「さて、それじゃ行きますか」
 ナデシコBの格納庫で私はそっと呟きます。
「何でこういう肝心な時にイズミの奴は居ないんだ? どうでもいい時には湧いて出て来るくせによ」
「イズミってあれで射撃も上手いし拳法も強いしね〜」
 背後に並んで立っていたリョーコさんとヒカルさんが、この場に居ない親友を思って不服そうに口を尖らせています。
「まぁ居ない人間をあてには出来ねぇし。ここは俺達だけで艦長を守るって事で……というわけだからハーリー、留守番頼むぜ」
『三郎太さんこそ艦長をお願いしますよ。怪我なんかさせたら承知しませんからねっ!』
『ルリルリ、本当に気を付けてね。いざとなったら私がナデシコで突っ込むわよ?』
 ハーリー君のウインドウに割り込むように、ミナトさんが心配そうな表情と共に通信を入れてきました。
「大丈夫ですよ。相手は仮にも国家主席ですし、ネルガルに何か用事があるだけだと思いますよ。別に取って食われるわけじゃないと思いますよ。それにアカツキさんからも相手の真意を見極めるようにとのお達しですから。社員としては従うしかありません」
 私は白い大きめのストールの様な布を羽織りながら、周囲の皆を安心させるようにゆっくりと答えました。
 これって特殊繊維で出来てる防弾マントらしいですね。
 何でもアキトさんのマントと同じ素材とか……ちょっと嬉しいですね。
『んもぉ〜、こういう時こそプロスさんの出番なのに……タカスギ君、ルリルリの事頼むわよ!』
「任せて下さいって」
 ミナトさんの言うとおり、交渉のプロであるプロスさんが居ないのは確かに残念ですね。
「お〜っし、機体はバッチリ整備しておいた。有る程度の無茶は保証するぜ」
 ウリバタケさんが、内火艇――サワギクのボディを手の平で叩いてみせます。
「ナデシコBは警戒態勢のまま待機していて下さい。では……行ってきます」
 私は小さくVサインを作って言うと、サワギクへ乗り込みます。
 その後を三郎太さんとリョーコさんが続き、ハッチが閉じられました。
 私達三人を乗せたサワギクは、心配そうなクルーの見送りを受けて、火星へと降下するべくナデシコBを発進しました。







機動戦艦ナデシコ 〜パーフェクトシステム#22〜








 リョーコさんの操縦で、サワギクは火星航空局の指示通りに降下を開始。
 大気の層を抜ける際、ナノマシンの輝きがコクピットの窓越しに見ることが出来ました。
 この小さな粒子達が火星の大気を支え、人が住む為に必要な環境を造り上げた。
 そして同時に、火星に産まれた人達のDNAをも変化させ、彼等の大多数の人生を狂わせたんですね。
 私は黙祷を捧げるようにそっと目を閉じると、静かに何かに祈りを捧げました。
 暫くして火星の大気圏内に降下が完了すると、リョーコさんが機を首都のあるアルカディアへと向け進ませます。
 直後、地上の管制から身元確認の通信が入り、応じようとする三郎太さんを制して、私が自ら出る事にしました。
 何しろ首相直々の会見申し込みですから、一応現場における最高責任者である私が対応すべきだと思った次第です。
「こちらはナデシコBのサワギクです。ネルガル重工特別試験運用部部長ホシノ・ルリ以下二名が搭乗。そちらの誘導に従い飛行します」
『了解、ホシノ部長。火星へようこそ。迎えの者が向かってますので、そのままその機体の後に続いて下さい。では』
 管制官の声が切れると同時に、レーダーがサワギクに向かってくる機体を捉えました。
「リョーコさん、一応フィールドを強化しておいて下さい」
「判ったよ」
 やがて、前方から飛来した機体はすれ違った後でサワギクの背後で旋回し、徐々に私達の機体に近づいてきます。
 民間機では無く、明らかに軍用機と判るフォルム。
 連合軍のシルフィードに比べると、やや無骨な感じのする機体です。
「ん? 見たことがない機体だな……リョーコは知ってるか?」
「オレも知らねぇ……火星が独自に開発した奴かな」
 元戦闘機パイロットの父親を持つリョーコさんは、ああいったものに詳しいはずですが、そんな彼女も知らないとなると、本当に自国生産によるものかもしれませんね。
「あれ? でもそれってヤバイんじゃないのか?」
「火星は第二の木連としない為に、軍の保有を認められてませんから……あれが本格的な軍用機であると言うのであれば、何かと問題ありますね」
 三郎太さんの言葉に、私がそっと答えます。
「なーんだか面倒な事にならなきゃ良いけどよ〜」
 リョーコさんの言葉に、私と三郎太さんは静かに頷きましたが、呼び出された時点で既に面倒事になっている様な気がします。
 そうこうしている間に、飛んできた火星の戦闘機らしき機体はサワギクの前方に位置すると、付いてくるようにでしょうか? 目の前でバンクをしてからゆっくりと進路を変更してゆきました。
 本当……これ以上面倒な事にならない様に祈るだけです。


 私達が先導されて辿り着いたのは、火星の首都であるアルカディアから幾分離れたアキレススプリングスという場所にある、広い建物でした。
 ザカリテ首相の私邸――別荘という話でした。
 サワギクを指示された場所に降ろすと、今度はザカリデ首相の秘書官を名乗る案内人の先導の元、建物へ向けて歩き始めます。
 周囲を見回すと、警備用だと思われる三機の陸戦フレーム・エステバリスがさりげなく私達を監視しているのが判りました。
 目的の建物は、何処か古めかしさが漂う洋館です。
 勿論火星の歴史を考えれば、その外観がイミテーションに過ぎないのは明らかですが、恐らくは主の趣味によるものなのでしょう。
「うわぁ」
「おおっ」
 建物に入ると、その荘厳な内装に思わずリョーコさんと三郎太さんが声を上げました。
 まるで私の故郷にある城を彷彿させますが、シックで落ち着きのある分、こちらの方が趣味は良さそうです。
 品のいい絨毯の上を進むこと数分。
 そして通された大きめの部屋で更に数分待つと――
「ようこそ火星へ、ナデシコの皆さん。私がアーツ・ザカリテです」
 私達の前にザカリテ首相が姿を現せました。
 六十代後半と思われる初老の男で、背はあまり高くないが少し肥満気味の身体をしており、すっかり禿げ上がってシワが目立つ頭が特徴的ですね。
 そして――
「ああ目が不自由でね。このバイザーが無いとろくに見えないのだよ。非礼だとは思うが判ってくれたまえ」
 確かにテレビのニュースなどで見る彼の姿は、いつもこのバイザーを付けていました。
 フレームとレンズ部分が一体化した細いバイザーをかけて――というより頭部に装着したという表現の方が妥当でしょうか――テーブルに着きました。
 私達も自己紹介を簡単に済ませると、勧められるまま向かいの席に座ります。
 直ぐに給仕の方々がお茶の入った湯飲み――日本茶なんですね――を持って来て、目の前に置いて行きそのまま部屋を出ていきました。
 残ったのはザカリテ首相と、ガードを兼ねていると思わしき側近の男性だけ。
「私は緑茶が好きでね……よろしかったら飲んでくれたまえ」
 口元に微笑みを携えて私達にお茶を勧めると、ザカリテ首相も自分の湯飲みを口に運び、ずずずっと音を立てて飲み始めました。
 サブロータさんが慎重にお茶を口に含み、やがて納得いった様な表情を浮かべて飲み込みました。
「あれ? 美味いな……」
 どうやら毒ではない上に、オニバスで出された物とは異なり美味しいみたいですね。
 リョーコさんも湯飲みを手に取り口に運びましたが、私は出されたお茶にもは手を出さずに、相手が話を切り出すのを待ちます。
「さて、この度はわざわざ呼び立てて済まなかったね。まずは私の我が儘に付き合って貰ったことに感謝しよう。実は以前からネルガルの船舶がオニバスに入港したら報告せよと命じてあってね……是非私の話を聞いてもらいたかったんだよ」
 そこまで述べて、ザカリテ首相はそっと自分の湯飲みを机に戻しました。
「それでお話というのは?」
「君達も知っているとは思うが、今火星は非常に不安定だ。治安だけじゃなく、市民の生活水準や、経済等も含めて不安定という意味だ。かつてはこの地に有った古代文明の利権を目指して、地球圏最大の企業がこぞって参入してきたが、遺跡や遺産の所持が不法と一方的に決められた今、火星市場には魅力が無くなりかつての活気を失ってしまった」
「ネルガルに、市場参入を果たしテコ入れしろ……と?」
「無論それは喜ばしい話だが、それを言いたかったわけじゃない。私が聞きたいのは……いや、その前にホシノ部長……君に聞きたい事がある」
「私にですか?」
「そうだ。君は今の地球が向っている未来に不安を抱いた事は無いかね?」
 え? ――どういう事でしょう。予想外の質問です。
「仰る意味が判りませんが」
「言葉通りだ。今の地球はコンピュータに一部とは言え行政や治安維持を任せている。広大なネットワークまでも構築し、全てを一つのコンピュータシステムに依存している。この事が如何に危険な状態か、地球の人々は気づいていない」
 ガーディアンとグローバルネットワークの事を言っている様ですね。
「ガーディアンは完璧です」
「そう、完璧なようだね。反乱を防ぎ、災害救助も見事にこなし、行政の舵取りまでも行っている」
「補佐だけです。行政に対する意見具申をしているに過ぎません。ガーディアンに決定権は有りません。最終的に政を行うのは議会であり人間です」
 私の普段よりも熱を帯びた口調に、リョーコさんと三郎太さん、少し驚いてるみたいですね。
 それにしても何故でしょう……私、冷静さを失っているみたいです。
 そんな私の非礼とも取れる態度を、ザカリデ首相はむしろ満足げな表情で受け止めています。
「今はそうかも知れないが……数年先はどうだろうか? 私が見る限り、地球の民は今の繁栄に溺れている様に思える。他人任せっていうのは何事も楽だからね。しかし全てを任せて堕落した人類に未来があるのか……まぁ少し気になってね。電子の妖精と謳われ、ガーディアンの育ての親である君がどう思っているのか、それを聞きたかった」
「ガーディアンは人々を幸せへと導きます。少なくとも今の火星の市民達より、地球の方々は幸せです」
 あ……ちょっと言い過ぎました。
 これじゃ「火星の首相である貴方よりもガーディアンの方が優れてる」と言ったようなものですね。
 三郎太さんもリョーコさんも、少し驚きと困惑が交じった表情してます。
 慌てて「申し訳ございません」と非礼を詫びましたが、首相は気にする風でもなく笑い始めた。
「はははっ手厳しいお嬢さんだ。確かに今の火星の状態は酷いだろう。だが、我々は人は人によって導かれるべきだと思っている。もし機械の言うことを聞き、そして取り返しのつかない事態に陥った時、一体だれがどう責任を取るというのだ? 確かに火星は混乱しておる。だが私は地球の現状を羨ましいとは思っていないし、地球が示しているグローバルネットワークの整備も行わないつもりだ」
「では、あなたは火星の現状をどの様に改善してゆくのですか? 議会政治ではただ時間がかかるだけです」
「そこで君達ネルガルに頼みがあるんだよ」
「はい?」
 少し話の展開が読めませんね。
「火星は独立国だ。故に自国の平和は自国で守るべきだ。であるならば、いつまでも連合軍の助けを必要とはしない」
「仰っている意味が判りません」
「我が火星は、近日中に再軍備を終えて、その事実を世界に向けて公表する」
「え?」
 何だか、聞いてはいけない事を聞いてしまったような気がしますけど――あ、三郎太さん達も驚いてますね。
「ははは。地球は我々が独自の軍隊を持つ事に神経を尖らせるだろうが、国が自衛権の為に武力を持つことは違法ではない。失礼ながら地球から派遣されてくる連合軍の方々は、仕事熱心ではなくてね……余計な混乱を招く事すらあるし、現在駐留している宇宙軍に支払う金も馬鹿にはならん」
 つまり、能なしの穀潰しには出て行って欲しい――そう言っている様ですね。
「ステュクス……ここへ来る案内役を務めた機体の事だが、あれは我が国初の戦闘攻撃機でね、他に戦艦等も整備が進んでいる。ただ機動兵器だけはノウハウや技術者不足で独自の機体を作る事が出来ないでいる。知っての通り、警戒や警備、暴徒鎮圧、そして土木・建設・整備作業に機動兵器は欠かすことが出来ない存在だが、現状ではその保有数は多くはない。確か地球圏ではエステバリスシリーズの退役が進んでいると聞く。それを安価で譲ってもらいたいのだよ。地球とは違い、この星ではIFSも日常的なものだし、かつての入植者達が残したエネルギーウェーブ発生装置も各所に配置されたままだ。我々は治安維持に必要な力を手に入れられるし、ネルガルは余剰在庫や中古品で商売が出来る……双方にとって良い話だと思うが? 無論ライセンス生産出来るのであれば、それに越したことはない」
 つまり治安を回復したいけれども、穀潰しの宇宙軍では役に立たない。
 だから自国で軍を整備し、治安維持活動をさせたいが、その中核となる機動兵器が揃わず、型落ちのエステシリーズを売って欲しい――そういう事らしいです。
「どうして私達に?」
「君らネルガルの支社がこの地に有るかね? クリムゾンすらこの地にはおらんよ。それとも電話一本で通販出来るような買い物かな? セールスマンも営業も居ないこの地で、しかも地球政府の規制や、ネットワークや通信の監視網をかいくぐり話を進めるには、こうするしかないと思うんだがね」
「そりゃ、連合政府憲章違反じゃないっスか?」
 三郎太さんが、呆れた様に言います。
「ほっほっほっ、再軍備をしているだけで違反だよ。だがねお若いの、我々は戦争をする為に軍備を整えているわけではない。それは地球における旧式機を求めている点でも明らかだろう。もしも反逆の意志があるのなら、四の五の言わずに新型機を調達する。それにだ……さっきも言ったが、国には自衛権があり、自らを守る為の戦力の保持は当然の事なのだ。国民の安全を守る為の武力は必要な物なのだからね。
 私は地球との平和的な関係を望んでいるが、あくまでそれは平等の立場で結ばれるべきものだ。
 しかし残念な事に、地球側はそう考えてはいない。我々から武器を奪っただけでは飽きたらず、地球では火星を直接攻撃できる馬鹿げた戦艦を建造中だったね? 常に狙撃手に頭を狙われていて平然と出来る程、私達は強くも無ければ寛容でもない」
 旧統合軍のお偉いさん方が無理矢理建艦をこぎ着けたグロアールの事ですね。
 建造は当然極秘のはずですが、公表されていない「私がガーディアンの調整を行ったという事実」をも知っていた事を考えると、火星の諜報力は優秀と言わざるを得ませんね。
「ならば、こちらも相応の力を持つべきではないか? 先程行ったとおり、平和は平等の立場で行うべきだからね。火星は地球の植民地ではないのだ。それに、この国の治安が乱れているのは、それを守る組織に力が不足しているからだ」
 ザカリテ首相は咳き込むように笑って、私の返答を待っています。
「では、余計に条約を見直しGS艦隊を受け入れるべきでは? 彼女達の制御する軍は、宇宙軍のような能力にムラがある様な事は無く、その能力は折り紙付きです。火星が整備可能な施設を開放し、彼女達が火星圏でも活動できる様に地球政府と協議するだけで済みますが?」
 私の言葉に、ザカリテ首相は笑顔を引っ込めてしまいました。
「それは出来ない。先程も言ったが、我が火星はグローバルネットワークも無人艦隊も受け入れる気は無い」
 そうはっきりと言い放った時の厳つい表情を見て、私は自分が苛つきを覚えている理由が判りました。
 私にとって娘も同然であるガーディアン達を否定された事に私は腹を立てて居る。
 アキトさんやユリカさんに対して抱いた感情を、私はあの姉妹にも感じていたんです。
「なぜ、その様にガーディアン達を嫌悪なさるのですか?」
 ガーディアン達だけでなく、オモイカネをも人間と同じに見ている私としては、正直この人の考えには賛同できません。
 私は苛つく心を抑え、努めて冷静に尋ねました。
 首相は私の言葉を聞くと眉を寄せ、組んでいた手を解き片手をバイザーの横に当てながら口を開きました。
「理由が聞きたいかね?」
「差し支えなければ」
「確か君は三年前のクーデター騒ぎの時、この火星全域のコンピュータシステムの掌握を行ったね?」
「はい」
「私は当時、既に火星に移民として住んでいてね。あの日……君が反乱を鎮めたあの日、丁度目の手術を行っていたんだよ……」
「……っ!?」
 その言葉で全てを理解し、声を失って目を見開く私の眼前で、ザカリテ首相はバイザーを外しました。
「あっ」
 そう声を漏らしたのは私ではなくリョーコさんでした。
 ザカリテ首相の目は眼球が両方とも白く濁っており、医療用ナノマシンが暴走している影響なのか、時々光を発してます。
「運が悪いことに、その時メディカルコンピュータも停止してね、私の手術は失敗して視力が殆ど無くなってしまった。裸眼では僅かに光りを関知する事が出来る程度だよ。……いや、今更君を責めるつもりは毛頭ない。あの時君がああでもしなければ、反乱は長引き火星全体がまたしても戦乱に巻き込まれていただろう。それにネルガルから見舞金と共に渡されたこの補助バイザーのおかげで、普通に生活する分には不自由する事はない」
「……」
 確かに私はあの時、火星全土に散らばる敵に対してハッキングを行った。
 民間の物とわかる物は極力手を触れなかったが、それが完全だったか? と言われれば疑問は残る。
 何しろ一刻一秒を争う事態であったし、例えば火星の後継者達が民間の施設を乗っ取っていた可能性だってある。
 いや、それは恐らく事実なのだろう。
 ナデシコCを運用していたネルガルが、彼に対して見舞金と言う名で賠償金を支払っている事実が、私のした事を証明している。
 愕然とする私の前で、ザカリテ首相は微笑みながらバイザーを元通りに装着し、私達の方を見て口元を少し引き締めて続きを話し始めました。
「しかしだ……全てをコンピュータに頼る事が如何に危険なものか? それを私は身に染みて知ったわけだ。故に時間はかかるかもしれないが、人間という生き物は人間の進む時間の中で生きて行くべき存在だと私は思っている……変な話をしてしまったね。済まなかった」
「いいえ……」
「では地球には戻ったら会長には、先の件を伝えてくれ。良い返事が返ってくる事を期待している。本日は手間をとらせて済まなかったね。帰りの道中の安全を祈っているよ。失礼……」
 うまく返事が出来たのか判りませんでした。
 扉が閉まる音が何処か遠くから聞こえて、リョーコさんの私を呼ぶ声に気が付くまで少し時間がかかってしまいました。
「ルリ……気にするなって」
「そうそう。本人が気にしてないって言ってるんスから」
「はい……ナデシコに戻りましょう」
 心配してくれる二人に、やっとの事でそう答えて、私は立ち上がりサワギクを停めた場所へと向かいました。
 途中何度か転びそうになり、その都度三郎太さんやリョーコさんの手を借りました。
 本当に済みません。

 アキトさん――

 ユリカさん――

 私は、私のしたことは正しかったのでしょうか?







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