カスタムワールド5展示&アームズマガジン2001年6月号作例用に製作した
米陸軍CVC(Combat Vehicle Crew=戦闘車両乗員)です。
製作してからHPアップまで、なんでこんなに時間がかかったか、というと
HOT TOYSさんから“製品化”の話をいただいていたから、なのです。
といっても、メーカーさんから「アップしちゃダメ」と言われてたわけじゃなくて
昨今の“香港フィギュアメーカー仁義無き戦い”の状況を考えての自主規制だったんですが…
で、“製品”の出荷も開始されたことだし、もう良かろうってことで晴れて情報封鎖解除となりました。
さすがに作ってから1年半も経つと「当時は良い方法が思いつかなかったけど、今なら出来る」
と言うようなことも出てきたりするワケで、その辺のフォローも交えつつ、ご覧いただきたいと思います。

CVC全身3面之図。ユニフォーム&装備製作=松井さん。ヘルメットとゴーグルのみ製作=私。
フィギュアはドラゴンの“デイブ”を使用、薄胸・短足ボディに改造してあります(製作・松井さん)。
設定的には80〜90年代あたりのスタイル、って事になりますが、
実際にはこれだけ全部CVC専用装備で固めてる例は少ないみたいです。
(その分BDUや歩兵用ボディーアーマーと組み合わせたり、って楽しみ方が出来るわけですが)
それにしても…いや〜、改めて見てみると、地味ですね〜これは
個人的には戦闘機パイロット>ヘリパイの次くらいに好きなスタイルなので大満足、なんだけど…
よく製品化しようって気になったモンです(って、私が言っちゃお終いだが(^^;)(KAZ)

いくつか集めた資料だと、実際の戦車兵の装備ってかなりバラバラです。
こんな風に上から下まで全てCVC専用装備で固めてる写真にはついに出会いませんでした。
まあ、“だから作ったんだ”と言えなくもないかも。(松井)

CVCヘルメット(左・中)とそのシェル(右)。実物同様シェルとライナーは分離可能…なのですが、
接続部は実物のスナップボタンが再現できなかったので、針金製のフックで引っかける方式に変更してあります。
無線コード途中のクリップや先端のプラグ等の小物を
21stのCVCヘルメットから流用した以外は基本的に全て自作です。(KAZ)

こういう風に、縫製品と機械のパーツが絡み合っている装備品っていうのが
1/6にした時に一番ドキドキします。(松井)

ライナーはナイロンメッシュとサテンリボンを接着剤で貼り合わせて製作。
(最初はミシンで縫ってたんですが…負担がかかりすぎたのか、途中で動かなくなっちゃいました(^^;)
内蔵されている“パッド”は1ミリ厚のウレタンスポンジ(ライオンボード)。
本当はもうちょっと厚みがあるんですが、これ以上厚くすると被れなくなっちゃうので妥協。
シェル、ライナーとも形状的に今ひとつ、納得がいっていないんですが…
(この辺の不満はHOT TOYSの製品版でほぼ解消できました)
後頭部のラベルは実物をデジカメで撮影、縮小してプリントアウトした物を貼り付けてあります。
マイクロフォンのアームは毎度おなじみアルミ針金細工。
先端のマイクのみ21stのヘルメットから流用してます。(KAZ)

ライナー内側。首のうしろ部分に左右のヘッドフォンを繋ぐケーブルを収納するギミックがあります。
実は、この部分の表側には、サイズ調節用のベルトがあるんですが…
このギッミクが嵩張りすぎて機能しなくなってしまいました(^^;
よってHOT TOYS版では省略してありますが
再現するのは簡単なので、こちらを優先したい方は画像を参考に改造してみてください。(KAZ)

12インチミリタリーカスタム好きの人には
「ダメージや汚れまで再現して、出来ればベースまで作ってディオラマにしたい」
というディスプレイ派(?)の人も多いですけど、僕(松井)の場合は
「手にとって装備を着けたり外したりすることが出来る、機能を再現した模型が好き」なんです。
そうすると、まあアクショントイ派ってとこでしょうか。
(もちろん実際はそんなにはっきりと二分できるわけはないですけど)
例えば「写真に撮って(あるいは、ベースに並べて)それらしく見えればいい」なら、
装備品に埋もれてしまう戦闘服(やカバーオール)の細かい仕上がりなんて
二の次になったりしちゃいますけれど、
上記の様に、手にとって遊びたいアクショントイ派としては、
やっぱりそういうベーシックな部分だからこそきちんとしたものを作ってみたいわけです。
そんなことを考えてた時に、KAZさんの「次はCVCヘルメットを作るつもり」というセリフに
相乗りさせてもらって作ったのがこのCVCカバーオールなのでした。
実際に作るにあたっては、なにしろこういうシンプルなルックスなんで、
やっぱり一番肝心なのは生地選びです。
1/6カスタムを始めて以来、特に目的もなく生地屋さんに寄っては
いつか使えそうな生地を選んで買ってくることを繰り返してるんですが、
そうして溜まったミリタリーカラーの生地の中からドンピシャなものを選びました。
生地に納得できないと、どんなに縫製に手間を掛けても満足できるものにならないです。(松井)

単なる地味な“ツナギ”に見えるけど、メチャメチャ手間かかってますよね、これ。
ふと気になって数えてみたら、1着にファスナー16本も使ってるし! ポケットだらけだし!!
これだけのポケット、ホントに必要なの? って気もしますが
それぞれに用途が想定されてるはずなんですよね…おそらく(^^;(KAZ)

当時ほしくて欲しくて探し廻ったマイクロサイズのファスナーなんですが
この頃ようやく入手して、喜んで大量に使っています。
しかし、ファスナーは全てライブにしておきながら、ポケットの内側の袋は省略しちゃってますね。
これを作ってる時には写真を見ているだけで実物を手にとっていなかったせいか
あんまり意識することもなくあっさり省略しちゃってました。
ベルクロはやはり薄手のものをいろいろ探していて入手した「モールドマジック」というものです。
見つけたはいいものの、バリエが白と黒しかなくって、色はガマンするしかないかなあ…と思っていたのですが、
KAZさんの作品になにげなくオリーブグリーンの薄型ベルクロが使われているではないですか!
驚いて聞いてみると「バービーに使われてる極薄ベルクロの白いのを染めた」とのこと。
「なるほど、染めればいいのか!」いわれて見れば納得だけも、その時の自分には思いもよらなかったやり方。
1/6カスタムにはこういう事がとても多くって、仲間がいるのは掛け値なしでプラスになります。
さて、というわけで白いものを染料でオリーブグリーンに染めるのですけど、
やはり普通の生地を染めるようには簡単にいかなくって、
ポリエステル染色補助剤も使って2〜3時間煮続けてようやく染まりました。
最近、ホースケアプロダクツというメーカーの「メカニカルファスナー」という
さらに薄いものが出回ってるんですけど、
これが前記の「バービーに使われている」ものとほぼ同等の厚み。
たぶんこれ以上薄い製品は存在しないでしょうね。(松井)

CVCカバーオール最大の特徴、背面2箇所の開口部も当然再現されてます。
背中の上側は中にベルトが収納されているので、おそらく車内で気絶した場合などに、
狭いハッチから引きずり出してもらうための“取っ手”になるのだと思うのですが
腰後ろの開口部は何のための物なんでしょうねぇ?(もしかしてトイレ用?)
フロントのファスナーが上下両方向から開閉出来るのも実物同様(もしかしてこれもトイレ対策?)。
さすがにこっちはHOT TOYS版では再現されませんでした。
そういえば、ポケットに袋が付いてないのも“原型通り”でしたね(^^;(KAZ)

カバーオール製作中に、肩の目立つところにジョッキリと穴を開けてしまいました!
全体を裏返して、布をひねりながら余分なところにハサミを入れたりという
ややこしい事をしていると、たま〜にこういうことがあるんです。
間違えて余計な部分まで重ねてミシンを掛けてしまうなんてこともたまにあるんですが
縫ってしまったんなら解けばいいんですけど、切ってしまったのは…どうしようもないですね。
全体の工程も8割方進んでいて、一番面倒なファスナーの縫いつけも終わったところの事で、
初めからやり直しなんてとんでもありません。一瞬途方に暮れてしまったのですが……
カスタムの資料として実物軍装品もなんだかんだと集めて
その実物を手にとって細部を見ていると、なんらかの補修をされているものが
とても多いことに気がつきます。破れたところを繕ってあったりするのはあたりまえ。
そこで、むしろ目立つように補修跡を再現(?)してやろうと思いついて
なんとか事なきを得たのでした。(松井)

CVC専用ボディーアーマー。構造的には非常にシンプルです。
実物はカバーオールとほぼ同色なんだろうけど、
1/6だとあまりに単調になっちゃうので微妙に色味を変えました。
“本来同じ色なんだろうけど、ちょっと違う色になってる”のは軍装品の基本(?)だし。
表(外)側と裏(内)側の生地の色も、参考にした実物通り、少し変えてあります。(松井)

この“色味のシフト”はHOT TOYS版でもほぼ正確に再現されてますね。
カバーオールもボディーアーマーも実物はフライトスーツと同系のダークグリーンなんですが、
松井さんが作ったのは、両方とも色味を明るい方に振ってあるんですよね。
さらにボディーアーマーは色相もベージュにシフトしてある。
それぞれ単独で見ると「?」なんですが、全部着用するとちゃんとまとまってる!
スケール。エフェクトってのはこういうことか…と納得させていただきました。(KAZ)

CVC用ガスマスクケース。歩兵用のM17ガスマスクケースは面白い形をしてるのに、
CVC用はこんなものまでジミ。なんか、妙にあっさりした形です。
ガスマスク本体はかっこいいんですけど。
ステンシルはアイロンプリントで再現…したんですが、
熱に弱い化繊の生地を使ったものだから、完成後に転写するのは厳しかった…。
金具は洋白版と洋白線で自作してます。このくらいならエッチングなんて面倒なことをしなくても
ピンバイス/カッター/ヤスリ/ニッパーというプラモ工具だけで充分です。(松井)

タンカース・ブーツ。頑張って自作したんだけど、正直いっていまふたつくらいの出来ですね。
ソールの曲面はやはり本革に型を付けるのがいいんだと思うんですが、
それには足型から造らなくちゃなりません。
とりあえずてっとりばやくと思って正攻法を避けたため、こんなのになってしまいました。
(市販のソフビブーツから爪先部分を切り取って、その上に合皮を被せてます)
さて、ブーツを自作すると履かせたり脱がしたりがとてもわずらわしくなります。
特に今回のように装備全体を作る時は、作っている最中に実際に人形に着せてみて
ブーツとズボンの丈の重なり具合の様子をみたりということが必要なのですが
そういう時にとても不便なのです。
そこで、ボディの足首あたりをカットしてボールペンのキャップ部分を埋め込んで
足首を取り外しできるようにすることを思いつきました。
もちろん、取り外し出来るようにするだけならプラ棒とポリキャップでもいいんですが、
出来上がったものを手にとった時に、取り付けの深さがはっきりしなくて
ズルズル動いてしまうと気持ち悪いのです。
「飾っている時より、手にとっている時が本番」のアクショントイ派(まだ言ってる…)としては、
やはりカチッと位置が決まったほうが断然いいのです。
ボールペンのキャップはクリック感もいいし、安いし、といいことづくめかと思ったのですが、
実際完成すると、カチッっと気持ちよくはまった後……
軽やかにくるくると廻ってしまったのでした……………………。(松井)

偶然なんですが、HOT TOYSのボディーも足首が着脱可能になってます。
着せ替えの度にブーツを脱がせなくて良いってのはホントーに楽!
こういった履かせるのが大変なブーツの場合は特に…ですね。
ちなみにHOT TOYSのフィギュアの足首は“くるくる”しません(^^;(KAZ)

ショルダーホルスターは、一番目立つ『US』の刻印を省略しちゃってます。
この時にはどうやって再現すればいいのか全く分からなくって、
「とりあえず完成だ〜」と発表しちゃいました。
この後カスタム仲間の戸叶さんに、戸叶さん自作の刻印まできちんと再現された
同じ型のショルダーホルスターを見せてもらったんですけど
やはり全然かっこよくって、くやしかったです。(松井)

これって第二次大戦中から使われているレザー・ホルスターなんですが
戦車兵の使用頻度が非常〜に高いのはなぜなんでしょう?
(さすがに最近はナイロン製の物を使ってるみたいですが)
何だかベルトが車内のレバーとかに引っかかりそうな気がするんですけど…
単に“他になかった”のかな?(^^;(KAZ)

ダスト・ゴーグルはハスブロGIジョーの物を原型にしてバキュームフォームで製作。
裏面にはスポンジを貼ってあります。
この時点では、HOT TOYSのもドラゴンのもまだ出てなかったんですよね…(KAZ)

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