《5》
《6》

野口晴哉先生語録

全 生

《4》

  

野口晴哉 『晴風抄』より

生くるものはいつかは死ぬ也。それ故生きている也。

されどいつか死ぬに非ずして刻々死している也。

笑っていても泣いていても、死につつある也。

その死につつあるを生きていると申している也。

十日生きたる人は十日死んだる也。

刻々に生きている人あり、死んでいる人あり。

利害得失に追い廻され汲々としている如きは、
生きているのは利害得失にして、人は刻々死んでいる也。

知識に追われ、毀誉褒貶(きよほうへん)の為、他人の顔色に使われている如きも又同じ也。

この刻々に死につつある人世に生くること、全生の道也。

溌剌(はつらつ)と生きた者にのみ深い眠りがある。

生ききった者にだけ安らかな死がある。

    

野口晴哉先生 直筆の書

「魚化龍(ぎょかりゅう)」

   
《5》
《6》