『え〜〜〜〜〜〜っ!』
私の言葉に、ブリッジの皆さんが一斉に声を上げました。
どうやら、理解して貰えなかった様ですね。
仕方がありません、もう一度言いましょう。
「ナデシコBは、ネルガル会長直々の命により、ただ今よりハイパードライブの耐久稼働実験の為、火星軌道の外周へと向かいます。出航は標準時間で四〇時間後です。各員持ち場において各種動作・機材のチェックをお願いいたします。それと長期航行が予想されますので、物資の買い付けと搬入をお願いいたします」
私の言葉を聞いて、皆さん先程の言葉が冗談でも嘘でも無いことを理解してくれた様です。
尚、会長直々とわざわざ付け足したのは、現場の不満を私にではなく、この場には居ないアカツキさんへ向けるためです。
時にはこういった人心掌握も必要なのが、中間管理職と言うものです。
「……三郎太さん、復唱」
「りょ、了解。ナデシコB、ハイパードライブ耐久実験の為の準備に入ります」
三郎太さんの声が終わると、艦内は一気に慌ただしくなりました。
何しろ地球火星間の往復だけの予定が、いきなり延長ですからね。
もっとも会社から特別賞与が出る話をしたら不満は殆ど聞こえなくなりましたけど。
プロスさんはこの場に居なくても、人心掌握がお得意ですね。
「物資ってよ……火星の食い物も含まれるんだよな。暫くあれを食わなきゃいけないのか?」
リョーコさんの不安に関しては私も賛同します。
ナデシコ食堂の皆さんに期待するしか有りませんね。
「では、メインスタッフは三〇分後第一ブリーフィングルームへ集合して下さい」
私はそう言いうと、キャプテンシートに座り、オモイカネと艦内の整備状況のチェックを始めました。
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