NYT 2014年7月7日
電磁波の危険性に関する議論は続く
ケンネス・チャン

情報源:The New York Times July 7, 2014
Debate Continues on Hazards of Electromagnetic Waves
By KENNETH CHANG

http://www.nytimes.com/2014/07/08/science/debate-continues-on-hazards-of
-electromagnetic-waves.html?action=click&contentCollection=Science®ion
=Footer&module=MoreInSection&pgtype=article


訳:安間 武 (化学物質問題市民研究会)
http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/
掲載日:2014年7月10日
このページへのリンク:
http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/sick_school/emf/
NYT_140707_hazards_of_electromagnetic_waves.html

 時折のこのコラムは、25年前にサイエンスタイムズで論じられた話題について、何が変わり何が変わっていないかを見るために探究する。

 現代的な世界ではどこでも、テレビ、ミキサー、電球、壁の中の電線などからの交流振動が電磁波を生成する。

 その振動は非常に遅い(1秒間当たり60ヘルツ又はサイクル)ので、この種の放射は”超低周波”と呼ばれる。超低周波は、電子をノックアウトしたり、体内の分子にダメージを与えるためには弱すぎるので、長い間、それは無害であると考えられていた。

 しかし、1989年7月11日、サイエンスタイムズは、このいたる所にあるバックグラウンド放射が、がんを引き起こすかもしれないという心地よくない可能性を報告した。

 1950年から1973年にがんで死んだデンバーの子どもたちを他の子どもたちからなるコントロール・グループ と比較した疫学研究は、送電線の近くに住む子どもたちは、そうではない子どもたちに比べて2倍、がんを発症するらしいことを発見した。他の科学者らによる引き続く研究で、最初の研究で欠陥であるとみなされたものを排除したが、ほとんど同様な結論を得た。

 ラボでの実験はもっと多くの懸念の理由を提供した。電磁放射、特に磁気部は細胞中のある機能を変化させ、神経伝達物質の行動を変更した。60ヘルツ放射パルスは、鶏の卵中の異常な胎芽の数を増大させた。

 ある記事は、アルバーにあるニューヨーク州立大学公衆衛生校の当時の学部長デービッド O. カーペンター博士を引用した。”全てのことが非常に気にかかる。我々は氷山の一角を見ているが、その氷山がどのくらい大きいか我々にはわからない。我々すべてを懸念させることである”。

 25年後の今日もカーペンター博士は、健康・環境研究所のディレクターとして同じ大学にいる。彼は依然として60ヘルツ放射について懸念を持っている。

 ”議論という点では25年間、ほとんど何も変わらないが、電磁場の生物学的影響の証拠は強くなってきている”と先週、e-メールで述べた。

 この研究をレビューして、世界保健機関は、超低周波を”発癌性が疑われる(訳注:2B:possibly carcinogenic to humans))”と分類した。0.4 マイクロテスラより強い電磁に長期間暴露すると白血病の発症率が増大するように見える。地球の磁場は約100倍強いが、それは発振しておらず、重要な相違である。(小児期の他のがんについての懸念は大きく緩和された。)

 しかし、ほんのわずかな人々は、強い超低周波に暴露している。”それは正常なタイプの暴露ではない”と、電磁場の健康影響を評価する WHO のプロジェクトのリーダであるエミリー・ファンディベンターは述べた。

 不確実性が続くひとつの理由は、科学者らはそのような電磁波がどの様にがんをもたらすかを説明しなくてはならないからである。白血病は、米国では5,000人に1人以下が発症する比較的稀な病気である。その原因を調査するのは困難であり、たとえ原因がわかり、低周波放射を遮蔽しても、せいぜい少数のがんを防止するだけである。

 ”公衆の健康展望という見地から、そして規制という見地で示唆されることは、リスク/ベネフィット比が全くアンバランスであるということを見ることができる”とファンディベンター博士は述べた。”そしてこれは我々が因果関係を示すことができるかどうかということである”。

 近年、懸念は、1秒間に60回の発振ではなくて、携帯電話、コードレスフォン、ワイヤレスネットワークなどに利用される数百万回から数十億回の発振をする周波数に移っている。例えば、Wi-Fi には現在までのところ直接的な有害性の証拠はなく、携帯電話より低いエネルギーレベルで送信するが、カーペンター博士は学校から Wi-Fi を締め出したいと考えている。世界保健機関(WHO)は、携帯電話、 Wi-Fi 及びその他の遠距離通信装置で利用される無線周波数を”発癌性が疑われる(訳注:2B:possibly carcinogenic to humans)”に分類している。”このことは公衆に説明するのには少し難しい”とファンディベンター博士は述べた。”人々は、黒か白かのはっきりした答を好む”。

 ”この20〜30年の傾向を見ると、がんが増加したと様には見えない”と彼女は述べた。”しかし、やはりわからない。もし、がんが発症するのに10年かかるなら、我々は次の10年間にそれを見るかもしれない”。

 可能性ある有害性も現代的なライフスタイルを彼女に止めさせることはない。”その通り。私は携帯電話を使ってあなたに電話し、話をしている”と彼女は述べた。”私は電子レンジを持っている。私は何でも持っている。それは私に何も変えさせることはない”。

 彼女は付け加えた。”しかし職業的観点から、そのことに関心を持ち続けることは重要である”と彼女は付け加えた。

 WHOのプロジェクトは、無線周波数の健康リスクをまとめる新たな報告書を作成中であり、それは来年発表されるであろう。



化学物質問題市民研究会
トップページに戻る