機動戦艦ナデシコ 〜パーフェクトシステム#23〜







「何だか最近、妙に忙しいと思わないかい? あ、知ってるかな? この世の中には労働基準法っていう法律があってさ、労働者は一日に拘束される勤務時間が決められているんだよ。労働者の体調を守りつつも労働意欲を高める素晴らしいシステムなんだけどさ……」
 ネルガルの会長室で、アカツキは隣に立つゴートにそうこぼした。
「仕事が忙しいのは、我が社の業績が順調である証では?」
「それに会長は雇用者であって労働者ではございません」
 ゴートが彼らしい無骨な返答をよこし、前に立つプロスがぴしゃりとたしなめると、アカツキはつまらなそうに髪の毛を掻き上げ、本皮製の椅子へと深く腰掛けた。
「君達は相変わらずだねぇ。まぁ君達にこんな事を聞いた僕が悪いんだけどね……。そういえばミスター、ルリ君とザカリテ首相の会談はうまくいったかな? まさか先方を怒らせる……なんて事はないよねぇ」
 今の火星市場に魅力は無いが、政情が安定すれば大きな市場に化ける可能性はあるし、その時の事を考えて政府首脳の心象を悪くするのは避けておくべき事だ。
「そうですなぁ。ルリさんのポーカーフェイスは交渉の席では結構役立つと思いますし、彼女は統合軍のお偉方やら、連合政府の高官やらとの交渉した実績もおありですし……さして問題は無いと思いますが」
「あ、そーいえば、もうすぐ草壁の死刑執行だよね? 先々月の南雲の決起……あれ以降残党軍に目立った動き出てない?」
「スプリガンのGS艦隊に一方的に打ちのめされましたから……流石に懲りていると思います。どちらかというと大規模なテロではなく、精鋭による阻止か救出作戦の可能性の方が高いでしょうな」
 新しい話題を出して何とか仕事をはぐらかそうとするアカツキだが、そんな彼の意図を読みとっているブロスは、にっこりと微笑みながら答えると、新たな書類の束を雇用主の机の上に置いた。
「……」
 机に積まれた書類の山に顔をしかめて、無言のままプロスの顔を見上げる。
 眼前に立つプロスは、上司の目を真っ向から受け止め、かつ笑顔のままで仕事を促す。
「全く……こんな時代なんだからさ、ペーパレス化をもっと推進すべきだと思うよ。資源の浪費も抑えられ、自然保護にも役立つし、社のイメージアップに繋がる。一石三鳥だと思うんだがね。あ、いっそIFS対応の書類決裁システムとか作ったらどうかな? 売れると思うんだけど」
「IFSを入れていらっしゃる会社役員は、恐らく地球圏で会長一人だと思います。よって需要は無いも同然ですな」
「……」
 プロスの非情な返答を聞き、アカツキは仕方なさそうに溜め息をついてから、書類に目を走らせ始めた。
「では、私は失礼いたしますが、しっかりと仕事の方お願いいたしますよ?」
 そう念を押したプロス退室し、扉がしっかりと閉まったのを確認すると、アカツキは手にしていたペンを無造作に放り投げ、その身を椅子へと沈ませる。
「あ〜あ、男に急かされた上に男の監視の元に仕事じゃ、はかどるものもはかどらなくなるね。……君もそう思わないかい?」
 その問いかけは背後に立つゴートへと向けられたものだ。
「……ミスターは月臣の抜けた穴を埋めるのに忙しい」
 ゴートの一言で、アカツキは表情を改め、しばし目を閉じてから切り出した。
「……そうだね。その事を考えると僕も頭が痛いよ。優秀なSS一人と引き替えに得た情報と言えば、あの場にオリジナルバイドが存在し、そして連中がバイドの制御に失敗したという事くらいかな。全く……割に合わないよねぇホントに」
「生き残った女性の証言は、それなりに有益だと考えますが……」
 アカツキの言葉に、ゴートは表情を変える事なく切り返す。
「そりゃあね。彼女の無事を残念だとは思わないし、彼女自身も頑張っているのも認めるけど、所詮は凡人だ。月臣君との価値を比べちゃうとどうしてもねぇ……。確かに研究所での体験談は何かと興味深いし、ドクターの研究にも役立ったみたいだけど、彼女自身が研究者というわけじゃないから、結局そこまでだろ? クリムゾン叩きに使うにしても、孤児の彼女では立場が弱すぎて、証言してもクリムゾンと州政府の癒着を認めさせるのは難しいだろうし……。やっぱ僕のこういう考え方って悪党だと思うかい?」
「……」
 ゴートは答えず、ただ経ったまま黙っているだけだった。
 どうやら自分が答えられる領分では無かったらしい。
「バイドか……ドクターの指摘通り危険な存在だね。月臣君の様な意志の堅い者ですら抑えるのが困難で、ドクターですら持て余していた攻撃本能。奴等ごときがその抑止に成功するはずもないか。
 月臣君の強襲がきっかけになってバイオハザードが起きたという事だけど、連中の乱雑なやり方を聞く限り、遅かれ早かれああなる運命だったんだろうな。
 それにしても……証拠隠滅の為に島ごと消すなんてさ、クリムゾンのやる事は相変わらず派手だね」
「月臣は今だ行方不明に過ぎない。CCを所有していた以上、一か八かのランダムジャンプで脱出している可能性もある。それよりも……今は眼前の業務を優先すべきだ」
 ゴートの言葉は、月臣がエチゼンとの戦いでCCを使い果たしていたという事実を知らないからこそ言えたものだが、二人ともその言葉が単なる希望的観測に過ぎない事は判っている。
「感傷に浸る暇すら与えて貰えないのかい? こんな事ならエリナ君にこき使われる方がまだ良いねぇ」
「愚痴なら後で幾らでも聞く」
 ゴートは上司に対するものとは思えぬ毅然とした態度で肩を掴み、先程放り出したペンを無理矢理握らせる。
「……はぁ。男に肩を掴まれても嬉しくないって」
 小声で文句を言いながら、渋々仕事に入るアカツキの机で、緊急の通信を伝えるアラームが鳴った。
 ピッという小さな電子音と共に、小さなウインドウが開き、情報の秘匿レベルが表示される。
 レベル6――会長と会長室警備部の責任者のみが閲覧可能な最高位レベルの通信だった。
 アカツキが無言で指を鳴らすと、ゴートが頷きコミュニケを使って会長室警備部に指示を出しはじめた。
 目には見えない部分で、各種電波のシャットダウンが行われ、攪乱の為のダミー情報が通常時に使用される回線に流され、待機中のSS数名が会長室の入り口、エレベーター前、屋上への非常通路へと配置される。
 先程退出したプロスが入室し、入れ替わりにゴートが退出、そのまま入り口の警備に当たった。
 プロスが隣に立つと、アカツキは専用回線のスイッチを入れた。
『アカツキ君? 私よ』
 ウインドウに映った人物、それはハチ研と呼ばれるネルガルの研究施設に居るイネスだった。
「おやドクター。今度は何を発明してくれたのかな? 出来れば即商売に転用できる技術だと嬉しいんだけど」
 アカツキの軽口を無視してイネスは話し始める。
『大事な用件が二つあるわ。まずバイド開発チームだったドクター・キュリアンが休暇が明けの今朝になっても出社ぜず、連絡も寄越さないわ。管理部の話では連絡も取れないって。アネットメイヤーの話だとクリムゾンの人体実験について嗅ぎ回っていたらしいから、嫌な予感がするわね。こっちで管理していたバイドのサンプルは全て確認済みだけど、もしかしたら独自に培養したバイドウイルスを所持している可能性もあるわ』
「そりゃ一大事だね……」
 まるで他人事の様な口振りのアカツキだが、言葉に反して表情はかなり険しい。
『出来るだけ急いで対処して。データは送ったわよ』
 イネスがそう言うと、新しいウインドウが開き、キュリアンの身辺データが表示される。
「なーんだか如何にもって面構えだねぇ。政権交代後、こういうマッドな学者は一掃したんじゃなかったっけ?」
「まぁ見た目が全てではございませんし……ナデシコの例を出すまでもなく、我が社は能力第一主義ですから……」
 キュリアンの顔写真を見てアカツキがぼやくと、背後のプロスが作り笑い気味に答える。
『普段は物静かな男だったわよ。もしかしたら体調不良の可能性もあるけど、関わっている物が物だけに社内規定は遵守されるべきでしょ?』
「オーケー。ミスター、直ちに手配して……最悪の事態も考えられる。月臣君の事例もあるし、それなりのメンバーに装備しっかりさせて派遣して」
「判りました。直ちに対処します」
 アカツキの言葉にプロスは頷いた。
『それからもう一つだけど、実はこっちが今回は本題よ。オペラ……覚えてるわね?』
「ああ、三年くらい前にウチが新たな遺跡発見を目指して大量に飛ばした無人探査機だよね」
 直ぐにそう答えたものの、アカツキは最近の業績好調を受けてその存在をすっかり忘れていた。
『正解。スキャンダルまみれで信頼がた落ち、他企業連合によるネルガル締め出しですっかり死に体寸前になったあの時、藁にもすがる気持ちで打ち上げたその探査機ね』
「ははは、手厳しいですなぁ」
 イネスの無遠慮な言葉に、プロスが乾いた笑いを浮かべる。
「で、そのオペラが何か見つけたのかい? 今更火星文明の遺跡や遺産を見つけられても、こっちとしては対処に困るんだけどね。何せ持ってるだけで犯罪者だ」
『これを見て……』
 イネスの言葉に続いて表示された映像を、二人は黙って食い入るように見つめた。
 写し出されたのは一枚の静止画像で、光学処理がされた後なのだろう、宇宙空間に黒っぽい物体が鮮明に浮かび上がっている。
「……これは?」
『つい一時間程前、オペラ三七号から届いた冥王星軌道外周にあるカイパーベルトの映像よ』
「ほぅ〜随分と遠くまで飛んでましたなぁ。で、これは……私では良く判りませんが……宇宙船ですかねぇ。スケールはどれ程でしょう?」
 腰を曲げて上半身をウインドウに近づけ、眼鏡をいじりながら呟くプロス。
『二〇〜二五メートル。私も専門家じゃないから詳しく判らないけど、攻撃的なフォルムをしてるから、戦闘用の宇宙機じゃないかしら?』
「戦闘機ですか……そう言われれば見えなくもないですが随分とボロボロ……傷んでますなぁ。私も詳しくは存じませんが、はて? 何処かで見た事がある様な気がしますね」
「ゴート君、入ってきてくれる? ああ、警備は他の者に任せて構わないよ」
 イネスとプロスが話している合間に、アカツキはドアの前で警備に当たっているはずのゴートを呼びだした。
「失礼……お呼びでしょうか?」
「ああ〜いいからいいから、こっち来てこれ見てくれるかな?」
 アカツキの呼び掛けに応じて、その横まで歩み寄ると、ゴートは目を細めてウインドウの中に表示された映像を見入る。
「……ん? これは以前ドクターの分析結果で見た、オリジナルバイドの中身……デスの想像図にどことなく似ているが……これを何処で?」
 ゴートの言葉にプロスは息を呑み、アカツキは目を鋭くして画面の中の残骸を見つめた。
『やっぱりそう思う? 私もまだ細かい分析はしてないけど、特徴的な機首部分とか驚くほど似ているわね』
「それで、ドクターはどう見る? もし同じ機体として我々はどうするべきだと思う?」
『同じ機体かどうか? という疑問に関しては棚に上げてもいいわね。重要なのは、この物体が太陽系の外側からこっちに向かってるという事。ボソンジャンプで跳んだのでない限り、地球人類以外の手によって作られた物である事になるわね。デスに使われていた謎のパーツ……あのブラックボックスを考えると、地球外の物、それも古代火星文明とは異なるテクノロジーである可能性が高いわ。ならば私達が今だ知らない未知のテクノロジーを内包している可能性もある。バイドとの関連も含めて好奇心は大いに刺激されるわね』
「この情報を知っているのは?」
『私とハチ研の当直オペレーター二名に貴方達三名の計六名ね。オペラ各機から送られてくる情報は暗号化されてるから、傍受されていたとしても、ネルガル以外で解析するのは難しいわ。ちなみにこの物体は解析の結果、第四宇宙速度の猛スピードで太陽目がけてまっしぐらに向かってるわ。土星と木星の現在地から考えて両惑星の重力に引っかかる事なく軌道を通過するから、確実に火星や地球付近まで来るわよ。だからいずれ政府や研究機構その他企業等、別の機関の探査機やレーダー、望遠鏡などでも見つかるのは間違いないわね』
 イネスはそう説明すると同時に、別のウインドウで謎の物体の予想進路と、ポイントごとの到達予想時間と、各惑星の位置を表示する。
 机に肘を載せて手を組んだアカツキは、しばしそのデータウインドウを見つめていたが、やがて決心をしたのか、プロスへと指示を飛ばす。
「ミスター、当直の二名に監視……いや、事が落ち着くまで適当な理由付けて隔離しておいて、研修でも特別休暇でも何でも良いよ」
「判りました」
「それから……確かナデシコBは火星に居たんだったね?」
「はい。ザカリテ首相と会談の真っ最中では」
「今の火星の位置からだと、地球から向かうより遙かに現場に近いね」
「ルリさん以下、乗組員の方々には特別ボーナスでも差し上げませんといけませんなぁ」
 アカツキの真意を汲み取りプロスが応じる。
「ところでコイツの名前……どうしようか? ”デス”だと別物だった時なんか間際らしいよね」
『それじゃ”バスティール”……そう呼称する事にしましょう』
 アカツキの冗談めいた発言に、イネスがそう提案をする。
「はて、どういう意味でしょうか?」
『”Vastian's Steel”偉大な鉄塊、もしくは誰でもない者による鉄塊という意味を縮めてバスティール。良い名前でしょ?』
 プロスの問い掛けに、イネスが含み笑いを浮かべてそう言い終えると、その名を気に入ったのか、アカツキが手を叩いて――
「OK。良いじゃないの。コイツはバスティールに決定という事で……ドクターにはコイツが届き次第解析に入って貰う。そうだね、バイドの二の舞にならないよう、バスティールの件はこの場に居る者以外一切他言無用とする。各自頭ん中に閉まっておくだけにして、コンピュータへの入力、書類への記入も厳禁だ。ドクター、火星に居るナデシコBに送る航海ルートと予想時間を算出したら、バスティールに関するデータ全部消しておいてくれる」
「仕方有りませんな」
「うむ」
『判ったわ』
 アカツキの言葉に三人が頷く。
「それじゃ、早速ナデシコBには飛んで貰おうかねぇ。丁度ハイパードライブも積んでる事だし……上手く行けば土星軌道辺りでランデブー出来るんじゃないかな?」
 ナデシコBの通常最高速度は、第三宇宙速度の約五倍。時速換算でおよそ三一万キロ。
 現在位置の火星から土星軌道までの距離が約十二億kmであるから、一六一日かかる計算になる。
 だがハイパードライブを使えばこれを半分に短縮する事ができる。
「それでも回収して戻ってくるまでにはざっと五ヶ月はかかりますな」
 脳内で素早く計算したプロスが言う。
「時間が惜しいねぇ。できれば直ぐにでも見てみたいけど……ああ、そうか費用対効果を考えるなら、ドクターに例の実験機E303でナデシコに飛んで貰って、回収後にジャンプで帰ってきてらえば良いんじゃないかな?」
 いかなA級ジャンパーとは言え、全くイメージできない場所へ跳ぶ事は出来ない。
 故に今現在バスティールが移動しているであろう、冥王星軌道付近へ直接跳ぶ事は出来ないのだ。
 だが、火星生まれの火星育ちであるイネスであれば、火星まではジャンプが可能である。
 であるならば――
 ひとまず火星へジャンプしナデシコBと合流、バスティールを回収して再びジャンプで月の秘密ドックへと跳べば、時間も経費も節約でき、隔離施設であるから機密性も保てる。
 ――そう、アカツキは考えたのだ。
『E303って……解体予定のガイラルディア? 確かにあれならジャンプ装置も付いてるし、あそこは完全隔離してある場所だから、跳んでもバレないとは思うけど、私は機動兵器なんて扱えないわ。それにあの機体はブラックサレナのオプションパーツに過ぎないから単独での運用は不可能だと思うけど?』
「アタッチメントを噛ませばエステにだって付けられるさ。実際に開発テストの段階ではそうしてたんだしね」
 ブラックサレナには、高機動ユニット以外にも様々なオプションパーツが試作されていた。
 その中のプランE303は、アキトの要望――火星の後継者の本陣へと攻め込むという最終局面での使用を考え、コストや費用対効果を度外視して作られた、性能・装備・サイズ、そして費用も含めて文字通りの化け物的装備だ。
 ガイラルディアという固有名詞が別途与えられている事からも、その扱いが特別なものである事が伺える。
 ちなみに花言葉は「協力」であり、ネルガルの――アカツキの意志が篭められていたものだ。
 結局、火星での最終決戦には間に合わず、八割がた完成していたところで開発中止となっていた。
 それでもハードでは専用武器、ソフト面では火器管制システムが完成していないだけで、防御や動力、機体制御装置部分に関しては問題がなく、ジャンプ装置すら使用可能状態のままだ。
 この非合法の塊の様な装備は、これまでに費やした費用を考えて――アカツキの趣味的な要素も多分い大きいと思われる――月で隠匿されていたのだが、実用化の予定など有るはずもなく、所持していてもネルガルの利益に貢献する事はなんら無いとされ、やっと近々秘密裏に廃棄される予定になっていたものだ。
 なればこそアカツキとしては、一度くらい実際に使ってみたいという思惑もあるのだろう。
『それにしたって私には操縦なんて無理よ』
「教導団向けに作ったエステの複座フレームがあるんじゃなかったっけ? それにパイロットとドクターを乗せてガイラルディアを取り付ければ可能じゃない?」
『それでもあんな化け物、相当の腕がなければ、まともに動かす事だって出来ないわよ』
「別に戦闘するわけじゃないんだからテンカワ君じゃなくたって、それなりの腕を持った人間なら大丈夫だろ? それなら、ほら……適任者が一人居るじゃない?」
「まさか会長ですか?」
 プロスの言葉に、アカツキがニヤリと笑う。
「いや〜それは許可できませんな」
「何でだい? 僕の腕は、まだまだそこらのパイロットよりは立つと思うんだけど?」
「会長にはやって頂く仕事が山ほどございますので。それに腕のいいパイロットでしたら幸いにも心当たりがあります。私が直ぐにでも交渉に行って来ましょう」
「あ、そう。そりゃ残念。それじゃ……」
 最初から期待はしていなかったと思われるアカツキは、先程嫌々仕事をしていた時とは打って変わって楽しそうな表情で、あれこれと指示を出す。
 イネスが通信を切り、プロスとゴートが揃って退室しようとした時、ナデシコBのルリから通信が入った事が伝えられた。
「ホント……忙しくなってきたねぇ。ミスター、もう少し付き合ってくれる?」

 二二〇四年一月十八日――
 火星でルリとザカリテ首相が机で向き合っていたのと同じくして、地球に近付いてくる影――バスティールは発見された。
 アキトの帰還まで――後十一ヶ月。






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