Los Angeles Times 2016年8月8日
第5世代技術は危険か? 早期データは携帯電話の電磁波に暴露した雄ラットに 腫瘍のわずかな増加を示す ポール・レイバーン 情報源:Los Angeles Times, August 8, 2016 Is 5G technology dangerous? Early data shows a slight increase of tumors in male rats exposed to cellphone radiation By Paul Raeburn http://www.latimes.com/business/la-fi-cellphone-5g-health-20160808-snap-story.html 訳:安間 武 (化学物質問題市民研究会) http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/ 掲載日:2016年8月14日 このページへのリンク: http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/sick_school/emf/160808_LATimes_Is_5G_technology_dangerous.html 無線通信会社は次世代サービスを立ち上げようとしているので、この信号を発信する携帯電話や発信機による電磁波の、可能性ある健康リスクについて新たな疑問が生じる。 電磁波の可能性ある有害影響についての懸念は、1980年代に最初のレンガ大サイズの携帯電話が市場に投入されて以来、常について回った。 産業側と連邦当局は、電磁波暴露は最小であり、機器は安全であると述べて、これらの危惧を却下してきた。脳腫瘍による死亡の発生率は、携帯電話使用の爆発的増加にもかかわらず、近年ほとんど変化していないことを示している。 今後数年で導入されるであろう超高速第5世代(5G)技術は、携帯電話やスマート家電及び自動運転車を含む新たなインターネット装置のホストに信号を送る発信機の数を劇的に増やすことになるであろう。そして新たな技術への移行は、長らく待たれた携帯電話の使用によるがんリスクの連邦政府の研究による穏やかではない結果が出た後に来る。 国家毒性計画の研究者らは、携帯電話電磁波に曝露した雄ラットにわずかな脳腫瘍の増加を示す予備的データを本年5月に発表した。 ラットは毎日10分オン、10分オフの間隔で 9時間、2年間にわたり全身を電磁波に曝露させられた。研究者らは、稀な脳及び心臓腫瘍が携帯電話による電磁波の脳暴の連邦政府の許容レベルで発症し始め、これらのレベルの約 2倍及び 4倍で、その発生率が増大することを発見した。 この結果を人間に当てはめることは複雑であり、いくつかの不可解な結果もある。例えば、なぜ、雌にはなく、雄のラットだけに腫瘍発生率の増大があったのか? 最終的なピアレビューされた研究の結果は、少なくとも2017年末までは発表されないであろう。 アメリカがん学会が、”電磁波とがんリスクについての我々の理解のパラダイムシフト”と述べたこの研究は、携帯電話の人間の健康への潜在的な有害影響について議論を再燃させた。 過去30年間にわたる携帯電話加入者の数の爆発的な増大と、ソーシャル・ネットワーキング・サービスやストリーミング・ビデオの流行のさなか、人々がモーバイル機器に費やす時間の増大により懸念が増幅されている。 現在、専門家のある者や無線の安全を主張する人々は、もっと多くの、そしてもっと高速のサービスを提供することを約束する第5世代(5G)の世界に国全体が急速に移行しているのだから、もっと多くの調査を行うよう要求している。そして彼らは、連邦当局も同調している頭から携帯電話を離すためにヘッドセットを使用するなど、懸念する消費者らが容易に電磁波への暴露を減らすことができる措置についての助言を強調している。 ”私は、健康リスクがあるということが明白であるとは思わないが、しかし、健康リスクがないということも明白ではない”と、携帯電話使用の健康影響を研究しているカリフォルニア大学ロサンゼルス校(UCLA)フィールディング公衆衛生校の疫学教授リ−カ・カイフェッツは述べた。 国家毒性計画の調査は、”もっと多くのもっと良い研究が必要であるということを示しているに過ぎない”と彼女は述べた。 先月、アメリカは5Gのために広範な電波領域を割り当てる世界で最初の国となった。消費者は、今日の第4世代(4G)より少なくとも10倍高速な発信速度を提供するこれらのサービスを 2020年までに利用可能となるであろう。 連邦通信委員会(FCC / Federal Communications Commission)は、データを非常に遠くまでは運ぶことができないために使用が制限されていた高周波電波の利用を無線通信プロバイダーに許すことを全会一致で可決した。 消費者への無線サービスをこれらの超高速電波に拡大することを技術進歩が可能にしている。しかし、この周波数域を利用するために、無線通信会社はその信号を経由させるために数千の小さな基地局−煙検知器くらいのサイズ−を電信柱上やビルに設置しなくてはならなであろう。 無線市場戦略コンサルタント会社である IGR によれば、無線産業は、2025年までにアメリカで5Gサービスを開発し、テストし、展開するために、約 560億ドル(約 5兆6,000億円)を費やすであろう。 昨年末までに携帯電話タワーやビルの屋上に約30万8,000の無線アンテナが設置されていたが、それは2002年に設置されていた数の倍である。
携帯電話タワーからの電波よりもっと低いレベルで電磁波を放射する発信機がもっと多くなるという予想が、人間への影響をについて懸念する懸念する人々に警告を与えている。 5Gへの移行は、高周波帯域の信号にはより大きなエネルギーがあり、小さな発信機は人々が生活し働く場所に密接した場所に置かれるであろうから、さらなる懸念をもたらす。 ”今までの技術には大きな懸念があるが、5Gになればもっと悪くなるだけだ”と、カリフォルニア脳腫瘍協会の支援ディレクターであり、 FCC 会議に参加したが当局に健康影響について問いただすことができなかったケビン・モッツは述べた。”これらはマイクロウェーブ発信機であり、それに近づけば近づくほど、問題が大きくなる”。 公衆に無線放射の潜在的な有害性について教育を行っている非営利団体である”より安全な無線センター”( Center for Safer Wireless)の執行ディレクターであるデズリー・ジャワルスキーは、5G信号は人々が回避するのを難しくするであろうと述べた。”今は、あなたは携帯電話タワーの隣に住む必要はない。もしそれが心配なら、あなたはどこかに引っ越すことができる。しかし、もしそのような5Gアンテナがいたる所に設置されれば、あなたは逃げることができない”。 連邦通信委員会(FCC) は、携帯電話の安全性について、食品医薬品局(FDA)と責任を共有しており、アメリカで販売される機器はその値を超えることができない比吸収率(SAR)として知られている無線放射への安全暴露の許容レベルを設定する。 FCC はまた、基地局から発信される無線信号への暴露を規制する。 2013年に FCC は、暴露制限値を再評価する必要性について広く公式に問うた。その問いかけは現在でも公衆に開かれていると同委員会は述べた。 ”本件に関する科学的証拠は常に FCC に知らされている”と報道担当のネイル・グレースは述べた。”FCC は現在の政策と電磁波暴露制限値を修正すべきかどうかを含んで、連邦政府の健康安全専門家からの全ての勧告をフォローしている”。 FDA は、”科学的証拠の重みは携帯電話からの電磁波への暴露と有害健康影響との間に関連があることを示していないと信じている”と述べた。しかし同局はもっと多くの研究が必要であると述べた。 2011年に、世界保健機関(WHO)の一部である国際がん機関(IARC)は、携帯電話電磁波を” ヒトに対する発がん性が疑われる”として分類した。他にも 288種の”発がん性が疑われる物質”があり、それらにはタルクベースのボディパウダーやアジア式野菜の漬物が含まれる。 同機関は、当時の研究は限定されており、電磁波を発がん性又は恐らく発がん性がある物質として分類しなかったと述べた。 ワイヤレス移動体通信産業協会(CTIA)は、アメリカ人の健康は同協会の”最高の”関心事であり、同協会は政府の専門家のガイダンスに従っていると述べた。 ”FCC は、アメリカでは合法的に販売されている全ての無線電話は安全であると決定した”と同協会は書面の声明で述べた。 FCC は、”5G電波を使用する電話と他の機器の電磁放射安全基準への準拠に関する産業のためのガイダンスを開発中である”と、 CTIA は述べた。”もっと大きな科学コミュニティは、他の調査の脈絡で、国家毒性計画の研究結果を考慮するであろう”。 国家毒性計画の 2,500万ドル(約25億ドル)の研究は、1999年に FDA によって要求され、第2世代携帯電話技術を用いて実施された。 その予備的な発見は、”おそらくある種の関連が携帯電話電磁波とがんの間にあるので、我々はこれは十分懸念に値するようだと感じたために、発表された” と、国家毒性計画の電磁波研究のプロジェクトリーダーであるマイケル・ワイドは述べた。 ワイドは、この研究の発見を考慮するかどうか、そして安全基準を調整する必要があるかどうかを決定するのは、規制当局次第であるとワイドは述べた。”我々はほとんどリスク特定プロセスの最初の段階にいる”。 カリフォルニア大学バークレー公衆健康校の家族とコミュニティ健康センターのディレクターであるジョーウェル M. モスコウィッツは、可能性ある電磁波リスクを研究するためにもっと多くの連邦政府の資金供給が必要であると述べた。 昨年、彼は、携帯電話の電磁波とその他の電磁場への曝露を研究してきた世界中の200人以上の科学者による国連への書簡をまとめるのを手伝った。科学者らは国連の担当者らが人、特に子どもと妊婦を保護するためにもっと措置をとるよう望んだ。 数少ない5G研究のひとつがニュージランドで開始している。マッセー大学の研究者らは、”同時に発信する多くの、多くの発信機”の、可能性ある健康影響を決定するためのモデルを使用するであろうと、同大学の遠距離通信研究グループを率いるサイド・ファルツ・ハッサンは述べた。 ”私は、もし我々がそれを悪いものだと示せば、我々その技術を制止する余地があり、もし我々がそれは悪いものではないことを示せば、利用者はそれが安全であるとして幸せであると信じる”と、彼は述べた。 カリフォルニア大学の教授カイフェッツは、ある無線安全の主張者が要求しているように、もっと多くの研究を待つために、5G展開のペースを落とす、又は停止するということは”現実的でも正当でもない”と述べた。”しかし、現在、新たな要員が展開されているように、少なくとも誰かが暴露の変化を測定し、ひとの健康影響を監視すべきである”。 訳注:当研究会が紹介した携帯電話電磁波関連情報
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