Sherlock Holmes シャーロック・ホームズ

  
探偵たちの映像作品 ― 鑑賞メモ ―

 私は特にマニア的に推理・探偵ドラマが好きなわけではなく、何となく目に付いた海外物を、たまに見る程度にしています。それでも、今までに見たものを数えると、意外な数に昇るので、ここではそれぞれについて感想や思い出などを書き連ねてみようと思います。

 イギリスのテレビドラマ

シャーロック・ホームズの冒険 (グラナダ)
 ご存知、グラナダ版については、こちら

バスカヴィル家の犬 (BBC)
 期待のニュー・カマー。こちらの語りグラナダより多い。
 
コナン・ドイルの事件簿
 イマイチのはずなのに、何故か邪険に出来ない作品。こちらへどうぞ。

名探偵ポワロ
 デヴィッド・スーシェのポワロぶりが完璧な超有名作品。実は、グラナダ・ホームズよりも早くこちらになじんでいた。初期の短編では軽妙で楽しい雰囲気が楽しいが、後期の長編中心となった重厚な作りの方が好き。特に第11シリーズ(「ナイル」「棺」「子豚」「ホロー」)の出来が圧巻だった。
 ミス・レモン,ジャップ警部のキャラクターが非常に良かった反面、ヘイスティングスはもう少し血の巡りの良いキャラクターであって欲しかったが…その点が玉に瑕。ともあれ、これからの作品も期待大。特に、「オリエント急行」の発表が待たれる。

ミス・マープル (BBC)
 マープル物のスタンダードと言えば、このジョーン・ヒックソンのシリーズ。山岡久乃の吹き替えも素晴らしかった。照明の関係なのか、やや画面が暗いのが惜しい。ヒックソンのマープルは絶賛されているが、私には少ししっくり来なかった。それが何なのかは、グラナダ版を見て判明する。

ミス・マープル (ワーナー)
 アメリカっぽさの強い、ヘレン・ヘイズ版。舞台が1980年代になっているので、かなり違和感もあるが、中々あなどれない出来。特に登場人物たちの存在感の描写はなかなかのものがある。若かりし頃のティム・ロスが出演している点でも、印象深い。

ミス・マープル (グラナダ)
 ジェラルディン・マクイーワンによる、最新版ミス・マープル。目から鼻に抜けるような才気を、お茶目な表情で覆い、ケーキをもりもり食べて、刑事さんたちを次々と落としていく(?)、したたかマクイーワンのマープルは、私の好きなタイプ。かなり気に入った。テレビ的にかなり大胆な手を入れているが、原作にあまり思い入れが無いので、良しとする。

主任警部モース
 ジョン・ソウ主演。コリン・デクスター原作の人気シリーズ。クラシック音楽愛好家で、行く先は必ずパブというナイスキャラなモース主任警部に、良心的なルイス、かったるい口調の検死官 ― キャラ設定や大学町という舞台、物語の掴みは非常に良いのに、結末が物凄く不満だらけの作品。容疑者と探偵役が恋愛をするのはいただけない。この番組のせいで、原作に手が伸びない。
 ただ、「オックスフォード運河の殺人」は、歴史物の胡坐椅子探偵として非常に面白かった。

第一容疑者
 ご存知、ヘレン・ミレン演じるテニスン警視の刑事ドラマ。推理物としての要素はないが、警察組織を深く見つめた重厚な作りが、圧倒的。なんと言ってもテニスン警視が最高に格好良い!それから信頼できる部下、ハスコンズの存在が嬉しい。
 ただし、見終わってから楽しい気持ちには決してならないので注意。特に、「幼女誘拐事件」は目を離せない素晴らしい展開だったが、救いは一つも無かった。

修道士カドフェル
 原作を先に読んでいて、まったく失望しなかったデレク・ジャコビ主演のドラマ。13世紀の雰囲気が良く伝わってくる。世紀は違うが、ハルデヴィでも大いに参考にさせてもらっている。プロット的にはありきたりな物が多いが、風物や人物像のディテールだけでも十分楽しめる。ただ、ヒュー・ベリンガーはもうちょっと男前でも良かったかな…

心理探偵フィッツ
 「探偵」に騙されて最初の一話だけ見てしまったドラマ。酔いどれ心理学者のフィッツが警察の捜査に協力するのだが、続けて見る気力は沸かなかった。ただ、ロバート・カーライルはさすがの演技力で、圧倒的な存在感を示していた。

華麗なるペテン師たち
 ペテン師たちが主役で、探偵物とは違うが、同等の面白さで期待のシリーズ。完璧なチームワークと、緻密な下準備、そしてあっと言わせる大どんでん返し。私が好きなのは、調達屋のアッシュと、若造ダニー。


 アメリカのテレビドラマ

刑事コロンボ
 子供の頃からのお馴染みシリーズ。無論、旧作が断然良い(と、言うより新作は殆ど面白くない…)。とぼけたキャラでありつつ、どんどん犯人を追い詰めていくコロンボが唯一無二の傑作キャラクター。憎めない犯人への温かな視線なども良い。特に好きな作品は、「別れのワイン」と、「野望の果て」。「白鳥の歌」では、あのジョニー・キャッシュが出演!

ジェシカおばさんの事件簿
 「あたしの名は、ジェシカ・フレッチャー。推理作家です。」という、森光子の吹き替えが絶妙なシリーズ。ミス・マープルとはまた違う、アメリカの元気なオバさんの活躍が痛快。「よござんす!」は名台詞。しかも甥姪が無数に居る探偵の典型。プロット的にも、まとまりが良くて秀逸なものが多かった。エミー賞も頷ける。

名探偵ダウリング神父
 「ジェシカおばさん」の保安官役でお馴染みだった、トム・ボズリー主演の、神父探偵もの。アメリカにおけるカソリック教会や、修道院の様子などが楽しい。いや、何よりもシスター・ステファニーが最高。キュートで、スタイル抜群、私服になればバスケに、バーテンダー、スリ、錠前開け、ビリヤード、カーチェイスもお手の物。探偵の助手としては素晴らしく異彩を放ち、彼女こそこのドラマの肝だった。…と、言いつつ無愛想で口の悪いお手伝いさんのマリーも、ナイスキャラだった。

新弁護士ペリー・メイスン
 私はオリジナルシリーズを見ておらず、この新シリーズだけを知っている。掴みは良いのだが、結論のもって行き方が、やや唐突な作品も目立つ。それでも重厚で粋な作りは一見の価値アリ。私は秘書のデラ・ストリートよりも、助手のケン・マランスキー君が贔屓だった。

犯罪捜査官ネイビーファイル
 民放の土曜昼枠で放映していた、アメリカ海軍を舞台としたドラマ。軍隊は独自の「軍事法廷」を持つため、特別な弁護士や検察官が存在する。その設定が非常に面白かった。沖縄を舞台にしたエピソードもある。主役のハーモンは、良くも悪くもとても「アメリカ的」。
 第一シリーズの終わり方は、典型的な「クリフ・ハンガー」で、さぁ次回はどうなる?!…と思わせておいて、なんと次回予告では「次回からは、新しい仲間との新しい冒険だ!ハーモンの活躍にご期待!」と言うとんでもない締め方をされ、本気で第二シーズンから主役と舞台設定のみ同じで、別の話が始まった。これは、いかにもアメリカな事情 ― 放送局の変更という、日本では考えられない理由があったようだ。

こちらブルームーン探偵社
 若かりし頃のブルース・ウィリスが拝める、コメディ&アクション&ラブ&探偵ストーリー。とにかく、マディとデイヴィッドの怒涛の口論が圧巻。特にマディが「デぇイヴィッドぉ!!!!」と叫ぶのが大好きだった(浅茅陽子の名吹き替え)。主役二人を取り巻く脇役も口が達者で、特にアグネス(松金よね子)の「彼、ゲイだったんですかぁ?」が最高。

名探偵ハリー???(「ハリー&ハリー」だったかも知れない)
 このドラマは確かにNHKで見たはずだが、ネット上に資料が無い。放映していたのは、15年ぐらい前だと思うが…。恐らく舞台はアメリカ西海岸。探偵のハリーは、ムチャクチャな手法で事件に挑む、こまったオヤジ。しかも、弁護士をしている優秀な息子(こいつの名前もハリーだったと思うけど…)を、事あるごとに巻き込むから、手に負えない。ブツクサ文句を言いつつ、父親に付き合う息子とのコンビネーションが良かった。
 どなたか、このドラマを見ていないだろうか…?                                                                                                   25th December 2006

 
映画

薔薇の名前 (1986年 主演:ショーン・コネリー)
 確実に20世紀の名著と言えるであろう、ウンベルト・エーコの同名小説の映画化。無論、小説の要素を映像化し切れている訳ではないが、かなり出来の良い作品。「バスカヴィルのウィリアム」や、「アドソ」、「初歩だよ」など、ホームズへのオマージュも散見できる。
 ショーン・コネリーは最高に格好良く、クリスチャン・スレイターは果てしなく可愛い。暗く、寒々しく、迷宮然とした修道院の様子が素晴らしく、また聖歌を歌うシーンは、音大の中世音楽の授業にも使われた。本好きにもたまらない作品。

ザ・スティング (1973年 主演:ポール・ニューマン,ロバート・レッドフォード)
 主役はペテン師たち。秀逸なキャラクター造形、完璧な脚本、効果的な音楽。この映画は絶対に見なければいけない。だから、雑記でも語っている。

オリエント急行殺人事件 (1974年 主演:アルバート・フィニー)
 超豪華出演陣が圧倒的な名作。フィニーのポワロに慣れるには少々時間がかかるが、とにかく出来が良いので、これも見なくてはいけない。むしろ、原作よりも映画の方が良いのではないかと思わせるほど。白眉は若きマイケル・ヨーク(熱血青年!),ショーン・コネリー(眉毛〜!),ローレン・バコール(ゴーウジャス!)。衣装も、セットも完璧。

ナイル殺人事件 (1978年 主演:ピーター:ユスチノフ)
 見なければ良かったとさえ思うほど、良い所が一つも無かった作品。中古費用500円さえも惜しい。

名探偵登場 (1976年 主演:沢山)
 様々な探偵のパロディが楽しくゴッチャになったは良いが、ストーリーは破綻している。あれは何だったんだろうかと、遠い幻のような記憶にとどまる程度。

シャーロック・ホームズの冒険 (1970年 監督:ビリー・ワイルダー)
 細かいネタや、雰囲気は良く出来ているのだが、ストーリーの運び方のバタつきがどうも鼻につく。ワトスンに魅力が無いのも残念。最後のクライマックスは見ているこっちが、どうしようか思うぐらい、しょーもない展開だった。

帰ってきたシャーロック・ホームズ (1987年 主演:マイケル・ペニントン)
 冷凍睡眠から目覚めたホームズが、探偵をしているワトスンの曾孫娘ジェーンと共に1980年代のアメリカで活躍するという、設定的にはダメっぽい映画だが、これがかなり面白い。登場人物の名前などに現れるホームズネタも楽しいし、大家のおばさんがジェシカ・フレッチャーの本を読んでいたりする。
 特に、穴掘り中の会話が大好き。ジェーンの離婚の原因となった夫の浮気相手の話になって…「その、彼女は…」「彼女じゃないわよ。」…最高。ジェーンの世話焼きオヤジと化すホームズも中々良かった。

シャーロック・ホームズの素敵な挑戦 (1976年 主演:ニコル・ウィリアムソン)
 ホームズのコカイン依存症をどうにかしようと、ワトスンがウィーンにホームズを引っ張って行き、その先で活劇が演じられる作品。大筋の事件はどうでも良さそうな話だが、フロイト先生が格好良い。そして、幻想としての「モリアーティ教授」という説明が中々面白い。しかも、それがサー・ローレンス・オリヴィエであるところが凄い。


 
日本のテレビ

あぶない刑事
 探偵とはかけ離れているが、外せない刑事ドラマ。兄妹そろって、時間になるとテレビの前に並んだのが懐かしい。ダンディ鷹山とセクシー大下、格好つけているくせにお馬鹿で素頓狂。男二人コンビ芸の最高峰。私がより好きだったのは大下勇次の方 ― いや、柴田恭兵か。あの首の細さと格好良さと、あの声、あの演技。
 一番好きなシーンは、函館ロケを敢行した「結婚」の終盤。直立不動のタカの胸に、ユージが耳を当ててひとこと、「誰かーッ!!」

名探偵コナン
 アニメに関しては門外漢の私だが、この作品は学生時代によく見ていた。子供向けにしてはよく出来ているという感想もあるが、最近見たところ、どうやらネタギレになってきたらしい。「黒の組織」とやらはどうでも良いような気がする。動機に復讐が多いのもマイナス。
 映画は作品によって、出来に差がある(最近は見ていない)。
 私は灰原さんが好きなので、工藤君はぜひとも灰原さんとくっついていただきたい。よろしく。

名探偵ポワロとマープル
 NHKが放映した、「世界初のアニメ化クリスティ」とのこと。アニメを見る習慣のない私には、毎週チェックする事さえ大変だった。ほぼ原作に忠実な作りで良いのだが、何せ声優に大根が多くて困った。やはり声優は専門家に限ると確信する(ようはBooshの声優は専門家でお願いしますと、訴えている)。
 結局は、ドラマの出来の良さを再認識させるだけの存在になってしまった。子供たちへの、導入部分としては良かったのかも知れない。それにしても、どうして顔の半分が目なんだろう…?

                                                    6th January 2007

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