Medscape Medical News 2011年5月31日
携帯電話
発がん性が疑われる(2B)とWHO


情報源:Medscape Medical News, May 31, 2011
Cell Phones Possibly Carcinogenic, WHO Says
By Roxanne Nelson
http://www.medscape.com/viewarticle/743673 魚拓

訳:安間 武 (化学物質問題市民研究会
掲載日:2011年6月1日
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http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/sick_school/emf/110531_Cell_Phones_Possibly_Carcinogenic.html


【2011年5月31日】世界保健機関(WHO)は本日、携帯電話からの放射はヒトに対する発がん性が疑われる(possibly cause cancer)と発表した(訳注1)。WHOの国際がん研究機関(IARC)によれば、いくつかの研究が無線電話の使用に関連しているとするグリオーム(神経膠(こう)腫)に対するリスクが増加していることに基づき、無線周波数電磁界は、”ヒトに対する発がん性が疑われる(possibly carcinogenic to humans)(グループ 2B)” に分類された(訳注2)。

 この発表は、無線周波数電磁界への曝露による潜在的な発がん性リスクを評価するために定期的に参集した14カ国からの31人の科学者の作業部会による携帯電話の安全性に関する研究の広範なレビューに基づいたものである。彼らは、曝露データ、ヒト及び実験動物モデルでのがん研究、及び、その他関連データをレビューした。

 IARCの研究論文作業部会(IARC Monograph Working Group)は、無線周波数電磁界に関わるいくつかの曝露カテゴリーを含む論文を特に次の点について討議し評価した。
  • レーダー及びマイクロウェーブへの職業曝露
  • ラジオ、テレビ、無線通信のための伝送信号に関連する環境的曝露
  • 無線電話の使用に関連する個人的曝露
 ”この分類と事実認定は公衆健康への潜在的な影響があるのだから、携帯電話の長期的な激しい使用についての追加調査が実施されることが重要である。そのような情報が入手できるまで、曝露を低減するためのハンズフリーキットやメッセージ送付のような現実的な措置をとることが重要である”とIARC ディレクター、クリストファー・ワイルド博士はニュースリリースの中で述べた”。

一致しないデータと意見

 携帯電話は日常生活の一部となっており、使用者の数は世界で50億人と推定されている。しかし、以前に Medscape Medical News によって報告されたとおり、携帯電話の使用に関連する可能性ある健康リスクについての懸念が増大している。特に、いくつかのデータは、その使用、特に長期にわたる使用は脳腫瘍に”著しい”リスクをもたらすということを示唆している。

 しかし、欧州各国は特に子どもたちに向けた予防的措置をとっているけれども、研究結果が一致しているわけではない。

 脳腫瘍と携帯電話の使用との関連を支持する最も強い証拠は、オレブロ医療センター腫瘍学部門のレンナート・ハーデル博士により指導された一連のスウェーデン人の研究である。これらの研究は、使用累積時間、放射電力、携帯電話使用時間が大きくなると、リスクが増大することを示している。彼らはまた、若いユーザーほどリスクが高いと報告している。(Int J Oncol. 2006;28:509-518; Int Arch Occup Environ Health. 2006;79:630-639; Arch Environ Health. 2004;59:132-137; Pathophysiology. 2009;16:113-122).

 携帯電話の安全性の問題は、13カ国の巨大な産業の資金による Interphone 研究で最終的にはっきりと決着がつけられることになっていた。しかし、今日まで、産業側資金による Interphone 研究は、4つの例外を除いて携帯電話使用による脳腫瘍の増加を見つけていない。この所見は、産業側資金からは独立したスウェーデンの研究とは相反する。

 リスクの厳しさについて、あるいはその存在についてさえ、医学者と科学者の間に合意はない。脳腫瘍と携帯電話使用の間の潜在的関連を評価しようと試みるときのひとつの問題は、これらの機器がこのように多くの人々に激しく使用されるようになってからまだ比較的短期間であるということと、多くの主要は潜伏期間が長いということである。

 例えば、アメリカ国立がん研究所は、携帯電話使用とがんの間に一貫した関連は確立されていないが、”科学者らは、最終的な結論が引き出される前に、追加的な研究が必要であると感じている”と述べている。同様に、アメリカがん学会は、たとえ、携帯電話使用と脳腫瘍との間の関連性を示す証拠の重みが現在なくても、非常に長期間の使用又は子どもの使用の潜在的な健康影響に関する情報は簡単に得られるものではないと指摘している。

十分に強固な証拠

 WHOは、公衆及び政府の懸念に対応して、電磁界からの有害影響の可能性を評価することを目標に、1996年に国際電磁界(EMF)プロジェクトを立ち上げた。昨年発表されたプレスリリースで、WHOは 2012年までに無線周波数電磁界曝露の公式な健康リスク評価を実施するが、IARCは今年中に携帯電話の発がん可能性を暫定的にレビューするであろうと述べた。

 作業部会の議長ジョナサン・サメット博士は、”証拠についてはまだ蓄積中であるが、この結論とグループ2Bの分類を支持するために十分に強固である”と述べた。

 ”この結論は、あるリスクが存在する可能性があり、したがって、我々は携帯電話とがんリスクの関連をよく監視し続ける必要がある”とニュース・リリースの中で述べた。

 IARC 作業部会の主要な結論と評価をまとめた報告書全文は、The Lancet Oncology でまもなく発表され、また印刷版はThe Lancet 7月号に掲載される予定である。


訳注1:
IARC PRESS RELEASE No. 208 31 May 2011
IARC CLASSIFIES RADIOFREQUENCY ELECTROMAGNETIC FIELDS AS POSSIBLY CARCINOGENIC TO HUMANS

Lyon, France, May 31, 2011 ‐‐ The WHO/International Agency for Research on Cancer (IARC) has classified radiofrequency electromagnetic fields as possibly carcinogenic to humans (Group 2B), based on an increased risk for glioma, a malignant type of brain cancer1, associated with wireless phone use.

訳注2:
発がん性分類 (IARC, EPA, EU)

訳注:関連情報
Telegraph 2011年5月14日 欧州評議会 委員会学校での携帯電話と無線ネットワークの禁止を提案



化学物質問題市民研究会
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