グロートが来た


 グロート教授の演奏は、見事なものであった。派手なテクニックをひけらかすタイプの奏者でない氏の演奏は、安定した音程に微塵のゆれもなく、出ている音の素晴らしさは、ピーク時とほとんど変らない。音程が合うと言うことはどういうことかを思い知らされた。

 あくまでベルリン・フィル風であるが、ラプソディー・イン・ブルーで会場を沸かせていた。前半の、公開レッスンでは、司会の山崎氏がなんとかグロート教授にオケのパッセージを吹かせようと水を向けていたが、例のマラ5の冒頭ソロを吹いたときはさすがに会場は沸いた。山崎氏は、チャイコフスキー辺りを吹かせたがっていたようだが・・。

 グロート氏の本分はあくまでも、ブルックナーやマーラー、チャイコフスキーなどで聴かせる、豊かで圧倒的な音色にある。だから、難しいテクニックの曲は程ほどの出来であり、ライブ演奏でのミスも結構あるので面白い。テクニックでは、シカゴやクリーブランドのほうが上手い。しかし、彼らのオーケストラのブルックナーの演奏スタイル等は聴くに堪えない。
 このコンサートの頃は、教授職に専念するために、引退直前で、実際に腕前も落ちていたように思う。寂しくもあるが仕方の無いことだろう。
 


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