グロートが来た

スピーチをする主人と田子氏
 また、グロート教授からのFAX連絡などの対応にはドイツ語の能力が必須なのである。この方面では、金大フィルOBでドイツ語に堪能な、田子博史氏(東京在住)が協力した、コンサート当日も、通訳として活躍し、旅館主人が広間での宴会で行なった、ドイツ語スピーチも氏の手になるものだった。

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 演奏会の当日、午前中にグロート氏が到着しリハーサル、午後から金大・京大学生のリハーサル、そして、夕方からの本番という段取りだった。当初、グロート氏が、鹿島屋広間の宴会にやって来るかどうかは、確かではなかったらしい。

 会場で聴衆だった金大OBの連中は、グロート教授の演奏に感心するとともに、自分達がかつてあばれた、あの広間にグロートが来るらしいということに、まだ戸惑いを感じているように見えた。自分も、本当に来たんだ・・・と感心し、御主人の協力依頼を断った非礼を後悔しながらも、現役はへたくそやな・・と思い上がり、グロートと身近に会えるという期待とが入り混じった、複雑な心境だったことを思い出す。「胡散臭い」なんて思ったことも、気恥ずかしかった。

 後で聞いたが、本番当日の様々な面での主人の気遣いは、大変なものであったとのことである。

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