甲斐駒ヶ岳 2009年9月20日-22日 テント定着

9月20日 超快晴


甲府

甲府9時発のバスに乗るために、例によって早朝の松本行き各駅停車で甲府に8:10に到着。早朝にもかかわらず、駅ビルは2階が開いていて、土産物屋やパン屋、ワイン屋が営業していた。今回はハーフボトルのワインを持参したのだが、こんなことならここのワイン屋で山梨ワインを買えばよかったとちょっぴり残念に思う。
天気はこれ以上ないというほどの上天気で、甲府駅前から甲斐駒が見えるのを初めて知った。そして甲府では例によって山梨交通の手際の悪さにイライラ。バスは4台を連ねて出発。連休2日めだというのに、かなりの人出だ。
そして広河原では、南アルプス市営バスの、山梨交通に勝るとも劣らないテキトーな客さばきにイライラ。山梨ってのはどうしてどこも・・・おっと、悪口はやめにしておこう。

北沢峠

テント場
5連休の駒仙小屋テント場は大賑わい(13:05)
バスを降りて急ぎ足で駒仙小屋のテント場に着いてみると、そこは最盛期の涸沢を彷彿させる賑わいぶりだった。いつもはテントの数を数えるのだが、もうそんなことしてる余裕はない。受付時に小屋の人に聞いてみたら、100はいっている、ということだった。
ここのテント場は上段・下段に分かれているがどちらもほぼ一杯で、ソロテントくらいのスペースしか空いてない。しかたないので下段を突っ切った先の河原にテントを張った。すでにここにも10張りほどのテントがあった。おそらく大雨のときは水没してしまう場所なのだろうが、背に腹は変えられない。幸い天気は安定しているが、寝るときは油断しないようにしよう。
13時過ぎにはテント設営も終わり、とりあえず昼寝。16時に起きて、夕食を作って食べた。北沢キャンプ場はバス停から近いため、大テントが多い。子ども自然教室風なグループとか、小屋の予約がとれなかった登山ツアーなんかも幕営しているようだった。そんなこんなでもう大騒ぎ。我々のエリアにはそのテのテントがなかったので、静かだった。20時過ぎには眠りについた。

9月21日 晴れ一時曇り

4時起床。テント内は6.8℃で、まあまあ寒かった。朝食は前夜の残りご飯でお茶漬けというパターンが多いのだが、この朝は肝心の残りご飯がなかったので、行動食兼予備食のパンを食べた。
トイレの混雑を心配したが、ちょうど時間がよかったのか、恐れていたほどの混雑はなかった。特に冬季用の旧トイレはボットンのために敬遠されがちで、空いていた。

5:36 出発(高度計:2005m, 温度計:14.5℃)

道
ロープを使う岩場(05:56)
サブザックで山頂を目指す。まだ寒いのでTシャツ・ウールシャツにカッパまで着て出発。下半身はいずれ暑くなることを見越して短パン・タイツだ。小屋の玄関にかけてある温度計は4℃を示していた。
小屋のすぐ前で北沢の左岸に渡り、堰堤を眺めながらゆるく登る。丸木橋で右岸に渡り返してから1ヶ所だけロープを使う岩場があるがなんということはない。ずっと樹林帯でまだまだ寒い。またまた丸木橋で左岸に渡って、小屋の発電装置が見えると急な登りをちょっとだけ登って仙水小屋到着。

6:03 仙水小屋(2150m, 12.6℃)

ナナカマド
うっすらと色付いた仙水小屋のナナカマド(06:05)
岩塊斜面
岩塊斜面を行く(06:25)
小屋の前には竹筒から美味い水が流れている。その上のナナカマドは赤い実をつけ、葉はうっすらと色づき始めていた。
小屋から樹林帯を10分ほど進むと岩塊斜面にさしかかる。岩が積み重なる斜面といえばトムラウシ山のロックガーデンを思い出すが、ここもなかなかのもの。個々の岩はトムラウシよりもはるかに小さいが、地形が谷なので、あちらにはない迫り来るような圧迫感が感じられる。

6:35 仙水峠(2280m, 17.1℃)

岩をひょいひょい歩いていてふと見上げると摩利支天が。そして間もなく甲斐駒本峰も出てきて、仙水峠着。峠では多くの人が休んでいた。甲府方面の雲海が美しかったが、逆光でまぶしかった。甲斐駒と摩利支天のコンビはなかなかの迫力だった。
そろそろ体もあたたまってきて、ここでようやくカッパを脱いだ。この先、駒津峰までは標高差486mの急登だ。木の根も張り出し、石もごろごろしてはいるが、まあまあ歩きやすい方だと思う。相棒が、木にブルーシートがかかっているとか不思議なことを言うのでどうかしたのかと思ったら、実はそれは木々の間から見える、青すぎる青空の見間違いだった。それほど天気がいいのだが、しかし樹林帯で展望がないのが残念なところ。

7:19 森林限界(2540m, 23.4℃)

仙丈
朝の仙丈ヶ岳(07:22)
針葉樹の林では、樹間から周囲の山々が見えるようになってきた。小仙丈の後ろに隠れて見えなかった仙丈も見えてきた。背後に鳳凰、そして左に塩見岳も出てきた。林は徐々にハイマツ林となった。ハイマツの下には、ハイマツを傘にするようにしてシャクナゲがずっと並んでいた。
そして森林限界を突破した。視界が開け、甲斐駒がふたたび姿を現した。また、気がつくと間ノ岳も見えていた。甲府方面の雲海は相変わらず素晴らしかった。ザックを下ろして一休みし、ウールシャツを脱いでTシャツ1枚になった。
ふたたび歩き出す。ここからは展望を楽しみながらの登りとなる。北岳・富士山など、見える山が少しずつ増えてくるのが楽しい。

7:59 駒津峰(2780m, 29.5℃)

甲斐駒
駒津峰から甲斐駒を望む(08:19)
駒津峰はかなり下の方から見えるのだが、なかなか本当の山頂にたどり着かなくてうんざり。そのうち中央アルプスと御嶽山が見えてきて、山頂が近いと確信する。登るにつれてかなり暑くなってきた。
ようやくたどり着いた駒津峰は大混雑かと思いきや、そうでもなくてちゃんと座って休憩することができた。稜線に出たことで西風にあたり、クールダウンできてほっとした。風は微風で、穏やかな山頂だった。
ここまで登ると北アルプスまで見えるが、ちょっと霞んでいたのは残念だった。

8:19 駒津峰発(2765m, 25.0℃)

岩稜
岩稜と鋸岳(08:24)
駒津峰からは今までの道とは趣きが違って、岩稜のアップダウンとなる。1/25000図だと大したことなさそうに見えるが、段差があったりザレザレだったりで意外にハードな道。油断は禁物だ。

8:42 六方石(2755m, 29.6℃)

六方石
巨大な六方石(08:44)
巨大な六方石に到着。前は小さいが広場になっていて、休憩ができる。が、ここは写真だけ撮って先を急ぐ。実は我々の直前にいた24人からなる巨大ツアーが休んでいて、追い抜く絶好のチャンスだったのだ。
六方石のすぐ先で、道は直登コースと巻道コースに分かれる。我々は巻道を選択したが、この分岐の道標は「マキミチ」なんてカタカナで書いてあるもんだからなんだかピンと来なくて、そのまま直登しそうになってしまった。ま、岩に赤ペンキでルートが示してあるから、ちょっと注意すればわかるのだけど。いずれにしても、このあたりで道が分岐することを頭に入れておかないといけない。
巻道に入るとすぐに落差5mくらいのキツい下りがあり、その後で白い花崗岩の道が始まる。

9:08 摩利支天分岐(2820m, 29.0℃)

道
奇岩の点在する道は足元がえぐれている(09:03)
斜面
見上げると気が遠くなりそうな白い斜面と青い空(09:05)
足元は、人が歩いたところが削れている。見上げると青空に向かって広がる白い山肌が雄大だ。そんな中を歩いていくと、意外なほど早く摩利支天への分岐についた。摩利支天へは帰りに時間があったら寄ることにして、ここは先へと進む。
それまで緩やかだった道はここから唐突に登りに転じ、ザレた砂道となった。摩利支天を見下ろすところで道はV字ターン。このV字の角あたりでちょっと休んだ。道じたいはザレザレだが、脇の花崗岩が恰好の休憩スペースを提供してくれる。自分はこの日は調子がイマイチで、あまりペースが上がらなかった。バテてるわけじゃないけどモードに入らない、なんか中途半端な感じ。朝食がごはんでなくてパンだったからかもしれないと勝手に推測。

9:43 甲斐駒登頂(2965m, 25.0℃)

八ヶ岳
雄大な広がりの八ヶ岳(09:50)
南ア
仙丈と北岳、南アの山々(10:56)
なんだか妙によろけながら登頂。山頂は広々としていて、かなりの人がいるはずなのにまばらに感じた。
展望は360度ばっちり。北アの方が少し霞んでいた以外はパーフェクトだった。仙丈ヶ岳と北岳を正面に眺める南側に陣取って休憩。八ヶ岳や北アは背にした岩で見えないが、すべてが見える休憩場所はないので仕方ない。
山頂ではコーヒーでも淹れようとか思っていたが、湯すら沸かさずに、なんとなくだらだらと過ごしてしまった。仙丈ヶ岳をじっと見つめていたら、少しうとうととしてしまった。気持ちよい時間だった。

11:36 下山開始(2970m, 24.4℃)

山頂にいる間に低いところに雲がわき始めていて、11時すぎには鳳凰の手前に見事な雲海ができていた。気づいたら2時間近くたっていた。ガスガスになる前に下山することにした。急いで下りればテントを撤収して15:30発の広河原行き最終バスに乗れないでもなかったが、それはあまりにももったいないので、ゆっくり下りて北沢峠に連泊することにした。
下りも巻道コースを行くので、雲海に浮かぶ鳳凰を眺めながら歩くことができた。白砂と雲海と鳳凰と富士山の組み合わせは絵になるいい眺めだった。

12:07 摩利支天分岐(2805m, 24.5℃)

摩利支天
摩利支天へはトラバースして行く(12:09)
暗くなる前に北沢峠に着けばいいので、摩利支天に寄ることにした。摩利支天のてっぺんからなら、雲海に浮かぶ鳳凰と富士山がより近くなる。
摩利支天への道は、巻道同様、甲斐駒の斜面をトラバースしていく。最後に少し登るが、途中でペンキがなくなってしまうので、ガスに巻かれたらちょっと不安になるかもしれない。摩利支天の横っ腹はカンバに覆われていて、それがほんのりと色づき始めて美しかった。

12:18 摩利支天(2830m, 24.5℃)

鳳凰
摩利支天からの眺め:鳳凰が雲海に浮かぶ(12:42)
摩利支天の山頂には信仰の山らしく宝剣や不動明王像などが安置してあった。鳳凰は近くなったが、立ち位置が低くなったために、後ろの富士山が鳳凰にかぶりすぎてしまった。
それよりなにより、甲斐駒本峰が圧巻だった。スッキリとした凛々しい姿は実にオトコマエだ。これが見られて、摩利支天まで寄り道した甲斐があったと思った。のんびりと景色を楽しむ(ぐるぐる写真)。

12:54 摩利支天発(2830m, 22.5℃)

30分ほどいたが、その間終始人が入れ替わり、摩利支天山頂は常に数人の人がいるという状態だった。雲が徐々に増えてきた。

13:06 摩利支天分岐(2790m, 22.1℃)

六方石
六方石遠望(13:14)
分岐を通過して進んでいくと遠くからも六方石が見えたが、伊那側にも雲がわいていて、時折六方石を隠したりもした。
この時間になるとさすがに登ってくる人は少なく、すれ違い待ちはほとんど発生しなかった。もう下りてしまった人が多いのか、追い抜き・追い抜かれもさほど多くはなく、のんびり歩けた。しかし無風の位置にいるため、とにかく暑い。

13:23 六方石(2740m, 26.4℃)

青空
秋空に映えるダケカンバ(13:20)
甲斐駒
甲斐駒に雲が!!(13:28)
六方石に着いた頃にはずいぶん気温が上がっていて、みんな石の影で涼んでいた。摩利支天からは30分ほどしか歩いていないので、ここは通過して駒津峰で休むことにした。
甲斐駒を振り返ると、雲に覆われようとしていた。

13:48 駒津峰(2790m, 29.2℃)

道
ガスの中を下る(14:09)
林
15分もするとカンバの林に入る(14:16)
駒津峰は日を遮るものがない。しかし弱かったが風が吹いてきたので少し助かった感じだ。甲斐駒は雲に隠れたり出てきたりを繰り返していた。すでに日が高くなり、あれほど美しかった山々は色あせて見えた。
行動食を少し食べてから北沢峠を目指して双児山方面へと下る。ここからは初めて歩く道だ。雲はこの方向から湧いていて、歩き始めてすぐに周囲はガスに包まれた。ガスの中を下りるが、時折晴れたときに振り返り見上げると、ハイマツの斜面にカンバが点在しているのがなかなかよい風景だった。
15分も歩くとカンバの林の中に入り、その後は樹林帯が続いた。林の中だが足元は岩ゴロのまんまなので、なんか違和感がある。

14:31 双児山(2650m, 21.8℃)

林
代わり映えのしない景色が延々と続く(14:44)
双児山の山頂からは駒津峰越しに甲斐駒が見えるというが、このときはまったくの雲の中だった。いちおう山頂を示す看板が立ってはいるが、山というよりは道中の小広場という趣きだった。腰を下ろして少し休む。
そしてここから怒涛の下りが始まった。南アルプスらしい、永遠に続くのではないかというような、怒涛のつづら折。しかしここのはその中でも筋金入りだ。過去に自分が歩いたことのある道では、間に平らなトラバースが入ったりなど何らかの変化があったのだが、ここには、それがまったくと言っていいほどない。

15:46 北沢峠(2060m, 18.6℃)

下りの途中でバスのクラクションが聞こえてきたが、それから後も長い長い。でももう今日はゆっくりでいいのだ、と覚悟を決めてのんびり歩く。早足で我々を抜いていく人はみな関西弁でしゃべっていた。16時発の伊那市営バスで下山するのだろう。
とにかくウンザリしてきたところでようやく峠に着いた。1時間ちょい、ずぅぅぅっっと同じ景色を見つづけていて、身体的疲労よりも精神的疲労の方が大きかった。
峠の公衆トイレで用を済ませてからテント場に帰った。峠からは10分ほどだった。

2日めの夜

テント場はちらりほらりと空きが目についた程度で、前日同様混雑していることに変わりはなかった。逆に、大テントが増えて、ちびっこが激増。騒々しさは増したように感じた。
テントに着いて休む間もなく夕飯の支度をして食べた。小屋でビールを2本買って飲んだ。歯を磨き、翌朝の食事用の湯をわかしてから、寝た。

9月22日 曇り

4:45起床。空はどん曇りだった。テント内の気温は、夜中の1時ごろに目が覚めたときは8.3℃だったが、朝起きたときは10.2℃だった。前日と違ってフライの内側は盛大に結露していた。
残りごはんのお茶漬けを食してテントを撤収したらまだ6時半だった。広河原行きの始発バスは7:25発。だいぶ早いがバス停で待つことにした。テント場は、のんびりした空気に包まれていた。次の9時のバスで帰る人が多いのかもしれない。
やはり広河原行きの乗客は少なくて、南アルプス市営バスは2台で出発した。広河原からの甲府駅行きバスは1台で、席がちょうど埋まる程度だった。芦安駐車場行きのバスが前を走ったが、見てみると3,4人しか乗っていなかった。乗合タクシーの人が多かったということだろうか。南ア市営・山梨交通ともに、往きと同様の客さばきの悪さにイライラはつのるばかり。
甲府駅着は10時。駅ビル2階のワイン屋で土産に山梨ワインを3本買って、あずさに乗って帰った。休日午前中の上りのあずさは空いていて、甲府からでも余裕で座れた。
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