ROAD TO BLUES Chicago(Illinois)
アメリカという国は本当に広大だ。ひと月前まで半袖だったのに、シカゴに着いたとたんマフラーと手袋だ。ヒッピーが凍死するのもわかる。街並み、人種はさることながら、行き交う人達の表情、その州や緯度、経度でさまざまだし、何か全体的な「温度差」というものがあったりするわけだけれど、ここ、アメリカ第3の都市シカゴ(ニューヨーク、ロサンゼルス、シカゴ)は、これまでとは違うものが確実にあったんだな。
その違うものとは、例えばシカゴは産業都市、世界経済の中枢というマネービジネス、マーケットの中心都市というのもあるし、あるいはかつて禁酒法の時代アルカポネが君臨していたマフィアや、ヒップホップに影響を与えたゲットー地区などと呼ばれるスラムのピンプと娼婦達がいたように、「裏社会」の存在の身近さ、人種のサラダボウルと言われるように、異文化コミュニティの形成跡、ミシガン湖からビルの谷間を吹きつける風、それらを氷点下の眼差しで見下ろすアールデコ調、もしくは近代的な摩天楼の数々、ここ大都会シカゴはそんな街だ。あくまで僕の視点においては。第2の都市L.Aとはまたちがったライムライト、光と影があるように感じる。当然僕は南部の黒人社会(実際は言い切れない)から一気にホワイティの都会に「引っ越してきた」当初、その歴然とした差に戸惑ったもんだ。
もちろんこういった都会は日本人にはとても住みやすいし、深入りしなけりゃ安全に過ごせるわけだけど。よくある洋書で、「…彼は南部なまりで…」というなまりの翻訳が、日本でいう東北弁だったりする。僕は上京したての田舎もんってわけだ。ブルースの話を少しすると、ここシカゴで成功を収めたマディやハウリン(実際はイギリスで火がついたのだが)達がいたわけだけど、僕としては、シカゴから南部へ帰ったり、また北部へ来たりしたエルモアの心情が、あくまで「僕なりに」、その片鱗を垣間見えた気がした。個人的にマディよりエルモアが好きだというのもあるし(良し悪しではなくて)、とんでもない勘違いなのかもしれないけど。僕なりに彼のスライドギターの精神的な部分をアプローチしていくと、"そう聞こえる"という自分勝手な解釈で。まぁそんなわけで、僕は自分を偉大なブルースマンとダブらせて、南部から野望を持って北部に上州したと言うわけだ。