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No.27 蛭ヶ岳
ユーシンロッジに一泊して丹沢の最高峰の蛭ヶ岳(1673m)に登りました。同行した弟とは三十数年振りの山行です。

日時 2004年(平成16年)1月27日(火)
天候 曇一時晴
同行 弟

所要時間
ユーシンロッジ(6.50) ←35分→ (7.25)登山道入口(7.35) ←3時間55分→ (11.30)昼食(11.50) ←35分→ (12.25)棚沢ノ頭(12.30) ←15分→ (12.45)鬼ガ岩(12.50) ←30分→ (13.20)蛭ヶ岳(13.35) ←20分→ (13.55)鬼ガ岩(13.55)  ←20分→ (14.15)棚沢ノ頭(14.15) ←2時間5分→ (16.20)登山道入口(16.30) ←35分→ (17.05)ユーシンロッジ

山行概要

鬼ヶ岩から見た蛭ヶ岳
鬼ヶ岩から見た蛭ヶ岳
蛭ヶ岳山荘のホームページに1月17日の雪で蛭ヶ岳の積雪が1mになり、主脈ルート以外は入山困難とあったので、登るのは次の機会にと思ったのですが、念のため山荘の事務局に電話で状況を確認すると、頂上の積雪は30cmほどに減り、登山道の雪も踏まれているとのことでした。ただし、私が今回予定しているユーシンからのコースの状況は分らないとのことでしたので、取りあえずユーシンロッジまで行ってみることにしました。ユーシンロッジに通じている玄倉林道は入口近くにゲートが設けられ、一般車の通行が禁止されていますが、ユーシンロッジの宿泊者はこのゲートのカギを貸してもらえるので、ユーシンロッジに泊まれば、ロッジまで車で行くことができます。ただし、林道はだいぶ荒れており、こぶし大から直径20cmほどの落石が路面に散乱していて、あまり気持ちの良い道ではありません。

前日の夕方ユーシンロッジに着いて管理人の老夫婦に、蛭ヶ岳から下ってきた人の有無やコースの状況を聞いてみましたが、最近蛭ヶ岳から下って来た人は無く、コースの状況は分らないとのことでした。また、熊木沢を詰めて蛭ヶ岳へ登るルートは道が分りにくいので、棚沢ノ頭に出る尾根道を登るように勧められました。更に、熊木沢出合にあるこの尾根道の入口は標識が無くて分りにくいからと、丁寧にその場所を教えてくれました。

結局ユーシンから蛭ヶ岳へ登るコースの状況は良く分らなかったのですが、棚沢ノ頭へ出る尾根道を行ける所まで行くことにして、眠りにつきました。この日の宿泊客は我々二人だけで、好きな部屋を選んで良いとのことでしたので、和室にして暖房用のコタツを借りて眠りました。部屋の中でも吐く息が白くなるほど冷え込みましたが、このコタツのおかげで寒さは感じずに眠ることができました。

当日の朝はうす曇でした。箒杉沢と熊木沢が合流する熊木沢出合は川幅が非常に広く、河原にまだら模様に雪があり、日があたっていなかったためか荒涼とした感じがしました。ここで塔ノ岳へ向かう道と分かれて(この分岐に導標がありますが蛭ヶ岳方面の表示はありません)、左の河原の方に下り、箒杉沢にかかるコンクリート製の橋を越えるとすぐ右側の杉林の中に尾根道の登山道入口がありました。入口には小さな石積みと杉の木の幹に書かれた赤い矢印がありますが、導標はありません。私が持っているガイドブックには「・・・熊木沢出合になり、右に塔ノ岳への道を分ける。左折して熊木沢に下る林道に入る。箒杉沢を渡ると、その先五十メートルほどで右の樹林の中に延びている道が登山道である。指導標があるが、見落としやすいから注意したい。」とありますが、指導標はありませんので、指導標の有無を当てにしていると入口を見落としかねません。

この入口で身支度を整え、尾根道を上り始めました。登山道に雪は殆どありませんでしたが、一度降った雪が融けて凍っている道が続いているので、取りあえず軽アイゼンを着用して様子を見ることにしました。軽アイゼンを着用するのは後にも先にもこれが初めてですが、軽くて思ったよりスリップに対しては有効で、その効用を見直しました。登山道を登り始めてしばらくは予想通りの急登が続きました。この急登の間に2回、熊木沢側へ崩れているガレ場をトラバースしますが、固定ロープやクサリが無く足下からかなり下まで崩れているのが見えますので、緊張感を覚えます。

登りが緩やかになってくると共に雪が多くなり、しばらくすると登山道は雪に覆われてすっかり見えなくなりましたが、数日前に登ったと思われる単独行者のトレースとテープがありましたので、これを目当てに先へ進みました。弁当沢ノ頭は気が付かないうちに通り過ぎてしまい、これを下りきった鞍部で少し長い休憩を取りました。ここまで来ると雪が深くなり、軽アイゼンは効かなくなりましたのでアイゼンに履き替えました。余談ですが、アイゼンは私も弟も30年以上前に使用していたもので、私のアイゼンは鍛造の8本爪です。今では鍛造のアイゼンは市販されていませんが、当時最軽量の製品で想い出深い私の登山用具の一つです。

ここまで、ペースが上がらないのが気になっていましたが、雪はさほど深くは無く、曇っていた天気も晴れに変わり、まばらですがテープが有って前述の単独行者のトレースも残っていましたので、先へ進みました。このあたりまで来ると、鹿のトレースが彼方此方に出てきますので、これに惑わされないよう気を使いました。面白いことに、単独行者のトレースより、鹿のトレースの方が忠実にテープをたどっている所が随所にありました。鞍部を過ぎるとまた急登が始まりますが、この急登で同行した弟のペースがドンドン落ち出しました。弟は完全にバテてはいませんでしたが、鞍部から1時間ほど歩いた所で、弟のペースに合わせて蛭ヶ岳まで行った場合、明るいうちにユーシンロッジまで戻れないことがはっきりしました。いくつか選択肢を考えましたが、結局弟は陽だまりで待機し、待機場所へ戻る時間を決めて私だけが蛭ヶ岳まで行く、ということになりました。

それまでの歩行時間やまわりの景色から、稜線の棚沢ノ頭まで10分も歩けば着くと思って、弟を残して一人先へ進みましたが、このあと棚沢ノ頭まで30分以上かかりました。一人で歩き出した後、すぐガレ場があり、これを越えると痩せ尾根をたどりますが、ここでアイゼンに雪が付いて少々難渋しました。しかし長時間ではなかったので、棚沢ノ頭には疲労感を覚えずに着くことができました。ここから始まる稜線の登山道は雪がしっかり踏まれており、アイゼンが気持ちよく効いて、登りも下りも快調に歩けます。ここまで来ると目指す蛭ヶ岳は目の前で、頂上へ向かう登山道や蛭ヶ岳山荘が手にとるように眺められます。暗黄色の笹原に延びる白い登山道が印象的でした。日が射して、風が全くありませんでしたから、時間があれば周りの景色を楽しみながらゆっくり稜線歩きを楽しみたかったのですが、時間が時間でしたので忙しなく写真を撮りながら先を急ぎました。


蛭ヶ岳のルートマップ鬼ヶ岩のクサリ場を下って蛭ヶ岳の登りになるとさすがに頂上まで一気に登ることができず、数回立ち止まって息を整えました。蛭ヶ岳の頂上近くなり、黙々と下を向いて歩いていてヒョッと顔を上げると黒い犬が目の前に音も無く現れ、少々驚きました。我が家の柴犬より二回りほど大きい一見おとなしそうな犬でした。この犬に先導されるような形で蛭ヶ岳山荘の前まで来ると小屋番がいましたので簡単な挨拶をして、小屋の脇の頂上の広場に向かいました。鬼ヶ岩あたりまでは、稜線に日が射していたのですが蛭ヶ岳の登りにかかった所で、太陽が雲に隠れてしまい、蛭ヶ岳の頂上ではあいにく日はすっかり翳ってしまっていました。しかし眺望は素晴らしく、昨年から登り始めた横浜近郊の山の殆どを眺めることができました。蛭ヶ岳には予定より遅れて着きましたので、ここでもバタバタ写真をとって帰途に着きました。

蛭ヶ岳から下り始めると、鬼ヶ岩が真正面に見えますが、丹沢表尾根の烏尾山から見た三ノ塔とよく似ています。帰途は写真を撮るまいと思って歩き出したのですが、こんな風景を見るとつい足を止め、写真を撮りたくなります。結局帰途も写真を撮りながら歩きましたので、急いだ割には時間がかかり、弟との待ち合わせ場所には、約束した時間よりだいぶ遅れて着くことになりました。弟はすっかり元気を回復しており、下りは逆に私の方が少々遅れ気味になりました。弁当沢ノ頭から先の急坂が随分厳しく感じられ、熊木沢出合の登山口に着いた時は、本当にヤレヤレという感じでした。ここまで来て振り返ると蛭ヶ岳はすっかりガスに包まれており、小雪が舞いだしました。ここからユーシンロッジまでの林道歩きは随分長く感じられました。

今回はダメもとで出かけましたが、天気に恵まれ幸い目的の山頂まで行くことができました。ただし、安全登山の観点からは、弟を待機させたことと午後5時まで歩いたことが心に引っかかります。でも雪山はやはり魅力的です。この日会った登山者は2人でした。下山後、小山町のゆったり湯に入り、汗を流して帰りました。

登山道入口 熊木沢出合の登山道入口
赤いペンキマークと小さな石積みがあるだけで導標は無いので見過ごさないよう要注意
登山道へ入るとすぐ急登が始まるが、階段が無いのが救い
弁当沢ノ頭付近の雪道 弁当沢ノ頭近くなって坂が緩やかになると共に雪が多くなった
ルート探しに注意が向いていたためか、弁当沢ノ頭は気が付かずに通り過ぎた
鞍部から見た富士山 弁当沢ノ頭を下りきった鞍部に来ると左手に富士山が望める
ここから2回目の急登が始まる
棚沢ノ頭の前の痩せ尾根 棚沢ノ頭の前の痩せ尾根
ここまで来ると登りは緩くなる
この日はここが一番雪が深く、20cmほど雪の中に足がもぐった
棚沢ノ頭 棚沢ノ頭
登山道入口から約5時間かかってここまでたどり着いた
ユーシン方向を示す導標と蛭ヶ岳、丹沢山方向を示す導標は別々に立っている
ここでこの日2人目の登山者と出会ったが蛭ヶ岳の方から来て丹沢山の方へ向かって行った
棚沢ノ頭から不動ノ峰を見る 棚沢ノ頭から不動ノ峰方向を見る
不動ノ峰はすぐそこに見えたが今回は行くのをあきらめた
棚沢ノ頭付近の眺望 棚沢ノ頭付近の眺望
檜洞丸や大室山が間近に見える
南アや八ヶ岳は霞んで見えなかった          
稜線の風景 棚沢ノ頭から鬼ヶ岩までは気持ちの良い稜線が続いた
鬼ヶ岩ノ頭付近の尾根道 鬼ヶ岩ノ頭付近
このすぐ先が鬼ヶ岩
鬼ヶ岩 鬼ヶ岩
説明板に「蛭ヶ岳方面か見ると頂上の2つの岩が鬼のつののように見える」とあった
上部にはクサリが取り付けられているが我が家の柴犬でも下れそうな斜面だった
この日青空が見えたのはここまでで、この後は曇天の下を歩いた
蛭ヶ岳山荘と飼い犬 蛭ヶ岳山荘とこの小屋の飼い犬
山頂にいる間、終始私と付かず離れずの距離を保っていた
蛭ヶ岳頂上 蛭ヶ岳頂上
檜洞丸の向こうに富士山が見えるはずだったが僅かに裾野が雲の下に見えただけだった
ここで手当たり次第に写真を撮ったがコントラストの無い寝ボケたものばかりだった
鬼ヶ岩全景 蛭ヶ岳から見た鬼ヶ岩
ボリューム感は及ばないが烏尾山から見た三ノ塔と良く似ている
熊木沢出合から見るガスの中の蛭ヶ岳 熊木沢分岐の登山道入口から振り返ると蛭ヶ岳はガスに包まれていた

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