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インド・アーリア語族という神話、そしてシンハラ語、
ちょっとタミル語
 インド・アーリア語族に属するシンハラ語が日本語と似ているという話は信じがたい。シンハラ語は、系統不明か、あるいはウラル・アルタイ語族であろうとされる日本語と文法的な関連を持つという「かしゃぐら通信」の指摘は言語学の常識を踏まえていない。このことをどう考えているのか。

No-60 2006-02-01
-赤色の文字はカプタフォントでお読みください-


シンハラ語私記

インド・アーリア語族という神話、そしてシンハラ語、ちょっとタミル語。

 インド・アーリア語族のシンハラ語はウラル・アルタイ語族、あるいは孤立語とされる日本語と文法的な共通性を持たない。このご指摘を常々、いただいております。
 『熱帯語の記憶、スリランカ』を出した時にはシンハラ語の研究者から、困った本を出したものだ、との指摘を受けました。何も分からぬ門外漢が、料理を作っていればいいのに言語に手を出した、と非難しきりでした。しかし、「かしゃぐら通信」のシンハラ語は英文辞書の孫引きだったり、古色蒼然としたシンハラ語常識の羅列ではありません。
 あの時はまだ、シンハラ語の本も日本にはありませんでした。私のシンハラ語との出合いはスリランカの朝市での売り手のお兄ちゃん、おばあさんとの売買の交渉に始まり、また、山の村海の村で口述されるシンハラ料理の作り方を録音し、それを聞き取るという商売の実利のための行為で幾分かシンハラ語が進歩し、また、無謀ながらシンハラ語でダイレクトに日本語をシンハラ人に教えると言う体験を経て、また、JR中央線の中吊りで週刊ポストのノンフィクション大賞1回目公募の知らせを見たのがきっかけでシンハラ語とスリランカ料理をテーマにして応募して、その時のタイトルは「椰子・唐辛子・鰹節」だったけど、よくまあそんな題名で最終選考に通ったもので、それを知った明石の地方出版社・南船北馬舎が刊行を引き受けてくれて、そうして、いまの「かしゃぐら通信」のシンハラ語があるのです。

 今から10年ほど前のその当時、シンハラ語なんて全然知られていなかったのですが、南船北馬舎代表は「私はドン・キホーテと言われてます」とやわらかな関西弁を語尾上がりに言って「椰子・唐辛子・鰹節」を「南の島のカレーライス」と名を換えて出版しました。これを出発点として、「あじまさの島見ゆ」、「熱帯語の記憶、スリランカ」というシンハラ語とその文化に関連する出版が続き、昨年6月の「シンハラ語の話し方」につながるのです。
 ドン・キホーテの槍が旧態依然の雲を突き破り始めたのでしょうか、最近は、「シンハラ語って日本語と似ているんぢゃない?」という人がぽちぽち現れて、批判精神旺盛な2チャンネルでさえ、揶揄しながらもシンハラ語と日本語の関連に話が飛び、日本語版ウィキペディアに至っては「日本語との関係は見とめられていない」から、何時の間にか「言語体系が日本語に類似するとされている」に格上げされてしまいました。星三つ、ってとこかしら。

 確かにこのところのシンハラ語熱は過熱気味で、日本語サイトには8万に昇るシンハラ語関連のホームページがあって、まあ、スリランカではお隣同士の間柄だからここで例に挙げるのだけど、タミル語はGoooogleで5万代しかヒットしない。高名な国語学者や、大新聞や、かつては有料半国営テレビジョン局もタミル語を喧伝しまくったのに、5万台!なのです。
 一方、シンハラ語は零細地方出版社とこの「かしゃぐら通信」と、辞書専門の出版社などがほそぼそと、しかし、根気よく本を出して、その結果かどうかはわからないけど検索サイト8万に届け、とばかりの勢い。ただ、その中身がちょっとお寒いので、また、シンハラ語の文法書が本屋の書棚にないので、最近、「かしゃぐら通信」の「シンハラ語文法基礎」を始めるに至った次第です。そして、今お読みになっているこのページではシンハラ語文法基礎にまつわる周辺の出来事を記録しています。

 シンハラ語はインド・ヨーロッパ語属の中のインド-イラン語、更にその中のインド-アーリア語に属するとされています。
 まずは、ここの線からシンハラ語の姿をのぞいて見ましょう。日本語版ウィキペディアの書き込みには「インド・アーリア語族に属する、シンハラ語の言語体系が日本語に類似しているとされる。意味がわからない」とありますが、これはもっともな疑問で、ここの説明をみんな、避けているのです。なぜか、どうして避けるのか。2006‐2‐01

次回は、「インド-ヨーロッパ語属という言語ファミリーを設定できるのは紀元前5世紀の文法家パーニニのおかげです」で、始まります。

シンハラ語私記目次 シンハラ語私記1 シンハラ語私記2 シンハラ語私記3 シンハラ語私記4

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