更新2014/06/09「ことば・言葉・コトバ」Blogことば・言葉・コトバ
朗読者への批評
 さまざまな人が朗読・語りなどの活動をしています。いい表現とはどんなものでしょうか。これはわたしの批評の試みです。このほかに「朗読批評」もあります。
順  読み手 批評とコメントおすすめのよみ
別所哲也朝のJ-WAVEの放送で聞いているが、日本語のイントネーションが実に正確である。だから、情報が明確に浮き上がるのだ。これが朗読の表現で生かされたらすばらしいだろう。 
貫地谷しほり映画『青空のルーレット』で聾者の役をしたとき手紙のよみがよかった。ナレーションをやらせても素晴らしい。 
浅利香津代斎藤隆介作品集では、会話の語りである「花咲き山」や「八郎」で秋田なまりがよく生かされている。しかし、「ベロ出しチョンマ」のような語りの影の薄い作品では語り口が生きないのが残念だ。花咲き山/ベロ出しチョンマ/天の笛/三コほか(1990/リブリオ出版)
石坂浩二ナレーションはなかなかいいのですが、文学作品のよみとなると、もったりした感じでいかにも朗読という気がします。 
宇野重吉「語りきかせ」と称した民話のよみがすばらしい。舞台のセリフとよみのセリフとのちがいが区別されているし、人物の声のリアリティがみごとです。木下順二『かにむかし』ソノシート付(1968/風濤社)
江守 徹講談調の調子の強いよみです。新潮カセット文庫では「山月記」をよんでいます。時代物にいいでしょう。  
岡部政明新劇俳優の出身です。ずいぶん前からドキュメンタリー映画のナレーションをやっていました。ナレーションでは第一人者です。張りのある声の堂々たるよみかたには定評があります。  
荻野目慶子江戸川乱歩「人でなしの恋」がよかった。語り口の表現力、地の文と会話のバランスなどがいい。ところどころ注文をつけたいところもあるが、最後まで聞かせます。太宰治の女性の語り物などもよんでほしい。「人でなしの恋」江戸川乱歩・作(2001/1/3NHKラジオ放送)
加藤道子森繁久弥とコンビでラジオ番組をもっています。演技に近いよみ方です。老年の女性はいいのですが、甲高く表現する若い女性の表現には、やはり隠せない年齢を感じてしまいます。 
岸田今日子吉行和子と二人が続けてよむのを聞きました。地の文のないセリフの独白は個性的な芝居でした。独特の低音の声は好き嫌いの分かれるところです。「ヴィヨンの妻」は早すぎますが聞かせます。太宰治・ヴィヨンの妻・文芸カセット(1988NHK・岩波書店)
草野大悟新潮カセット文庫の井伏鱒二「乗合自動車」を読んでいます。以前にNHKラジオで長期によんだ夏目漱石「こころ」は、ややテンポが速いもののじつによかった。わたしが第一に好きな朗読者ですが、残念なことに故人です。井伏鱒二・乗合自動車/新潮カセット文庫
黒柳徹子自作自演とはこの人の作品にこそ言えそうです。自作以外を読むイメージは浮かびません。早口ですがその明晰さにはおどろかされます。  
幸田弘子樋口一葉を十八番(おはこ)にしています。目で読んだらよみにくい一葉の作品を聞いてわかるようによむのはさすがですが、地の文が朗読調で会話はお芝居風というくっきり二分される表現は深みを欠きます。 
小林綾子「おしん」の子ども時代を演じた俳優です。NHKテレビの金子みすゞのドラマで詩を朗読しました。はじめは、ちょっと幼稚なたどたどしい読み方だと思いましたが、しだいに金子みすゞの作品をよく表現していると思いました。小説のような作品の読みではかなりの勉強が必要な気がします。 
篠田三郎「伊豆の踊子」 を聞きましたが、優等生のよみという感じです。とにかく、速すぎて間(マ)がありません。場面もうかんできません。会話もあまりじょうずではありません。女性にとっては甘い声が魅力ということになりそうです。 
白坂道子古典の朗読などでは、そのおどろおどろしい感じが独特の効果を持ちます。女性には珍しい低音です。この個性も好ききらいが分かれるでしょう。 
鈴木瑞穂張りのあるいい声です。ナレーションでなじみでしたが志賀直哉「赤西蛎太」を聞いて感動。自然な会話と地の文の文章の構造をしっかりと読み分けています。格調ある落語という感じです。かつて舞台で聞いた小熊秀雄の詩の朗読は記憶にあります。志賀直哉・赤西蛎太/1989文芸カセット/NHK。夏目漱石/夢十夜/新潮カセット文庫
段田安則FM放送で読んだ夏目漱石「草枕」がすばらしかった。無理をしない地の文のよみ、それと解け合った人物のセリフが自然で聞きやすかった。 
寺尾 聡NHKテレビ「星の王子さまに会いに行く」のナレーションを聞いて、感動してしまいました。自然で耳障りのいい、あたたかい心の伝わるよみです。この人なら、何をよんでもらってもいいという気がします。父・宇野重吉の血が感じられます。  
寺田 農この人の特徴は文節の終わりの母音をのばして上げるところにあります。俳優の朗読調によくありがちな傾向です。  
徳川夢声ずいぶん古いひとですが、ラジオ放送の録音などで聞くことがあります。聞いていて、あれっと思うほど間(マ)をたっぷりととった個性的なよみです。活動弁士の経歴がよく出ていると思います。 
中村梅雀NHKTV幸田文の家族を扱った番組(2003.1.2)でよんだ幸田露伴「五重塔」「幻談」は作品の内容をつかみ格調の高い文体を表現したすばらしいものでした。 
萩原聖人NHK教育TV「にんげんゆうゆう」(2002.5.6)で鷺沢萌「故郷の秋」をよみました。在日の主人公の語りの自然でリアルなよみが感動的でした。 
橋爪 功甲高い鼻声の喜劇的なよみ方です。NHKラジオで長期に「三国志」をよみました。好き嫌いが分かれそうです。  
平野啓子「語り」を自称するものの、ひそひそとしたひとりごとのようです。作品の展開が一本調子で魅力に乏しい。ところどころで声が裏返ることがある。語り手と人物の表現に深みがない。 
牟田悌三この人の朗読は自然ですが、声もよみ方も似た寺田農になるとアクが強くなります。 
松本典子民芸の出身の女優です。太宰治「皮膚と心」の女主人公の語りを聞きました。テンポが速すぎて、感情の波で読みふせているかたさがあります。 
森繁久弥ラジオで長期にドラマをやっていますが、どんな人間をやっても自分自身の個性でねじ伏せるアクの強さがあります。 
森本レオ息を吸い込みながらよんでいるような声です。優しい感じの声です。でも、ひよわだなという感じもします。  
山本 圭寺田農とならんで、いわゆる新劇調というようなクセのある朗読をする人です。 
吉永小百合原爆の詩の朗読活動を続けています。さすがに詩の内容を理解した表現になっていますが、独特の思い入れのあるようなセリフ回しに特徴があります。その調子と作品が合ったときには感動的な読みになります。大平数子「慟哭」の朗読はじつに感動的です。 
吉行和子ご存知、淳之介の妹。舞台でセリフの朗読を聞きましたが、やはり芝居でした。でも、太宰治「灯籠」「葉桜と魔笛」女の語りの朗読は魅力的です。太宰治・灯籠/葉桜と魔笛・文芸カセット(1988NHK・岩波書店)
渡辺 篤ナレーションでよく登場しますが、今にも何かおこりそうというような読み調子が気になります。スリラーものなら向いています。