる時は、洗濯バサミで扉をとめるまもなく、さっさと私の肩へとまって、
一緒に「おはよう。」ってリビングへ行くのです。



ここで一つ、チーの得意技を披露しましょう。
゛キツツキ゛の芸です。
大概、この様に朝出してもらえると私にくっ付いて、リビングに行くのですが、玄関が大好きなので、
途中でするりと降りてしまい、いくら呼んでもついてこないことがよくありました。
そんなときは「あっそう。じゃあバイバイ。」と置き去りにして、
リビングの戸も閉めて知らん顔しておきます。
するとしばらくすると、戸の淵にしがみついて、トントン、トントンって。
擦りガラスに黄色い影が映ります。
リビングの戸はドアではなく、日本式のガラス戸になっているので、そのさんにとまるのです。
そして「入れてよトントン」とばかりにガラスをつつきます。
それで、戸を少しだけあけ、手を出すと、大嫌いな筈の手にさっと乗って来るのでした。
大嫌いな手にです!!
この手に乗ればみんなのいる部屋に入れるって事をちゃんと理解しているのでした。
なんて賢いのでしょう。
この業はすごいだろうと、自慢してもよかったのではないでしょうか。
ビデオがあったら、テレビ番組でも出したのにとよく思ったものです。
しかし体が弱った時に、この芸が一番最初にできなくなってしまいました。 (関連: ひとつの選択日記)