ニッコウキスゲの尾瀬 (2/2)

7月21日 晴れ

5時出発を目指して3時起床。テント内は15.7℃だった。空には満天の星。山ノ鼻のテント場は水はけがよくないので、降られなくてよかったと思った。テントを撤収してから、24時間開放の休憩所に移動してカレーうどんの朝食をとった。

5:25 山ノ鼻発(高度計:1315m)

見本園
もやがゆらぐ朝の見本園(05:32)
道
整備されている登山道(05:53)
出発は目標の5時を30分近く過ぎた。
のっけから見本園を突っ切っていかねばならない。小屋から20人くらいのツアー客が出てきて見本園を早朝散歩していた。昨日のこともあったので熊が心配だったが、これなら熊の方が逃げてしまうだろう。
この先、山頂までは歩いたことのない道だ。自分が尾瀬に初めて来た頃は、この道は閉鎖されていた。なかなかの急登を行く。道は整備されている。木道区間も多いが、木枠の中に石を埋め込む方式の箇所もあり、こういったところはゴツゴツしている上に滑りやすい。

6:11 森林限界の看板

燧
振り返ると燧が見える(06:44)
露岩が現れて、振り返ると燧がくっきりと見えた。道は徐々に蛇紋岩に変わってきた。ところどころで展望が得られるが、だいたいはまだ森の中だ。
森林限界の標識があるが、それでもまだ森の中の道が続く。この2日間は雨は降っていないはずだが、道にはどこからか湧き出した水がちょろちょろと流れていて、湿っているところが多かった。

7:05 クサリ場

クサリ場
クサリ場と尾瀬ヶ原(07:08)
階段
木の階段がかかっている蛇紋岩の道(07:22)
そうこうしているうちにクサリ場まで出現。このクサリがまた結構重い。女性登山者は取りまわしに苦労していた。クサリ場は2箇所で、その間にベンチが1箇所あった。
いつの間にか完全な露岩帯に差し掛かっていた。道はずっと階段が続く。階段はあまり好きでないが、それでもツルツルの蛇紋岩がゴロゴロしているよりはずっと歩きやすいはずだ。
そういえばこの道は上り専用となっているのだが、その理由として「登山者の安全のため」という一文があり、これが何故だかサッパリ分からなかった。しかしそれがここでようやくわかった。下りに使うにはツルツルすぎて怖いのだ。

7:52 高天原下部

花
イワシモツケとシオガマの群落(07:52)
クサリ場を通過しても階段の単調な登りが続く。周囲には花は増えてきたが、なんだかパッとしない。そこはかとなくガッカリ感が漂い始めたころ、突如として大花畑が出現した。クサリ場を通過しておよそ30分ほどたった頃だ。
一番目立ったのはタカネシオガマのピンク。それにホソバヒナウスユキソウが混じる。ほかに印象的だったのは、ひときわ白いイワシモツケと、数こそ少ないが鮮やかなタカネバラ。
風が出てきて、涼しくなった。

8:08 高天原(1985m)

階段
花畑の中、階段が空へと続く(08:00)
ホソバヒナウスユキソウ
ホソバヒナウスユキソウの群落(08:27)
こういうときに現れる花畑は草原になっていることが多いように思うが、ここは蛇紋岩の岩礫だ。そういう先入観があるせいか、同じ蛇紋岩の早池峰山に雰囲気が似ているような気がする。しかし早池峰山ほどの巨岩はなく、この至仏山の方がたおやかな印象。
花畑の中を20分ほど登るとベンチがあり(この間ずっと木の階段だった)、そこに高天原の標識があった。ザックを下ろして大休止し、花々の競演を楽しんだ。

8:47 至仏山登頂(2085m)

燧
至仏山頂からの尾瀬ヶ原と燧ヶ岳(08:56)
山頂
至仏山頂のようす(09:35)
標識のあるベンチから少しすると花がまた少なくなって、道はさらに緩やかになった。20分くらいでようやく山頂についた。
見事な快晴で、遠くは浅間などが見えた。はるか北に長大な山脈が見えた。富士山は見えなかった。日差しは強く暑かったが、風があったので辛くはなかった。尾瀬という場所柄か、それとも夏休みだからか、カラフルなウェアでランドネ的にキメた若い山ガールが多かった。

9:46 至仏山発(2085m)

小至仏
小至仏(中央)を目指して下山開始(右奥は上州武尊)(09:56)
花畑
色とりどりの花畑(イブキジャコウソウ、タカネシオガマ、ホソバヒナウスユキソウ)(10:11)
帰りのバスの時間が気になったので予定より少し早く下山を開始。
下りは神経を遣うツルツルの岩の道。ハイマツと岩の合い間にウスユキソウが咲いている。もう時期が遅いのか、中央の花の部分は茶色く枯れているものが多かった。

10:30 小至仏山(2025m)

至仏山
小至仏から至仏山と燧ヶ岳を望む(10:40)
オゼソウ
繊細な花を咲かせるオゼソウ(11:02)
下りきった鞍部を登り返して小至仏山へ。山頂は岩がちで狭かった。相変わらず眺めはよく、なだらかな至仏と、ゴツゴツした燧の対照的なフォルムが見てとれた。眼下にはオヤマ沢田代の湿原がよく見えた。
下っていくとチングルマの花畑があった。雪が融けたばかりということなのだろう。こんな夏山的な花畑を見るのは2年ぶりだ。と、そこでついにオゼソウを発見。おー、こんなところに咲いているのか。ガイドブックを取り出して写真と見比べ、間違いないことを改めて確認。図鑑なんかはオゼソウ単体のアップばかりなので、チングルマと同居とは意外な感じだ。
オゼソウは、手持ちのガイドブックには「繊細な花」とか書いてあるのだが、自分の第一印象は「地味な花」ということ。モノは言いよう、なのである。実際、我々がはしゃぎながら写真を撮っている間、オゼソウがそこにあると気づいた人はひとりだけで、ほとんどの人は見向きもせずにすたすたと下っていった。登りのときに見飽きたから、なのかもしれないけど。

11:19 オヤマ沢田代(1905m)

オヤマ沢田代
ワタスゲの揺れるオヤマ沢田代と日光白根山(11:22)
オヤマ沢田代
とても静かなオヤマ沢田代(11:22)
このあたりから樹林に入る。下りきると平らになり、そこがオヤマ沢田代だ。ワタスゲの穂がたくさんあって風にそよそよと揺れていた。今回見た中では、白砂湿原とここが一番密集していたように思う。まさにグランドフィナーレ。
それから10分ほど下るとオヤマ沢の水場。数人が木陰で休んでいた。標識には鳩待峠まで2.9kmとあった。山頂から鳩待までのコースタイムは2時間ほどだが、下りが苦手な我々はここまでですでに2時間かかっていた。

12:36 鳩待峠着(1495m)

燧
トカゲ岩付近で燧ヶ岳は見納め(11:51)
あとは延々と林の中を下る。高い木が少なくて陽がさすので暑かった。小ピークを過ぎると、道が緩やかになって木道区間が増えてきた。オヤマ沢から下は鳩待まで残り2kmと1km地点に標識があり、よい目安になった。残り2kmの地点で測ったラップタイムは25分だったが、最後の1kmは15分程度で踏破できた。それにしても暑い山だった。
とりあえず、12:45発のバスに飛び乗った。

下山

バスを戸倉で降り、往きが快適だったので帰りも高速バスを利用することにして席を予約し、バス連絡所のすぐ隣にある東電の広報施設「ぷらり館」で風呂に入った。浴室はあまり広くなかったが空いていたのでよかった。なかなかよい湯で肌がつるつるになった。
風呂から出てバスを待つ間に近辺をぶらぶらして、よくよく見ると結構あちこちに日帰り入浴できる宿があることがわかった。
バス停近くの酒屋で地ビール「オゼノユキドケ」を2本買い、車内で乾杯して山旅の締めくくりとした。
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