紅葉と雨の吾妻連峰 2001年10月7日 - 8日 無人小屋利用

10月7日 霧のち曇

福島が近くなって新幹線の窓から外を見ると空はきれいに晴れ渡っていたが、なんの因果か吾妻山だけは雲に包まれていた。
福島駅西口から磐梯吾妻スカイライン経由のバスで浄土平に向かう。途中高湯温泉あたりから紅葉が始まっていて、不動沢や天狗の庭あたりは見事であった。しかしそれより上は雲の中であった。

10:48 浄土平を出発(高度計:1650m, 温度計:20.5℃)

浄土平
ガスの浄土平
浄土平の大きな駐車場は観光バスやらなにやらで大賑わいだ。しかし今日はガスは濃く、目の前にあるはずの吾妻小富士すらも見えない。
日差しがないこともあり寒く、熱いウーロン茶を買ってテルモスに入れ、浄土平を出発。

11:54 一切経山に到着(2015m, 17.1℃)

登山道
少し晴れてきたガスの奥が山頂だ
一切経山へは、石がごろごろした広い道を登る。登る人は結構多く、半分くらいは軽装の観光客といった感じだ。
途中から少しずつガスがとれてきて、ほぼ完全に晴れたところで、一切経山に到着した。
山頂は広く、大勢の人がいた。『健康づくり』なるゼッケンをつけた人もおり、地元の集団登山のようだ。
五色沼は山頂のすぐ真下なのでよく見えた。沼の周囲の木は赤く色付いていて美しい。しかし雲がないのは山中だけで、東は完全に雲の中、西方も中吾妻山くらいまでしか見えなかった。

12:13 一切経山を出発(2005m, 18.1℃)

今日の行程はまだ長く、あまりのんびりしていられない。写真を撮って行動食を少し口にし、早々に一切経山を出発した。

12:53 家形山(1940m, 17.2℃)

一気に下って五色沼のすぐ横を歩き、短い急な坂を登るとすぐ家形山。ここで五色沼と別れ、展望のない樹林の中の道になる。10分ほど平坦な道を歩くと泥道のゆるい下りになる。

14:42 烏帽子山に到着(1940m, 17.8℃)

烏帽子山頂から谷地平を望む
烏帽子山頂から谷地平を望む
延々と泥道を歩き、ゆるやかに登ると烏帽子山に到着。予定時間より少し早く着けて、ほっと一安心。
山頂からは南側の展望が開け、草紅葉の谷地平が見渡せた。一切経山以来の石の山で、休憩に最適。久しぶりに乾いた石を見た気がした。
昭元山への下りもしばらく大きな石の転がった道。そして最低鞍部から再び泥道が始まった。

15:49 昭元山着(1955m, 16.2℃)

ぬかるみ
ぬかるみに立往生
山頂は西南の方が少し開けている程度であまり展望はない。
もーいー加減にしてくれと思わずつぶやいてしまうほど、樹林の中の泥道が延々と続く。アップダウンがさほどないのがせめてもの救いと言えようか。しかしふと気づくと予定時間をはるかにオーバーしており、夕暮れも近く、時間との戦いとなってきた。

17:01 東大巓にようやく着いた(1965m, 10.9℃)

東大巓への登り
東大巓への登り
17時は当初の小屋到着予定の時間だ。ずいぶん遅くなってしまった。
山頂は登山道から少し入ったところにある。案内板も小さく目立たないのでうっかりすると見過ごしてしまいそう。今日はもう遅いので山頂は省略することにし、行動食をとりヘッドランプを首に下げてすぐに出発。
数分下ると弥兵衛平への分岐で、そこから木道が現れる。4時間近く格闘した泥道とようやくおさらばできたのだった。

17:39 明月荘に到着(1885m, 13.0℃)

曲がりくねった朽ちた木道を行くとやがて湿原になり、明月荘に到着する。小屋の周りにはテントがいくつか張られていた。どうやら小屋は混雑しているようだ。しかしこのテントはあまりの混雑ぶりに小屋を脱出した学生パーティのテントで、我々2人はその6人が抜けた2階に入ることができた。

明月荘にて

小屋の2階は大宴会場と化していた。5-6人のパーティが3つばかり、大騒ぎしながら飲んでいる。いつもは厄介に思うのだが、これなら遠慮せずに室内で夕食がとれるので逆にほっとした。そんなわけで、夕食は18時半ころになってしまった。際限なく続くのではないかと危惧された宴会だが、19時になってひとつのパーティがお開きになり、まるでそれが合図であったかのように、すべてのパーティが就寝の準備に入った。プロだな、と思った。
満員の小屋は暖かかった。テントの感覚でセーターなど防寒着を何枚か持ってきたのだがまったく無駄で、Tシャツのままシュラフのジッパーを開けて寝られた。小屋の威力を思い知った気がした。
ふたつ隣のパーティが皆たばこを吸っていたのには閉口した。天井が高く煙が直撃しなかったのでなんとか我慢できたが、梁に渡してある棚に置いておいたカッパが翌朝にはすっかりヤニくさくなってしまったのは困った。うかつだった。ちなみに他のパーティは誰も吸っていなかった(たぶん)。
水場は10分ほど下ったところにある金明水。水は、夕食と翌朝食の調理の分を合わせても足りそうだし、到着も遅かったのでその日は汲みに行かなかった。

10月8日 曇のち雨

朝食を済ませてから金明水に水を汲みに行った。小屋にいた2パーティが滑川方面に下っていった。明け方には稜線の見晴らしもよかったのだが、出発の準備をしている間にどんどん雲が湧いてきて、ついには隠れてしまった。晴れれば稜線を歩くつもりであったが、曇ったときは滑川の滝を見に下ることにしていた。

7:41 明月荘を出発(1910m, 17.9℃)

明月荘
朝の明月荘
昨日は暗くてよく見えなかった小屋は外観もこぎれいだ。
朝、水を汲みに行ったとき露でびしょぬれになることが分かったのでカッパ上下とザックカバーを装着した。金明水まで下りてくると日が差してきた。雲も流れているので晴れるかもしれないと思いしばらくねばっていると、登りの登山者がやってきた。道のようすを聞くと、ほとんどぬかるみもなく、また、紅葉もきれいだという。

紅葉の中を下る

紅葉の道
紅葉の道
結局雲はとれなかったので、稜線縦走はきっぱりあきらめて下ることに。針葉樹の林から徐々に広葉樹に移ると、木々が色付いてきた。立ち込めるガスを通して、谷をはさんだ向かいの斜面も赤や黄で彩られているさまがうっすらと見える。道はゆるい下りとトラバースの繰り返しで、本当に高度を下げているのか少し不安になるくらい。地面は歩きやすいが横向きに生えた木にザックがひっかかりやすい。
細かい霧雨が降ってきた。

9:29 最初の渡渉地点(1490m, 17.2℃)

渡渉地点
渡渉地点の紅葉
潜滝の下の、最初の渡渉地点。はしごがかけてあったりして渡りやすくなってはいるが、増水時はちょっと手ごわいかも。この先にもうひとつ、大きな沢を渡るところがある。
雨で水量が増えないうちに早めに通過しよう。

10:01 鉱山跡(1415m, 15.0℃)

レール跡の道
レール跡の道
突如廃屋とレールが現れた。鉱山跡だ。このあたりが一番紅葉が美しいように見えるが、残念ながら雨は本降りになってきた。2本のレールの間に水がたまって池のようになっており、歩きづらい。
ここから山腹のトラバースが増えてくるが、崩壊して道がつけかえられているところが何箇所かあった。

11:07 滝見台到着(1075m, 17.9℃)

滝見台から滑川大滝
滝見台から滑川大滝
大きな鉄塔が建っているが、たぶん鉱山関係の設備の残骸なのであろう。
滑川大滝は水流が絹糸のように見える。周りの紅葉は始まったばかりという感じだったが、それでも充分美しい。雨の中を下ってきた甲斐があったというものだ。
滑川温泉に下る途中、登ってくる観光客に会った。そういえば道中誰にも会わなかったことに気づいた。

11:31 滑川温泉(945m, 18.6℃)

滑川温泉福島屋
滑川温泉福島屋
滝見台からは14-15分で滑川温泉に着く。いかにも昔ながらの湯治宿といった風情の一軒宿だ。外来入浴はひとり400円。露天風呂もある。
施設利用者は駅までの送迎車を利用できるが、我々が申し込んだときはすでに予約でいっぱいだった。しかたない、駅まで歩こう。峠駅は一日5往復くらいしか電車がこない。13時台をのがすと次は17時だ。

13:25 峠駅

峠駅
峠駅
滑川温泉から舗装路を50分歩いて峠駅に着いた。温泉で流した汗がまた噴きだしてきた。
駅へはほとんど一本道で、迷う心配はない。最後に突き当たったところから右下を見下ろすと大きな倉庫のような建物が見える。それが駅だ。駅全体が大きな覆いを被せられているのである。
われわれとほぼ時を同じくして宿の送迎車が到着したが、よく見るとそのご一行さまの中に、朝金明水ですれ違った2組のパーティがいた。
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